ヴァラフェンの森の中で
サジャ達は森を歩く。任務を終わらせる為に。
「あ!キノコ…。食材に使えそう」
サジャが見つけたキノコは薄い赤色をしたキノコであり、とても美味しそうに見えた。
「お!いいな。キノコか~。料理したら美味しそうだな。」
ヒカリは料理を想像したのか満面の笑みで答えた。
「少し刈って持っていきますね。キノコ料理美味しいし」
サジャはそう言ってキノコを刈り袋に詰めた。
サジャ達はその後、キノコの他にも木の実や山菜などを見つけては集めて行った。料理をするには十分な量だ。
「これだけあれば、十分だな!」
ヒカリはニカっと笑う。
「やれやれ。良いけど、早く行かないと討伐に間に合わないよ!」
ショーンは促し先に進む。
森を北に進みだいぶ奥まできたようだ。
今までは樹々の中を歩いてきたが、だいぶ開けている広場にでた。
微かに水の音が聞こえる。よく見ると近くに川が流れている。
ここまで魔獣に出くわさないが……。
ショーンは本能的に恐怖を感じた。
※※※※※※
サジャ達が広場にたどり着いた頃、祓魔師ミランダとその相方のグスタフは低級悪魔と対峙していた。
低級悪魔は小さい蝙蝠の様な容姿で目が赤く光っており、禍々しいオーラを放っている。誰がみても普通の蝙蝠と違うその姿は悪魔で間違いはなかった。
「こいつが、噂の低級悪魔か…。ふん!いかにも弱そうだわ。」
そう話したのは祓魔師のミランダ。それなりに経験を詰んだ彼女にはこの蝙蝠の悪魔は弱そうに見えた。
「グスタフ!さっさとコイツを倒して戻りましょう。」
「ミランダ……。相変わらず大口を叩くな!ここまで時間がかかったのは、テメェの方向音痴のせいだってのによ……。」
グスタフはミランダにが方向音痴な事を予め知ってはいたが、面倒くさいので、そのままついてきていた。
「グスタフ!人が気にしている事を!そう思うなら貴方が先方切れば良かったでしょっ‼︎」
「オイオイ……!何言ってんだよ。この姉さんは…。テメェが先に歩くって言ってきたんだろうがよ。」
「ふんっ!」
ミランダは悪態をつく。
グスタフが無理矢理にでも先方を歩く事はできる。だがやはり敢えてそれをしない。
「ったく!マジで可愛くねー女だな。」
「別に、グスタフに可愛いと思われたくないし可愛くなくて結構!」
「……。そうかよ‼︎」
2人の間に険悪な空気が漂う。その空気を哀しげに見つめる瞳。
ミランダが方向音痴で森で迷っている時についてきた男性が向けたものだ。
「ま、ここで喧嘩しても仕方ないわ。この『名無しの彼』も心配してるみたい。」
ミランダは視線に気づき名無しの彼…青い髪の青年に目を向ける。
「名無しの彼ねぇ……。喋らないし何考えているのかさっぱりわからねぇ。なんで俺たちについてくるかも不明だ。しかもねぇ。『魔痕』が現れてるときた。騙されてるんじゃネェの?俺たち。」
グスタフの言う通り青い髪の青年の頬には赤い爪痕の様な紋様が表れていた。
見る人が見れば魔痕だと言うことに気づくだろう。もちろん、ミランダやグスタフは悪魔退治の仕事であるから魔痕に対しての心得はそれなりにある。
「道に迷った時、彼が道を教えてくれたから私たちはここまでこれたわ。しかも道中あんたより頼れる戦力だったわよ。」
「んだとー!」
ミランダのトゲのある発言にグスタフは顔を真っ赤にし怒りをあらわにした。
「それに……いくら魔痕が表れているとはいえ、上級悪魔または契約悪魔が
近くにいなければ無害よ。そんな事も知らないの?グスタフ……私の相方を何年やって来てるのよ」
ミランダの発言はグスタフに対して完全な煽りだった。
「んだとー!」
「ふふっ。相変わらず短気ね。弄りがいがあるわ。ま、余談はここまで。ただでさえ時間がかかったんだ。行くよっ!2人とも!」
「ったく、都合のいい奴め。お前の性格が悪魔だってぇの。」
「何か言ったかしら?」
「っよし!行くか!」
「……。」
ミランダの煽りはいつもの事なので、グスタフは慣れていた。これ以上話しても仕方がないのでミランダ達は低級悪魔に向かい攻撃を開始した!
※※※※※※
サジャ達は滝の近くまでやってきた。
その時である!
ガサッ‼︎
近くで音がした。
ガサガサッ‼︎
複数の音だ。ショーンは音を立てない様に忍び歩きで音の方に向かう。
そこには真っ赤な花を咲かせた植えてあった。しかし、何か様子がおかしい。
まず植物の見た目がおかしい。花を咲かせているその植物は綺麗というには程遠くどちらかというと不気味だ。
ガサッ!
ショーンは見てしまった。不気味な植物が動く姿を。
(魔物だ……!)
ショーンは確信し、サジャとヒカリにその事を伝える。協会長からもらった地図に載っている悪魔が現れた場所は不気味な植物がいる先にある。戦うしかない。しかもあちらに気づかれたら一気に戦闘が始まるだろう。
作成を立てる時間もない。
ショーンは手短にサジャとヒカリに戦う意思を伝え、先手になる様に不気味な植物の前に飛び出した…!