幼女アリスの来訪
……コンコン……コンコン……
玄関ドアを軽くノックする音が聞こえる。
アリスさんが来たんだろうか?
居間にいたわたしは急いで身だしなみを整えると、慌てて玄関まで駆け出して行った。
「は〜い。どちら様ですか?」
わたしは玄関の鍵をガチャリて開け、半分ほど開いたドアから顔を覗かせる。
ドアの前に立っていたのは、黒いゴシックなドレスに身を包んだ金髪の幼女。
我らの戦友アリス・デザイアその人だった。
「アリスさん、いらっしゃい!どうぞ上がってください♪」
わたしはドアのチェーンを外し、彼女を居間へと迎え入れた。
「呼び鈴が壊れてるんじゃないか?何度押しても反応がなかったぞ?」
「このアパートぼろくて、わたしが越してきてからこうなんですよ。ところでアリスさん。」
「うん?なんじゃ?」
「その……背、縮みました?」
「……。」
わたしがそう尋ねると、アリスさんは頬を膨らませ、少し不機嫌そうな顔になった。
目の前でちょこんとテーブルに腰かける幼女は、間違いなくアリスさんだ。
だが以前あった時より明らかに背が縮んでいる。
初めて会ったときは12歳か14歳くらいの背格好だが、今目の前にいる彼女は、明らかに8歳前後にしか見えない幼女だ。
あの後別れてから二週間の間、いったい彼女になにがあったんだろうか?
「……この前の戦闘で、ちと魔力を使いすぎてしまってな、その反動でいまはこのありさまじゃ。」
アリスさんは足をぶらぶらとゆすりながら、ふくれっ面でそう答えた。
金髪幼女が拗ねてるみたいですごくかわいい!
いや、それよりもだ。
「アリスさん、お怪我の具合はいかがですか?」
わたしは今一番気になっていることを尋ねた。
あの時の彼女は、蜘蛛の足で腹を刺し貫かれ、とんでもない重傷を負ってしまった。
自分は魔族だから少し休めば大丈夫だ、なんて言ってたけど、やっぱりすごく心配なのだ。
「あぁ。怪我の具合か?それなら、ほれ!」
アリスさんはそういうと、ドレスの裾をまくってお腹の様子を見せてくれた。
真っ白い純白のパンツと、ぽっこりとしたイカ腹。
そしてあばらの浮いた白い脇腹があらわになる。
アリスさんのお腹には、うっすらと傷跡がのこっているが、怪我はほとんど完治しているようだった。
「ほへぇ~……。怪我、ほとんど治ってますね……。」
わたしはおもわずため息をついた。
アリスさんのお腹の美しさにではない。
いや、それもあるが、皮膚が破れ、内臓まで見えるほど酷い怪我だったのに、今ではうっすらと傷跡が残っているだけだ。
魔族は首を切り落とされない限り死なないというのは、どうやら本当のようだ。
「……あまりジロジロ見るでない!」
アリスさんは頬を赤らめながら、ドレスの裾を下した。
せっかくのきれいなお腹が隠れてしまう。
ちょとがっかり。
「それより、お主らの具合はどうじゃ?随分と疲弊しておったようじゃが?」
「あぁ、それなら大丈夫です。わたし生まれつき頑丈なんで。半月も休んでたら怪我なんてすっかり治っちゃいましたよ!……まぁ、正直まだちょっと痛みますけど。」
わたしはガッツポーズをとって満面の笑みで答えた。
「ふむ、では人形たちの具合はどうじゃ?蜘蛛との戦いで、かなりボロボロになっていたようじゃが。」
「えぇ、それも大丈夫です。ロボ丸、ステラ、レオナ!こっちにおいで!」
わたしが呼びかけると、三体の人形たちがすぐにはせ参じた。
「ご主人、何の用ロボ?まだ洗濯終わってないロボ。用があるんならさっさとするロボ!」
「マスター、何か御用?あ、アリスだ!こんにちはー!」
「にゃ~……。せっかくいい気分でお昼寝してたのに……。ご主人、何の用ですにゃ~?つまらないようじならぶっ飛ばすにゃ~。」
「よう、お主ら!見たところ、全員元気そうじゃな!」
アリスさんはにこやかに笑うと、ステラに向かって手を振った。
「アリス!ステラ元気!」
ステラはテーブルの上で、両手をぶんぶん振りながらぴょんぴょんとジャンプした。
すごくかわいい!
「魔導人形って、魔力を継続的に流し込めば大抵の傷は治っちゃうみたいなんです。まぁ、完全に治るには少し時間がかかりますけど。」
「ほぉ、それは興味深い!まさにドワーフの残した神秘の賜物じゃな。」
アリスさんは心底感心したようにうんうんと頷いた。
「でも、壊れてしまった装備はどうにもなりません。新しく作り直そうとも思ったんですけど、より深い階層に潜るなら、もっと強力な装備が必要かなって。」
あの日以来、わたしは人形たちのより強力な装備を作るために、色々と試行錯誤していた。
図書館で技術資料をかき集めたり、ジャンク屋で集めたパーツで様々な装備を試作したりした。
しかし、そうやってできた試作品は、どれも前回のものに毛が生えた程度の性能しかなく、期待したほどの成果を示すものは一つとしてなかったのだ。
あそこよりさらに下に進むためには、より強力な装備が必要だ。
何か手はないものか……。
「ふむ、もっと強力な武器か。それなら心当たりがある。」
「え、ほんとですか?!」
わたしは思わず身を乗り出してしまった。
「うむ、それなら明日、わしの館に来てくれんかの?お主にちょっと見せたいものがある。」
「見せたいもの?」
アリスさんはこっくり頷くと、訳知り顔でにやりと微笑んだのだった。
アリスは第二章の間、ずっと幼女のままです。(ここ重要)




