登場!変態外道魔術師‼︎〜その1〜
わたしたちは目の前の冒涜的な光景にただただ戦慄した。
不浄な液体で満たされたガラス製巨大シリンダー。
その中で力無く四肢を投げ出して漂うダークエルフの少女。
少女は一糸纏わぬ裸体である。
しかし、その股間や口元にはケーブル状の機械装置が接続されており、ときおり、彼女の呼吸に合わせてピクピクと蠢動している。
シリンダーの中の少女に意識はあるのだろうか?
半分見開かれた琥珀色の瞳はどうやら焦点があっていないらしく、虚な瞳はただぼんやりと虚空を見つめている。
どうやら意識はかなり朦朧としているらしい。
「大変!はやく助けにいかなきゃ!」
わたしは彼女を助けるためにシリンダーへと駆け出そうとした。しかし……。
「待って、マスター!誰か来るよ!」
索敵に出ていたステラが、走り出そうとするわたしを制止した。
わたしたちは素早くオベリスクの影に隠れ、周囲の様子を伺った。
息を殺し、物音を立てないよう細心の注意をはらいながら、オベリスクから半分顔を出して、周囲を観察する。
よく見ると、シリンダーの上部に張り巡らされたキャットウォークの上に、黒い人影が見える。
人影はカツーン、カツーンと足音を立てながら、鉄製の足場の上を歩いている。
その足取りはどこか忙しなく、どうやらシリンダーの方へと向かっているようだ。
いったい誰だろう?
ここからでは遠すぎてよく見えない。
「もう少し近づいてみましょうか?」
「いや、その必要はないぞ。こういう時こそ、とり丸の出番じゃ。」
そう言うとアリスさんは、タブレットの画面をこちらに見せてくれた。
そこに映し出されていたのは、黒いローブを目深に羽織った人物だった。
どうやら画面の位置関係から察するに、これはあの人影を上空から映し出したものらしい。
天井に目をやると、とり丸らしき小さな影が、オーブの群れを巧みに躱しながら、静かに飛び回っている。
なるほど、つまりこの映像は、とり丸がリアルタイムで空から映し出しているものということか。
「とり丸の索敵機能のちょっとした応用じゃよ。どうじゃ?わしの作ったメイガス・ギアは?たいしたものじゃろ?」
アリスさんはタブレットを弄りながら、したり顔でニヤリと笑った。
「アリスすごいすごーい‼︎」
ステラは目を輝かせながら、アリスさんを褒めちぎっている。
アリスさんもステラに褒められてご満悦のようだ。
わたしはそんな可愛い二人を横目で眺めながら、タブレットの画面に目を移した。
人影はシリンダー上部に設置された制御装置らしきものを、忙しなく弄くり回しているようだ。
しかし、この映像ではフードの人物の正確な容姿や性別を窺い知ることができない。
上から映した映像ということもあるが、何より画面に映る人物があまりにも小さくてよく見えないのだ。
「アリスさん、顔の部分、もう少し拡大できませんか?」
「あいよ、任されよ!」
アリスさんは画面に映る人物をポチポチと連続タップした。
すると、人物の画像が徐々に拡大されていき、いままでよく見えなかったその顔が、画面上に大写しになった。
画面に映るその人物の容貌。
性別は男で間違いないだろう。
年齢はおそらく三十代か四十代前後くらいか?
頭からフードを被っているため、正解な種族はわからない。
土気色の不健康な肌に、ギョロリとした目玉。
鼻は低く、頬は病的に痩せこけている。
目の下の深い隈と相まって、遠目にはまるで髑髏のように見える。
「まるで死神みたいロボ。」
タブレットを覗き込んでいたロボ丸が、青ざめた顔でそう呟いた。
髑髏男はふと立ち止まると、懐から何か取り出した。
それは古めかしい装飾の施された、一冊の魔導書だった。
髑髏男は、あちこちが擦り切れ付箋まみれのそれをパラパラとめくりながら、制御盤のダイアルをカチカチと回している。
そして男は制御盤の横にあるレバーを掴み、力を込めて思い切り下げた。
ガチャリという金属音が鳴り、ブゥゥゥゥンという低いモーター音が反響し響き渡る。
おそらく、なんらかの機械装置のスイッチが入ったのだろう。
制御盤のメーターが目まぐるしく動き回り、チカチカとランプが点滅する。
ゴボリ……という音とともに、シリンダー内に大きな気泡が浮き上がる。
すると、まるでクレーンで引き上げられる沈没船のように、シリンダー内の少女がふわりと浮き上がった。
少女の身体は、不浄な液体の中をゆっくりと浮上し続ける。
やがて液面がゴボゴボと大きく泡立ちはじめた。
そして一際大きな泡とともに、粘液に塗れた裸の上半身が露わとなった。
_続く




