実戦テストだ!メイガス・ギア〜その3〜
とり丸の索敵機能試験が終わった後、わたしたちは近くの茂みに隠れて敵の様子を伺っていた。
「ドロシー殿、兵装試験前に、地図に記された記号の意味を説明しておく。この赤い丸が敵を示す記号じゃが、それは先ほど説明したな?」
そう言うと、アリスさんはタブレットに表示された赤い丸を指差してみせた。
地図上に記された複数の赤い丸は、ゆっくりとした速さで動いている。
どうやら、敵の群れはどこかに向かって移動しているらしい。
「えぇ、さっき聞きました。それじゃあアリスさん、ほかの記号についての説明をお願いします。赤い丸以外にも、緑色の丸と青い丸が表示されてますけど、これは何を表しているんですか?」
「緑の丸は味方の印じゃ。これはわしやドロシー殿、そしてステラ殿にロボ丸殿やレオナを示しておる。青い丸が示すのはメイガス・ギア、つまりとり丸のことじゃな。」
「なるほど、よくわかりました!」
「では戦闘前に敵の数と種類を確認しておくかの?」
「了解です、アリスさん!」
わたしはタブレットを操作し、敵の位置と数、そして自分たちの現在地を確認する。
タブレットに表示された敵影は26。
そのうちスライム種のモンスターが16匹。
ゴブリンが10匹。
いずれも低レベルの雑魚モンスターだ。
モンスターは約5〜6匹程度の数で群れをなし、フィールド上に分散している。
わたしは懐からギルドの依頼書を取り出し、地図上の敵の数と照合する。
どうやら、ギルドの寄越した情報との差異はほとんどないようだ。
「ちょっと待て、ドロシー殿。その紙はなんじゃ?」
アリスさんが眉根を寄せて、わたしに問いかけてきた。
「何って、ギルドの依頼書ですけど?」
「いや、それは見ればわかる。しかし何故ギルドの依頼書を?」
「えぇ、どうせモンスターを倒すんなら、次いでにギルドの魔物討伐依頼も受けておこうと思いまして。あれ?いけませんでしたか?」
「……まぁ別に構わんよ。しかしお主、ずいぶんちゃっかりしとるのぅ。」
アリスさんは呆れたような顔でそう答えた。
「えへへ、まぁ、金にがめついのがわたしの性分なんで、そこは勘弁してください、アリスさん。」
さて、話が脱線したので、一度話を本筋に戻すとしよう。
今回の戦闘は屋外戦闘におけるとり丸の兵装試験なので、残念ながらステラたちの出番はない。
ただし、万が一の場合に備えて、いつでも戦闘ができるように待機しておく。
「よーし、それじゃあ早速行きましょうか!兵装試験開始ーーーーーーーーー!」
「とり丸、お仕事の時間だよ!悪いやつをやっつけちゃえ!」
「クェェェェェェェェェェ‼︎‼︎‼︎」
とり丸はステラの命令に答えるように鳴くと、ふわりと宙に舞い上がり飛び立って行った。
とり丸はここから北方にある草原に向けて、真っすぐ静かに飛んでいく。
進行方向には六つの敵影。
タブレットの表示によると、スライムが六匹。
どうやらとり丸は、ここから一番近い敵の群れに、狙いを定めたようだ。
タブレットに表示された青い丸が、赤い丸の群れに
段々と近づいていく。
そして、青い丸と赤い丸の表示が重なった、その時だ!
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼︎‼︎‼︎
蜂の羽音のような音が連続して聴こえて、大きな土煙がドドドと立ち上った。
どうやらとり丸が敵の群れへと攻撃を開始したらしい。
懐から取り出した双眼鏡で、遠方にいるとり丸の様子を確認する。
とり丸の機体下部から、青い光の玉が凄まじい速さで連射され、敵の群れを薙ぎ払っている。
どうやらとり丸は、魔力弾のようなものを発射して攻撃しているようだ。
「あれは試作型魔導機関砲と言ってな、とり丸の脚部に内蔵されておる固定兵装じゃよ。低威力の魔力弾を高速連射する、まこと恐ろしい兵器じゃ。ふむ、見たところ、どうやら正常に稼働しておるようじゃの。」
アリスさんはタブレットを覗き込みながら、口元に邪悪な笑みを浮かべた。
地図を確認すると、赤丸の数が六つから四つに減っている。
また再度、蜂の羽音のような音が響き、土煙が連続して巻き起こる。
再度タブレットを確認すると、敵の表示が全て消え失せていた。
どうやら一つの群れを掃討することに成功したらしい。
とり丸は空中で大きく旋回すると、わき目も降らず次に群れへと狙いを定め飛んでいく。
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!ドドドドドドドドドドドドド!!!!!!
