出現!異形のスライム巨人!
「そ、その女をか、返せえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎」
髑髏男が絶叫し、アリスさん目掛けて火炎魔法を放つ!
燃え盛る火の玉が渦を巻きながら、アリスさんの背中目掛けて襲い掛かった!
「させるかロボーーー‼︎‼︎」
しかしロボ丸が一瞬素早く動き、火球の進路上に立ち塞がる!
そして渾身の力で火の玉を蹴り飛ばした‼︎‼︎
ガキィィィィィィィィィィィィン‼︎‼︎‼︎
弾かれた火の玉は本来の軌道をそれ、オベリスクに激突!
哀れにも火炎球の無慈悲直撃を食らったオベリスクは、黒い破片をパラパラと散らし、微塵に砕け散る!
「お、おまえら、い、いったいなんだ⁈な、なんでここにいる?ど、どうしてこ、ここがわかった⁈」
髑髏男は狼狽しながらも、吠えるように疑問を捲し立てた。
しかしお生憎さま、こちらに答えてやる義理は一切ない!
チュンッ!
「ひいっ?」
なおも詰め寄ろうとする髑髏男の足元で火花が爆ぜる。
ステラが髑髏男の足元目掛け、ブラスターを打ち込んだのだ。
フィィィィィィィィィィン……。
更に上空を旋回していたとり丸がふわりと舞い降り、髑髏男の眼前に機関砲の銃口を突きつけた。
「ひ、ひぃっ⁈な、なんだ、その鳥は⁈」
髑髏男は恐怖に顔を青ざめながら、震える足で後退った。
「動くなよ?そいつにはお主を一瞬でクズ肉にできるだけの力がある。下手な真似はせんことじゃな。」
アリスさんが鋭い視線で髑髏男を睨みつけ、ドスの効いた声で恫喝した。
ゴボッ、ゴボボッ!
シリンダーの液面がゴボゴボと泡立ち、薄紫色だった液体が、淵から次第に黒ずんでくる。
液面からはスライム特有の酸性の悪臭に混じって、微かな腐敗臭が漂ってきた。
「あ、あ、あぁ‼︎‼︎ ボクのす、スライムが ‼︎し、死んでしまう!せ、せっかく、こ、こ、ここまで育てたのに‼︎ボクの野望がぁ‼︎‼︎」
髑髏男はさらに顔面蒼白となり、慌ててシリンダーへと駆け寄ろうとした。
しかし即座にとり丸に機銃を突きつけられ、その場から一歩も動くことができない!
「どうやら魔力の供給源を絶たれたことで、スライムの細胞が壊死し始めておるようじゃな。これで奴の愚かな企ても、すべて潰えたというわけじゃ。」
「アリスさん、わたしが代わりますよ。」
「あぁ、頼む。奴が逃げ出さんように、わしととり丸とで見張りを立てておく。お主はここから出て、その娘を医者のところへ連れていけ。」
「わかりました。」
わたしはアリスさんの代わりに少女を肩に担ぎ、外へ出ようとした。
しかし……。
「ヒ、ヒッヒッヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!!!!!!!」
突如ヒステリックな男の笑い声が背後から聞こえてきた。
既に出口へと差し掛かっていたわたしは、その鬼気迫る笑い声に思わずビクッとなり、その場で立ち止まってしまった。
「いったいなんなの?」
思わず背後を振り返ると、そこには髑髏男が身をのけぞらせ、けたたましく哄笑しているのが見えた。
「ヒ、ヒヒ、そ、そうだ、わ、わかったぞ。さ、最初からそ、そうすれば、よ、よかったんだ!」
髑髏男は目を血走らせ、口の端からよだれを垂らしながら、何事かを大声で叫んでいる。
「ヒヒヒ、ヒヒヒ!!!そ、そうだね、わ、わかったよ。き、キミは、最初からずっと、そ、それを求めていたんだね!何で今まで気づけなかったんだろう……?ヒ、ヒヒヒヒヒヒ……!」
「あいつ……。さっきから何を言っているのかしら?」
「さぁな。どうせ手塩にかけて育てたスライムが目の前で死んでしまって、気でも触れたんだろうよ。」
「……こわい。」
背に担がれた少女が、震える声で小さく呟く。
よほど怖かったのだろう、その身体は背中越しにもわかるほどに恐怖で小刻みに震えている。
「心配しないで。あいつはもう何もできないわ。あなたはもう大丈夫だから。ここから早く出て、一緒におうちに帰りましょう?」
「……うん。」
少女はこくりと小さく頷くと、安心したのかそのまま目を閉じて眠ってしまった。
すやすやと可愛らしい寝息を立てる少女を担ぎながら、わたしはあらためてこの場から立ち去ろうとした。
その時だ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
突如地面がグラグラと揺れ、大きな地響きが鳴り響いた!
