会長との会話
「ようこそいらっしゃいました。サルジャーン・ボワ殿。長旅お疲れ様でした。」
部屋に入るなり、会長が声をかけてきた。
会長は齢50代くらいだろうか。凛とした姿勢が素敵な女性だ。会長は長机に腰掛けており真っ直ぐな瞳でサジャを見た。その見た目にも特に驚く様子はなく至って平然としている。先程ショーンが話していた理由からなのだろうか。
「はじめまして。サルジャーン・ボワと申します。名前が長いのでどうぞ、サジャとお呼びください。」
「私たちはあなたを歓迎致しますよ。何せこの人気のない祓魔師になろうというのだから…。」
そう言うと会長は若干哀しげに目を伏せた。
「人気についても存じております。それでも私は祓魔師になりたいのです!」
「まぁ!嬉しい事を言ってくれますね。いま、祓魔師は本当に少ないからとても助かるわ!」
会長はパッと明るく言ってサジャの方を見つめる。
「それでは、早速ですが、サジャに問いますね。サジャ…あなたは何故、祓魔師になろうと思ったのですか?」
「それは何故私の見た目が悪魔みたいなのか知りたくて。」
「なるほど。確かにこの地ではあなたの様な褐色の肌は珍しいでしょう。しかし、南の地ではどうかしら?あちらの方は褐色の肌の人もいらっしゃいますよ。」
会長がいうのも間違いなかった。今いる祓魔師協会は北に近いため肌が白い人が多い。サジャは南に行けば褐色の肌の人がいるのは本で見たことがあった。しかし、瞳は赤くないらしい。サジャの父も瞳は赤かったらしいので、瞳ふ父譲りかもしれないが、肌だけではなく瞳も耳も髪の色も似通っているのだ悪魔に。
会長はサジャが困っているのを察してショーンに目配せした。
「サジャ。会長は祓魔師の仕事が大変な仕事だと理解しているから、しっかりと話を聞こうとしているだけだよ。自分で決めた事なら自信を持つといい。」
ショーンは助け舟を出した。
「ありがとうございます。ショーンさん。」
サジャはショーンにお礼を伝えた後、会長をしっかり見つめてハッキリ伝える。
「私は祓魔師になって困っている人を助けると共に自分の容姿についてのキッカケを掴もうと思います!」
自信を持って伝えてきたサジャに会長は微笑した。
「わかりました。では、次に祓魔師になることはご家族はご存知ですか?」
「母は賛成してくれました。父は私は会ったことがありません……。」
「……まぁ、それは辛い事を思い出させてしまいました。」
「いえ、いいんです。父は行方不明らしいので、ゆくゆくは探してみようかなと思います。」
「何か手がかりがあるのですか?」
「母から預かったロケットペンダントがあります。父と母の写真です。」
パカッとサジャは首にかけていたロケットペンダントを開けて、写真を見せた。
そこには仲睦まじい青年と女性が微笑んでいる姿があった。父親の瞳は珍しくとても綺麗なルビーの様な赤だった。
「ありがとうサジャ。とても幸せそうな両親ですね。」
「はい。両親どちらも肌が白いのです。」
「瞳はきっと父譲りね。髪は遺伝かもしれないわ。」
会長は悪びれもなく真実味のある話をしている。確かにそうともとれる。隔世遺伝それは普通にある事だ。サジャの気にしすぎなのかもしれない。遺伝なら悪魔に見た目が似通ってしまう事も確率的にあるだろう。
サジャは小さくため息をついた。遺伝ならば、どうしようも無い。何故?この見た目なのかと気にするより自分の見た目を受け入れて生きるしか無いのだ。
サジャが自分自身落とし込んでいるのを見て会長は、話を続けた。
「サジャ、あなたは祓魔師になりますか?悪魔と対峙する危険な職業です。命を落とす可能性もあります。上級悪魔との対峙はほとんどないでしょうがそれでも危険です。見た目が動機ならば、今きっと解決したはずです。それでも祓魔師になりますか?」
会長はキッとサジャを見据えた。
「祓魔師になりたいです。見た目が遺伝でも問題ありません!魔痕が現れて苦しんでいる人がいるのなら、それを救いたい!その気持ちもありますから。」
「よく言いました。誰かを救いたいという気持ちはとても素晴らしいものでしょう。」
会長は拍手をしながら言った。ショーンは驚いた顔をしている。
「合格ですよ。サジャ。今の発言を忘れないで。今日から貴方を祓魔師見習いと認めます。」
「やった~!」
見た目を非常に気にしていたサジャ。昔からいじめられていた事もある為、困っている人を救いたい気持ちも事実だ。悪魔とは対峙したことはまだ無いが、きっと何とかなるだろうと思っていた。