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なんかいろいろわからないことだらけだけど、とりあえず帰って休もう。

「マスター!大丈夫?!」

ステラは蜘蛛の残骸を踏み越え、ドロシーのもとへとたどり着いた。

そあいて、いまだドロシーを掴んだままの蜘蛛の爪を引き剥がし、束縛から解放する。


ステラはヒーリングアプリを起動し、主人の容体を確認する。

外傷は多少の擦り傷と切り傷程度。骨折無し。内臓器官へのダメージは微少。

この程度なら、初級の回復魔法を何度か重ね掛けすればすぐに完治するだろう。


「ヒール!」

ステラは両手を掲げ、回復魔法を放つ。

白く優しい光がドロシーの身体を包み込み、傷をいやしていく。

念には念を入れて、ステラはさらに数度、ヒールを重ね掛けする。


数分後、全ての傷が癒えたドロシーは、ゆっくりとその目を覚ました。

「……うぅ……ステラ……?」

「マスター!!!」

ステラは思わず感極まって、ドロシーの胸に飛び込んだ。


ドロシーはぼんやりと、胸の中で嗚咽するステラの頭をなでながら、周囲の状況を見渡す。

辺りには、無残に切り刻まれ、黒煙を上げる鋼鉄蜘蛛の死骸が散乱している。

「……これ、あなたがやったの?」

「……うん!」

ステラは目に涙をいっぱいに溜めて、こくこくとうなづく。


「……はっ!そうだ、ロボ丸!」

ドロシーはそう叫ぶと、ロボ丸を探すために慌てて立ち上がった。

「ロボ丸!どこにいるの!」

「ロボ丸―――!!」

ドロシーとステラは、大声で叫びながら、ロボ丸を探し、方々を歩き回った。


「お~~い……。こっちロボ~~……。」

数分後、ステラのセンサーが、遺跡の片隅から聞こえるか細い声をとらえた。

「マスター!こっち!」

「ロボ丸!大丈夫?!」

二人は慌てて声のする方角へと駆け寄った。


そこにあったのは、腰から下を無くし、壁に身体が半分めり込んだロボ丸の無残な姿だった。

「置いてきぼりはひどいロボ~~。早く引っ張り出してほしいロボ……。」

「ロボ丸!今引っこ抜いてあげるから!ステラも手伝って!」

「了解!マスター!」

二人はロボ丸のボディを傷つけないように、慎重に壁から引きはがした。


「ふぅ……。死ぬかと思ったロボ!早くボディを直してほしいロボ!」

ロボ丸はドロシーの腕の中で、そう悪態をついた。

「あんたが無事でよかったわ!ありがとね、ロボ丸!」

感謝の意を伝え、ドロシーは、ロボ丸をその胸に抱きしめる。

瞳からは涙がこぼれ、つぅっと頬を伝っていた。


ひとしきり泣いた後、ドロシーはロボ丸の容体を確かめた。

ありていに言って酷いありさまだったというしかない。

腰から下は無残に砕け散り、断面からは歪んだギアやちぎれた配線が顔をのぞかせている。

かろうじて残った上半身も、あちこちヒビが走り、左腕はちぎれ、頭部のレンズも片方が砕けている。


「ボディの損傷がひどい……。悪いけど、その状態じゃ修理は無理そうね。」

「ロボ丸、助からないの?」

ステラは不安げな表情でドロシーを見上げた。

「ううん、そうじゃないの。この体が直らないってだけ。他の体に魂を移せばロボ丸は助かるわ。」

「他の体……。」


その時である!

突如フロア全体に轟音が響き、地面がグラグラと揺れだしたのだ!

ごゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………………!!!!!!!!


「何?地震?いや、違う?」

「マスター!あれ見て!」

ドロシーは振動に耐えつつ、ステラの指さすほうに視線を向けた。


よく見ると、フロアの中央部分に、ぽっかりと丸い大きな穴が開いているのが見える。

どうやら、先程の音は、その大穴からフロア全体に響いているようだった。

音はさらに大きくなっていき、しばらくすると、穴から何かがせりあがってくるのが見えた。


「新手の敵?!こんなときに!!」

「マスター、下がって!」

ステラが油断なくブラスターを構えた。


穴からせりあがってきたものは……台座だ!

「台座……?」

ステラとドロシーは慎重に台座に歩み寄り、そして観察する。

それは、中央に転移陣を備えた円形の台座であった。

転移陣の手前には小さな宝箱が置かれている。


「これに入れば帰れるのかな?それと……宝箱?」

ドロシーはトラップを警戒しながら、慎重に宝箱に歩み寄った。

調べてみると、宝箱にはトラップの類は仕掛けられていないようだ。


「開けてみよう!」

「マスター、気を付けて!」

ドロシーは意を決して、宝箱の蓋に手をかけ、中を検めた。


中に入っていたのは、赤く光る円筒形の小さなケースだった。

「これってステラが入ってたのと同じやつよね?」

ドロシーはケースを手に取り、中のものを観察した。

赤い半透明のケースの中には、ステラとよく似た小さな人形が入っていた。


「新しい人形?ステラの同型機かしら?……あれ、まだ何か入ってる?」

よく見ると、宝箱の底にはまだ何か入っているようだ。

ドロシーは手を伸ばし、それをつかみ取る。

それは、手の平と同じサイズの、虹色に光る美しいメダルであった。


「これって、ダンジョンメダル?」

ダンジョンメダルとは、ダンジョンの各階層ごとのボスを撃破することで手に入るアイテムだ。

これはいわば、冒険者がダンジョンを制覇したことの証明書のようなものである。

しかし……。


「虹色のメダルなんて初めて見た……。ふつうは金とか銀とか銅よね?」

通常、メダルの色は、各フロアの制覇状況や、ボスをいかに素早く倒せたか等によって決まる。

等級は、上から金、銀、銅の三種類だ。

虹色のメダルなんて聞いたことがないが、メダルに刻まれている紋様は、まぎれもなくダンジョンメダル特有のものだ。


「う~ーん……。」

ドロシーはしばし思案した。隠し部屋といい、ステラのことといい、わからないことだらけだ。

それに、この奇妙なダンジョンメダル……。


ぐ~~⊷……。

ドロシーの腹が鳴った。

さっきの激戦でかなり体力を消耗してしまったようだ。

疲れたし、腹も減った。

それに、ロボ丸のこともある。

考えるのは、一度帰って休んでからでもいいだろう。


「帰ろうか?」

「帰る?」

「そう、わたしたちの家に帰るの。ステラがこれから住むところだよ。」

「ステラの家……。」


ドロシーは収集品を背中のリュックにしまい、ロボ丸を抱え上げると、転移陣の中へと入っていった。

ステラもそのあとに続き、転移陣の中に入る。

やがて、三人の身体を光が包み込み、彼女らをダンジョンの入り口まで運んで行った。









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