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遂に完成!メイガス・ギア!

 さて、わたしたちがドワーフ遺跡でメイガス・ギアの立体映像を見せられてから、早くも三日たった。

わたしたちはかねてよりの打ち合わせどおり、デザイア邸の地下転移陣を抜けて、ドワーフ工房でアリスさんと落ち合うことになったのだった。


 「こんにちは、アリスさん!約束通りの時間に来ましたよ!メイガス・ギアの進捗状況どんな感じですか?」

わたしがそう尋ねたとき、ちょうどアリスさんは工作機械に向かい、何か作業をしているところだった。


 「おう、お主らか。ちょうどいいところに来よったな。つい今しがた組みあがったところじゃよ。」

そう言ってアリスさんは振り返ると、少し疲れたような顔でにっこりと笑った。

「アリス、目の下が真っ黒!」

ステラが驚いたような顔で、アリスさんのことを指さした。

なるほど、よく見ると確かにアリスさんの目の下にくっきりと隈が浮き出ている。


 「徹夜でもしたんですか、アリスさん?少し疲れてるみたいですけど。」

「ははっ、いやなに、こいつを作り上げるのに少し夢中になってしまってな。実はもう三日も寝取らんのだ。」

「もうあきれた!アリスさん、せっかく怪我が治ったばっかりなのに、またそんな無茶して!」

「いやぁすまんすまん。なにせこいつはドワーフどもの残した、未解明のロストテクノロジーの塊ゆえにな、ついつい時間を忘れて熱中してしまったのだ。」

アリスさんはそう言うと、目の下をごしごしとこすりながら苦笑いした。


 「ほれ、お主ら、そんなところで突っ立っとらんで、こっちに来て見て見るがいいぞ。」

「それじゃあお言葉に甘えて、遠慮なく見せてもらいます!」

わたしはワクテカしながら、小走りで作業台まで近づいて行った。

そして期待に胸高らかせながら、作業台を覗き込んだ。


 「おぉ……!こ、これは!」

作業台の上に鎮座するものを見て、わたしは思わず感嘆の声を上げた。


 なまめかしい金属光沢をたたえる流線型のボディ。

作業台の光を浴びて輝く、美しい白銀の翼。

鋼鉄さえたやすく貫きそうな、黄金色の鋭い嘴。

油断なく敵を捕らえ、鋭く輝く琥珀色の瞳。


 これが、これこそがドワーフの叡智から生まれた新たな力!

我々を勝利へと導く必殺の切り札!

その名もメイガス・ギア!


 「わ~~‼すごい!機械のとりさんだ!」

「おぉ……!これがメイガス・ギア!なかなかかっこいいロボね!」

作業台の上では、ステラとロボ丸がメイガス・ギアを取り囲んでわいわいはしゃいでいる。

一方レオナはというと、工房の片隅で興味なさげにスヤスヤと寝息を立てている。

どうやらレオナはメイガス・ギアには興味がないらしい。


 「……えーと、それでアリスさん、これはどうやって使うものなんですか?」

めでたく完成したのはいいが、いったいこれをどう使えばいいのかさっぱりわからない。


 なにかコントローラーのようなもので動かすんだろうか?

それとも、人形使いのスキルで魂を与えて操る?

いや、さすがにこれ以上人形を増やすのは考え物だ。

とてもじゃないがわたしの魔力が持ちそうにない。


 「案ずるなドロシー殿。こいつは自立稼働型じゃ。そなたが大まかな命令を与えれば、自分で考え判断を下し、自分の意志で行動する。別にお主が魂を与えて操る必要はないのだ。」


 アリスさんはわたしの考えを見透かしていたかのようにそう答えた。

なるほど、それならばわたしへの負担もだいぶ軽くなる。

戦闘ではずいぶんと役に立ってくれそうだ。


 「さて、ドロシー殿。メイガス・ギアを起動させるには、機体に魔力を充填せねばならぬ。わしはこの通り徹夜明けで疲れとるでな。ちと頼まれてくれんか?」

「わかりました。やってみます!」


 わたしは盤上におかれた鳥型の機械に手をかざし、なみなみと魔力を注ぎ込んだ。

メイガス・ギアが七色の燐光を帯び、機体の羽根がピクリと動いた。


 「アリスさん、これぐらいでいいですか?」

「ふむふむ、起動に必要な魔力は充分に溜まったようじゃな。さて、次が最後の仕上げじゃな。」

「最後の仕上げ?」


 「うむ、ドロシー殿、こいつに真名を与えて、名前を呼んでみるといい。さすればメイガス・ギアはお主を仕えるべき主人として認識し、お主と魔導人形達の新たな力となるだろう。」


 「アリスさん、メイガス・ギアというのはこの機体の名前ではないのですか?」

「メイガス・ギアというのは魔導人形の戦闘支援を目的として作られた機械妖精の分類の事じゃ。この機体の正式な名前ではない。さ、ドロシー殿。早く名前をつけてやるといい。」


 うーむ、いきなり名前を付けろと言われても……。

はてさて、いったいどんな名前を付ければいいのやら。

……どうせなら神話や伝承にちなんだかっちょいい名前がいいわね。

召喚獣や古代の英雄の名前もいいかも‼︎

鳥にちなんだ神話、伝説、英雄……、なにかないか……。


 「ねぇ、マスター!わたしが名前つけてもいい?」

わたしの深淵なる思考は、ステラの一声で中断された。

「ステラ、なにかいい名前思いついたの?」

「うん!すごくいい名前思いついた!ねぇねぇ、マスター!いいでしょ?」

ステラはキラキラした瞳で、上目遣いでわたしにおねだりしてくる。

正直すごくかわいい!!!


 しかし、アリスさんにはわたしが名前を付けるようにと言われているのだ。

ステラが名付け親になってもいいのだろうか?

わたしは困った顔になり、隣で腕組をしているアリスさんに、横目で指示を仰いだ。


 「別に構わんぞ?さっきも言ったが、その機体は魔導人形の戦術支援を目的としてつくられたものじゃ。従うものがお主になるかステラ殿になるか、ただそれだけの違いじゃ。」

「わかりました。それじゃあステラ、あなたが名前を付けてあげなさい。」

「ほんと?ありがとう!マスターだいすき!」

ステラはひまわりのような笑顔を浮かべ、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。

やっぱりすごくかわいい!


 ステラはメイガス・ギアの額に手を当てると、しゃがみこんでその瞳を覗き込んだ。

「とりさん!あなたの名前はね……。『とり丸』!とり丸だよ!」

ステラが名前雨を呼んだ瞬間、機械妖精の瞳に力強い光が宿った。

『とり丸』と名付けられたそれは、翼をはためかせふわりと宙に浮くと、鷲のような鳴き声をあげた。


 「とり丸って……ずいぶん安直な名前ねぇ。」

わたしは少し呆れたような口調でそう呟いた。

「だって、ロボ丸はロボットだからロボ丸でしょ?とり丸はとりさんだからとり丸だよ!」

ステラはそう言うと、ぴょんとジャンプして、空中でホバリングを続けるとり丸の背中にひょいと飛び乗った。


 「これからよろしくね!とり丸!」

「クェェェェェェェェェェェ!!!」

とりまるは嬉しそうに一声鳴くと、子供のようにはしゃぐステラを背に乗せたまま、工房の中を元気いっぱいに飛び回った。

まぁ、名付けられた本人が気に入っているなら別にいいか。




続く


 



 


 

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