登場!変態外道魔術師‼︎〜その3〜
「ヒ、ヒヒっ!ぼ、ぼくが作り出そうとしているのはね、ぎ、ギフト能力を持った、き、究極のスライムなんだ!」
「究極の……スライム⁈」
彼の話を大まかにまとめるとこういうことらしい。
この髑髏男の本名はジョージ・スライムスキー。
昔、共和国の魔術大学に在籍しており、そこでスライムの研究を行っていたらしい。
ある日の実験中、彼は偶発的に、スライムを爆発的に増殖させる方法を発見してしまう。
それはスライムの細胞に、魔力を直接注入するという方法である。
この方法を用いれば、それまでの培養液を使う方法より低コストかつ高効率で、高い品質のスライムを増やすことができる。
この画期的な手法は学会で大いに評価され、彼は表彰を受けることとなった。
昇進し、研究の予算を大幅に増やされ、教科書に名前が載るようになった。
この時、彼の人生は絶頂の真っ只中だった。
この成功に気をよくした彼は、更にスライムの研究
を押し進めることにした。
それはスライムに他種族の魔物の魔力を注入することにより細胞に変異をもたらし、多様な属性を持ったスライムを人工的に生み出すという悪魔じみた計画。
その名も「スーパースライム計画」である。
その計画は成功し、彼の手により様々な属性魔法を使うスライムが生み出された。
しかし彼の探究心と名声への欲求は、とどまることを知らなかった。
つぎに彼が考えたのはギフトを持つ生物、つまり人や亞人をスライムに取り込ませ、その能力をスライムに分け与えること。
つまり彼は、ギフト能力を使えるモンスターを、人工的に作り出そうとしたのである。
しかし、この時点で彼の研究は危険視されはじめた。
まず人間を実験材料に用いることが、大学の研究者たちから問題視された。
大学は倫理的な面から実験を許可せず、彼に実験の即時中止を命令した。
しかし彼はこの命令を不服とし、部下の研究員を被験者とし、実験を強行した。
被験者に選ばれたのは、彼の研究室で一番高い魔力を持つ人間の女性だった。
多額の報酬と昇進と引き換えに、実験に同意した彼女は、多量のスライムで満たされた実験用シリンダーにその身を投じた。
この実験が成功すれば、高い魔力と自己再生能力を持ち、更にギフト能力まで兼ね備えた、究極のスライムが誕生する……はずだった。
しかし彼の思惑に反して、実験は失敗した。
実験対象のスライムにギフトは発現せず、ただいたずらに増殖を繰り返すだけだった。
その上被験者は、スライムに全ての魔力を吸い尽くされて衰弱死を遂げた。
大学に人体実験がバレた彼は、大学から除籍され追放された挙句、共和国重犯罪刑務所に収監されることになった。
後に刑期を終えた彼は裏社会に身を隠し、犯罪者ギルドの庇護下に入った。
ギルドの下で違法薬物の製造を請け負いながら、実験器具や材料を買い集め、かつての実験の続きを再開しようとしたのだ。
なぜ実験は失敗したのだろう?
スラムの木賃宿で眠りにつく前に、彼はいつも考えた。
なぜ被験者は衰弱死したのか?
それは被験者がスライムによる魔力吸収の負荷に耐えきれなかったからだ。
実験に使うスライムの量が多ければ多いほど、当然吸引する魔力の量も指数関数的に増えていく。
生来半端な量の魔力しか持たない普通の人間では、それに耐え切れなくて当然なのかもしれない。
それならば、亞人はどうか?
生来高い魔力を持つという、エルフ種や魔族なら?
彼らならスライムの負荷に見事耐え切り、望み通りの結果をもたらしてくれるのではないか?
そういう結論に達した彼は、闇市で行われる人身売買オークションに足繁く通い、目当ての種族を探し求めた。
しかし、エルフ種の奴隷につけられる値段は途方もないもので、犯罪者ギルドで下働きをしている彼にはとても手が出る額ではなかった。
失意にくれる彼は、しばらく酒場で飲んだくれる日々を過ごした。
しかし、思わぬところから彼に幸運が舞い込んだのだ。
ある日、彼が違法薬物の原料となる薬草を採取すべく、共和国近隣の森に出かけていた時のことだ。
薬草の採取があらかた終わり、さあ帰ろうかと森の散策路をとぼとぼ歩いていると、思わぬ人物とすれ違った。
彼は咄嗟に振り返り、そして我が目を疑った。
エルフだ!しかもただのエルフではない。
エルフ種の中でも特に高い魔力を持つという、絶滅危惧の超希少種、ダークエルフの少女!
背後からでもわかる長く尖った耳、艶やかな褐色の肌、薄桃色がかった長い銀髪。
見間違いようがない!
間違いなくダークエルフだ!
なんでこんな辺鄙な場所にダークエルフが?
いや、その疑問は後で直接こいつに聞けばいいだけの話だ。
これは神が自分に与えたもうた千載一遇のチャンスに違いない。
彼は一瞬の思案の後、すぐさま行動に移った。
麻痺魔法を背後から食らわせ、彼女を昏倒させたのだ。
彼は秘密のアジトに彼女を連れ帰り、牢屋に入れて悍ましい実験を繰り返した。
幾度かの実験の後、彼女がスライム実験の被験者に相応しい素体であると確信した彼は、スライムの培養槽に彼女を放り込み、停滞していた実験の続きをはじめたのだ。
「ヒ、ヒヒ、そして今に至るというわけさ!」
髑髏男は口角を吊り上げ、真っ赤に裂けた口でヒヒヒと嗤った。
_続く




