レオナ参上! 後編
蜘蛛の瞳が紅く輝く。
振り上げられた鉤爪が、光を浴び禍々しく光り輝く。
アリスさんの首元目掛け、鉤爪が振り下ろされる。
容赦なく、無慈悲に。
避けられぬ死が、彼女を襲う。
私はただそれを見ていることしかできない。
私は耐えられず、目を逸らしてしまう。
「アリスさん!」
叫びも虚しく、彼女の首が宙に舞う……ことはなかった!
なんと、蜘蛛が振り下ろした鉤爪は、彼女の首の一寸手前でピタリと静止しているではないか!
いったい何故⁈
「……ギギ……⁈」
蜘蛛が、困惑したような唸り声をあげる。
よく見ると、蜘蛛の瞳はアリスさんの方を向いていない。
地面のある一点を凝視しているのだ。
私は、蜘蛛の視線の先にあるものを見た。
それは、アリスさんが背負っていたリュックサックだった。
それは砂を被り、あちこちが破けてぼろぼろになっている。
おそらく、戦闘の最中に肩紐がちぎれ、放り出されてしまったのだろう。
さらによく見ると、そのリュックはモゾモゾと蠢いている。
蜘蛛の視線の先は、そのリュックに向けられているのだ。
「うにゃ〜〜お!」
突如、間の抜けた鳴き声が響き、リュックが内側から切り裂かれた。
ボロ布を弾き飛ばし、中にいたものが姿を表す。
青みのかった美しい銀髪、すらりとした美しい肢体。そして頭から生えたライオンの耳。
その姿は……レオナだ!
「レ……レオナ⁈」
私は面食らった。
何故彼女がここにいる?
確か彼女は、アリスさんの実験室で眠っているはずではないか?
まさか、アリスさんがこっそり連れて来ていたのだろうか?
しかし、アリスさんも唖然とした表情を浮かべている。
おそらくこの状況は、彼女にとっても予想外なのだろう。
「うにゃ〜〜……さっきからうるさくて眠れないのにゃ……。」
レオナはそう言うと、背筋を伸ばし、大きく伸びをする。
「ギ……ギギ.……‼︎」
レオナを見つめる蜘蛛の瞳に、明確な敵意が宿る。
蜘蛛はアリスさんに対する攻撃を取りやめ、レオナに向かって鉤爪を振り下ろした!
ザシュ‼︎‼︎
爪が地面に突き刺さり、リュックがボロ布となって宙を踊る。
しかし、そこには既にレオナの姿はない。
レオナは、蜘蛛に踏み潰される一瞬前に跳躍し、これを回避したのだ!
さらに、蜘蛛の脚を蹴って連続跳躍!
そのまま、蜘蛛の眼球を勢いよく蹴り飛ばした!
バギィィィィィィィィィィィィィィン‼︎
蜘蛛の眼球が砕け散る!
「ギ……ギギ……ギィィィィィ⁈‼︎」
蜘蛛が苦悶の悲鳴を上げ、後ろに仰け反り転倒する。
蜘蛛は眼科から黒煙を吹き出し、そうまま動かなくなった。
レオナは蜘蛛の死骸を蹴って、そのままクルクル回転して着地する。
そして、バレリーナめいてくるりと回転し、こちらに向かって優雅に一礼した。
「ご主人、アリス、久しぶりだにゃ〜〜!」
戦場に似つかわしくない能天気な声で、彼女は挨拶したのだった。
続く




