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アランの失態 その一

お待たせしました。ざまあ回です。

 これは我らが主人公『ドロシー・アプリコット』が、蜘蛛の群れとの激戦を終えた少し後の話である。

ドロシーに役立たずのレッテルを張り、二足三文の退職金を手渡し追放したアラン。


 彼は己に発現した「剣聖」のギフトと数多のチートスキル、そして潤沢な資金を頼りに、高難易度のダンジョンを次々と攻略していったのだった。


 「うおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎‼︎」

ガキィィィィィィィィィィィィィィィィン‼︎‼︎‼︎‼︎

薄暗い湿ったダンジョンの通路に、野太い男の声と剣撃の音がこだまする。


 ここは共和国の北東に位置する超高難易度迷宮「キモン・ダンジョン」。

迷宮奥に隠された古代の秘宝と名声目当てに、数多の冒険者たちが果敢に挑んでいった。


 しかし、ダンジョン内の凶悪極まるトラップ群と、余りにも強い道中雑魚敵に阻まれ、多くの冒険者たちがその命を散らしていったのもまた事実だ。


 それ故に、いつのころからかこのダンジョンはこう呼ばれるようになった。

「人喰いダンジョン」と……。


 その危険性故に、本来なら冒険者ギルドの特別な許可がなければ立ち入れない場所である。


 しかしアランは、生家の持つ潤沢な財力とコネクションを利用し、半ば強引にこのダンジョンへと立ち入り許可をもぎ取ったのだった。


 ガキィィィィィン!!!ガキィィィィィン!!!

松明の炎に照らされ、暗闇の中に二つの影が躍る。

カビ臭い煉瓦造りの通路で、影は互いに剣をぶつけ合う。


 火の粉を散らす松明が、影の一つを朧げに照らし出す。

それは犬の頭に人間の身体を持つ、全身毛むくじゃらの剣士。

一般にコボルトと呼ばれる、人型の魔獣の一種だ。


 「タチサレ……タチサレ……。」

コボルトはショートソードとバックラーを油断なく構え、くぐもった声で警句を発する。


 ジジ……ジジ……

一条の風が吹き荒び、松明の炎を大きく揺らした。

暗闇の中ゆらめく炎が、魔獣と対峙するもう一つの影をぬらりと照らし出す。


 過剰な装飾を施した煌びやかな鎧と盾。

そして高価な宝玉を柄と刀身に埋め込んだ、悪趣味極まりないデザインのロングソードを構えた、長身痩躯の男。

我らが人形使いを追放せしめた男。

かつてドロシーが所属していたパーティーの団長、アランである。


 「いゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

アランは気合一閃の雄叫びを上げ、コボルト目掛け上段から切り掛かる!

素人に毛が生えた程度の、実にぎこちない斬撃だ。


 それに対しコボルトは、僅かに上体を逸らしただけでこれを回避し、すれ違い様にバックラーをアランの背中目掛け叩き込んだ!


 「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁈」

無様な悲鳴を上げながら、もんどり打って転げるアラン。

転んだ拍子に床に落としたロングソードが、カラカラと音を立てながら、回転しながら地面を滑っていく。


 アランはなんとか体勢を立て直そうと、壁に手を付き立ち上がろうとするが、過剰装飾俗悪鎧が足枷となり上手く立ち上がることができない。


 追撃し、トドメを指す絶好のチャンスだ!

しかし、何故かコボルトはアランに対し、一切の攻撃を行わない。

剣を中段に構えたまま、ただ真っ直ぐにアランを見据えている。


 「……タチサレ……ハヤクココカラタチサルノダ……デナイト……。」

またもコボルトの口から不気味な警句が漏れる。

いったい彼はアランに何を伝えたいのか⁈


 しかし、彼の意味深な警句は、ただイタズラにアランを激昂させるだけだった。

「……っ、テメェ!犬っころの分際でよくも俺様を舐めやがって‼︎‼︎」

壁に手をつき、ようやく立ち上がったアランは、右の手のひらに魔力を込め、人差し指で空中に円を描いた。


 「スキル発動‼︎アイテムボックス‼︎‼︎‼︎‼︎」

アランが虚空に描いた円が黒い渦を巻き、その中からぬらりと光る細長い金属塊が飛び出した。

それは柄頭に宝石が埋め込まれた剣の柄だった。


 アランは剣のグリップを握ると、空中の渦からそれをずるりと引き摺り出す。

暗紫色の粒子を刀身に纏うそれは、またも過剰装飾の施されたロングソードだった。


 「ハーーハハハハハハハハハハハハハハ‼︎‼︎‼︎‼︎俺様から剣を弾き飛ばしていい気になっているようだが、こちらにはアイテムボックスのスキルがある‼︎‼︎俺様は好きなだけ武器やアイテムを取り出せるのだ‼︎‼︎さ〜〜ら〜に〜‼︎‼︎‼︎」


 なおも高笑いを続けるアランは、剣を握る腕に更に魔力を込める。

すると、刀身が白いコロイド状の魔力を纏い、眩く輝いていくではないか⁈


 「これでも喰らえ犬っころ‼︎‼︎剣聖のギフト持ちだけが使える究極の超奥義‼︎‼︎‼︎‼︎」

アランは剣を上段に構え、刀身に更に気合を込めた。


 「その名も‼︎‼︎ホーーーーリィーーーーースラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッシュュュュュュ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

そして、雄叫びと共に剣を振り下ろす‼︎‼︎


 刀身から白い三日月型のエネルギー波が放たれ、眩い光がダンジョンの通路を照らし出した。

エネルギー波はコボルト目掛け、疾風の如き速さで飛んでいき、その身を真一文字に切り裂いた!


 コボルトは唐竹一閃、頭頂部から真っ二つに身体を切り裂かれ、ずるりと崩れ落ちた。

「……オロカナ……マネヲ……コノママ……ヒキカエセ……サモナクバ……。」


 死に瀕しながらも、なおも警句を発するコボルト。

しかしアランはそれには目も暮れず、奇声を発しながら勝利のガッツポーズをする。

「イィィィィィィィィィィィィィヤッハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼︎‼︎‼︎またも俺様の大大大勝利ィィィィィィィ‼︎‼︎‼︎ザマァみさらせこの犬っころがぁ‼︎‼︎‼︎‼︎」


 強敵を倒した余韻に浸るアランだったが、後に彼はコボルトの警句の意味を身をもって知ることとなる。

キモン・ダンジョンの奥に待ち受ける、魔獣をも超える脅威。

しかし、その警句の本当の意味を知り得たときには、既に手遅れなのだ。

この愚かな男は今、破滅への道を真っ直ぐに突き進んでいる。

しかし彼がそれを知る由もない。










 

 

 



 


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