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戦の後で

 「アリスさん、とり丸の具合どうですか?」

「アリス、とり丸大丈夫だよね⁈絶対治るよね⁈」

「まぁ少し落ち着かんかお主ら。今からちゃんと治してやるから。」


 地下遺跡での戦闘が終わった後の話だ。

わたしたちは現場に駆け付けた憲兵に簡単な取り調べを受けた後、とり丸の残骸を全て回収してその場を後にした。

破損したとり丸の修理を行うためにそのままドワーフの工房へと直行し、今に至るというわけだ。


 目の前にある工作機械の盤上には、破損し焼け焦げたとり丸のパーツがずらりと並べられている。

どのパーツもあちこちが歪んだり亀裂が入ったりしていて、一つとして綺麗なものがない。


 比較的損傷が少ないのは胴体部分と頭部のパーツであるが、アリスさん曰くメイガス・ギアにとって最も重要な部品を収めたパーツなのでかなり頑丈に作ってあるとのこと。


 アリスさんは天井から伸びる作業機具を掴み取ると、それらを使ってテキパキととり丸のパーツを修復していく。

歪んだ装甲が取り外され、亀裂の入ったフレームや断線した魔力伝達ケーブルが露になる。


 アリスさんは小慣れた手つきでケーブルを繋ぎ直し、フレームに入った亀裂を綺麗に溶接していく。

その手際の良さはまるで熟練の料理人の手捌きを見ているようで、見ていてとても気持ちがいい。


 「ふむ、各部のパーツの損傷は酷いが、幸い機能中枢には異常は見られん。修理用の予備パーツを使えばまた元通りに修復できるじゃろう。しかし……。」

アリスさんはそこで言い淀んで、修理の手を止めた。


 「しかし……なんです?」

「うむ、仮にこのまま元通りに修復したとしても、再び魔導合体を行えば、また以前と同じことを繰り返すだけじゃろう。」

「たしかに、それは困りますね。」

「とり丸、また壊れちゃうの?」

ステラが不安げな声をあげた。


 「そこでじゃ。わしは修理ついでにとり丸に改修を施そうと思うておる。」

「改修……ですか?具体的にはどんな?」

「うむ、とり丸には索敵やマッピング機能をはじめとして様々な便利機能が搭載されておる。しかし一つの機体に様々な機能を盛り込んだが故に機体の内部構造が複雑化してしまった。その複雑さが機体の耐久性を低下させ、あのような事態を招いてしまった。」

「なるほど。その……えっとつまり……。」


 アリスさんは一白置いてから言葉を紡いだ。

「とり丸から幾つかの不要な機能を取り去り、内部構造をシンプルにする。つまり、とり丸をデチューンするのだ!」

「デチューン……ですか?」

「ねぇマスター、デチューンって何?」

「性能を落とすっていうことよ。」

「うーん……よくわかんない。」

ステラが不思議そうに小首を傾げる。

どうやら言葉の意味がよくわかっていないようだ。


 とり丸のデチューン。

それの意味することはわたしたちの有する戦力の低下だ。

現状どの機能が削られるのかはわからないが、わたしたちにとって手痛い打撃になることは間違いないだろう。

しかし魔導合体を行うたびにあのような惨状を招くのだとしたら、機体をデチューンし安全性を高めることは仕方ない事なのだろう。

何より優先すべきなのは、ステラの安全なのだから。


 「わかりました。それじゃあ改修の件、よろしくお願いしますね。時間はどれくらいかかりますか?」

「うむ、一週間もあればできるじゃろう。修理が終わればこちらから連絡する。」

「了解です。それじゃあそろそろお暇しますね。ステラ、ロボ丸、レオナ、おうちに帰りましょ!」

「は〜い!バイバイ、アリス!」

「アリス、あまり徹夜はするんじゃないロボ。子どもに夜更かしは体に毒ロボ。」

「うっさいわ!誰が子どもじゃい!こちとらお主の何百倍も生きとるわ!」

「おまえらちょっと騒がしいにゃ〜。煩くて昼寝もできんにゃ〜。」

「ハハハハハハ……。」


 アリスさんにとり丸の改修を頼んだ後、わたしたちはドワーフ工房を後にし家路についた。

もうすっかり日は暮れて、沈みかけた夕陽が辺り一面を真っ赤に染めている。

わたしたちは雑談をしながら帰り道を急いだ。


 「そういえばご主人、あのダークエルフの女の子はどうなったロボ?」

「あぁ、あの子ね。憲兵さんから聞いたけど、駅前の大学病院に搬送されたらしいわ。」

 

 わたしはあの闘いの後の少女とのやりとりを思い出した。

担架で運ばれていく途中、あの子はにっこりと上品な笑みを浮かべながら、感謝の意を告げたのだった。

「ありがとうドロシーさん、それに人形の皆さん。わたしの名はニア。ニア・マクシミリアンと申します。この御恩は一生忘れません。いつか必ず、ご恩返しをさせていただきます。」


 ニアちゃんか、すごくかわいい子だったな。

雰囲気もかなりお上品だったし、どこかいいとこのお嬢さまなのかしら?

それにしても、マクシミリアン?

あの子の名前、どこかで聞いたことがあるような……?


 グゥ〜〜〜。

ちょうどいいタイミングでお腹が鳴って、わたしの考えは遮られた。

……まぁいいか!

なんか聞き覚えがあるような気がしたけど、たぶんきっと気のせいだろう。

お腹も空いたし、早く家に帰ってご飯にしよう。


 「よーしみんな、家に着くまで競争よ!ビリになった子が皿洗いだからね!」

「わーい!ステラが一番!」

「ちょっと待つロボ!置いてかないでロボ!」

「面倒なのはゴメンだにゃ!ちょっと本気出すにゃ!」

夕陽で赤く染まる遊歩道を、わたしたちは笑いながら駆けて行った。

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