平原のあちこちで土煙が巻き起こり、モンスターの肉片が宙に舞う。
遥か大空から一方的にまき散らされる圧倒的な暴力によって、哀れな魔物たちは抗う暇もなく物言わぬ肉片へと変えられていく。
この調子だと、ステラたちの出番はどうやらなさそうだ。
「しかし、ただ待っているのも暇ですね〜。」
「退屈そうじゃな、ドロシー殿。どれ、それならおもしろいものを見せてやろう。タブレットを貸すがよい。」
アリスさんはわたしからタブレットを受け取ると、画面に表示された文字盤をポチポチと押し始めた。
「見てみよ、ドロシー殿。」
アリスさんがそう言って、タブレットをこちらに返してくれた。
タブレットの画面には地図ではなく、別の画像が映し出されている。
そこに映し出されていたのは、草原とそこで慌てふためくスライムの群れだった。
画像のアングルから察するに、おそらく空から地上を映したものだろう。
画像は常に高速で動いていて、ときおり目まぐるしく
そのアングルを変えている。
「アリスさん、この画像ってもしかして……。」
「うむ、察しの通り、その画像はとり丸の眼から地上を写したものじゃ。そのタブレットを介する事で、とり丸の視点で戦場の様子を観測することができる。」
おぉ……まさかそんなことまでできるなんて……。
メイガス・ギアもすごいけど、このタブレットもすごく便利だ!
さすがドワーフの叡智の結晶!
ほんとにすごい!
「とり丸、すごいすごい!」
いつのまにかステラが、わたしの肩越しにタブレットを覗き込んでいた。
どうやらとり丸の活躍が大層ご満悦らしく、わたしの肩の上を嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねている。
すごくかわいい!
さて、地図上の赤丸はどんどんその数を減らし、残る数は三つとなった。
残るはゴブリンが三匹。
おそらくあと一分もかからないうちに、戦いは終わるだろう。
「キィィィ!キィィィ!!!」
ゴブリンがおもちゃのような弓を構えて、高空にいるとり丸を撃ち落とさんと毒矢を放つ。
しかしとり丸は、軽やかな動きで毒矢を回避し、次いで迎撃行動に移る。
とり丸は一度大きく旋回して距離を取った。
そして、獲物を捕らえる鷲のように両脚部先端のクローを開いた。
すると、ガチャリという音と共に、とり丸の踵部分から砲口が迫り出した。
とり丸に搭載された固定兵装、試作型魔導機関砲だ!
そして砲口がギラリと光り、そこから青く光る魔弾が超高速で放たれたのだ!
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼︎‼︎‼︎
蜂の羽音を思わせる銃声が、平原一帯に響き渡る!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド‼︎‼︎‼︎
魔弾が大地に次々と大穴を穿ち、大きな土煙が連続して沸き上がる。
土煙は哀れなゴブリンたちを飲み込んでいき、その肉片を宙に散らしていく。
おそらく、彼らは断末魔の悲鳴をあげることすら出来なかっただろう。
わたしはタブレットから地図を呼び出し、敵の生き残りがいないか確認する。
地図上に赤丸は一つもなし。
敵影ゼロ。
兵装試験は無事終了だ。
「アリスさん、これで兵装試験は終了ですね!」
「うむ、今回の試験、なかなかの成果であった。おかげでいいデータが沢山とれたぞ。さて、次は洞窟での
運用試験じゃ。ドロシー殿、案内を頼む。」
「了解です、アリスさん!サクッと次行っちゃいましょう♪」
わたしたちは少しの休憩をとった後、次の試験の場所に向かって歩き出して行った。