「うわっ!地震⁈ 」
「こんな時にか⁈ 」
そのあまりの揺れの激しさに、わたしたちは立っていられなくなって、その場にしゃがみ込んでしまう。
そういえば新聞に、最近地震が多いって書いてあったっけ。
でも、いくら何でもこんな時に……?
バキバキッ……バリッ……‼︎‼︎
ドーム状の天蓋に稲妻のようなヒビが入り、大小の破片がパラパラと降り注いでくる。
その中の破片の一つが、髑髏男の眼前で浮遊するとり丸の羽根に当たり、耳障りな金属音を立てる。
「クェェェェェェ⁈」
思いもよらぬ一撃に困惑の声を上げるとり丸!
視聴者の皆さまは当然ご存じだろうが、落石が当たった程度で壊れるほど、とり丸は柔な機械ではない。
しかしその思いもよらぬ一撃は、ほんの一瞬とり丸をひるませるには充分であった。
バランスを崩し、空中でよろめいてしまうとり丸。
わずかの間、銃口が髑髏男からずれてしまう。
そのほんのわずかの一瞬の隙を、髑髏男は見逃さなかった。
「ハア、ハア、い、今だ‼︎‼︎」
手すりにしがみつきながら、グラグラと揺れる足場の上を走る、走る!
空中でようやく体勢を立て直したとり丸が、髑髏男の背に銃口を向け、機銃を掃射!
しかし、時すでに遅し!
髑髏男は手すりを乗り越えカエルめいて跳躍!
空中でとり丸の放つ銃弾に身体を引き裂かれながら、男の痩せた身体が大の字になって宙を舞う!
ボチャァァァァァァァァァン!!!!
水面に大きな波紋を立てながら、髑髏男がシリンダーの腐敗液体の中へと落下!
「き、来たよ!今来た!き、キミがほんとうに求めていたもの、ぼ、ボクの全て!今捧げるから!全て‼︎」
水面でバシャバシャともがきながら、髑髏男は熱を帯びた口調で腐敗スライムに語りかける。
その呼びかけに応えるかのように、水面から黒い触手の群れが、ぽこぽこと音を立てて生えてきた。
不浄な触手の群れは鎌首をもたげ、髑髏男の身体にゆっくりと絡みついていく。
やがてそれは髑髏男の全身を覆い尽くすと、そのボロ切れのようなその身体をゆっくりと飲み込んでいった。
やがて揺れが収まるとともに、一瞬不気味な静寂が辺りを支配する。
「いったい何が起こってるロボ⁈」
「マスター見て!シリンダーが……‼︎」
ステラが指さす方を見ると、シリンダーの表面にヒビが入っている。
ひび割れは徐々に広がっていき、やがてその隙間から間欠泉のように腐敗スライム粘液が噴き出す。
さっきの地震でヒビが入ったのか?
いや、違う!
シリンダーは内側からの圧力で壊れていっているのだ!
円筒形だったシリンダーは膨張し、樽の様な形に歪んでいく。
やがて圧力に耐えきれなくなったそれは、辺り一面にガラス片を撒き散らし圧壊する!
ガッシャアァァァァァァァァァァァン‼︎‼︎‼︎
「危ない!」
わたしたちは咄嗟にオベリスクの影に隠れ、飛散するガラス片から身を守る。
粉塵が舞い散り、わたしたちの視界を土煙が覆い隠す。
「……ゴホッ、ゴホッ!」
わたしはハンカチで口元を抑えながら、爆発の中心地を見た。
やがて土煙が晴れていき、粉塵に覆い隠されていたそれが露わになる。
そしてわたしは見た。
見るも語るも悍ましい、その異形の姿を。
それは黒ずんだ粘液でできた、巨大な人型だった。
樽のようなずんぐりした胴体から、巨木の幹のように太い手足がどっしりと伸びている。
頭にあたる部分はなく、代わりにイソギンチャクの触手のようなものが胴体上部に密集し、蠢いている。
それだけでも充分悍ましいのに……、おぉ、神よ!
こんなものが許されていいのですか?
……正直わたしはこれ以上、あの悍ましいモノについて語りたくない。
しかし物語りの語り部として、勇気と責任をもって語らねばなるまい!
目の前の怪物の胴体部分が薄らと盛り上がり、ある奇妙な形を作っていく。
それはギョロリとした目玉に低く反り返った鼻、そして病的に痩せこけた頬を持つまるで骸骨のような生気のない顔。
おぉ……神よ、そこに浮かび上がったモノはジョージ・スライムスキーの巨大な顔そのものであった!
_続く
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