謎の建築物
私たちはアリスさんに先導され、密林をかき分けるように進んでいた。
「ねぇアリスさん、あの生き物たちについて何か教えてくれるんですよね?」
「うむ、そうじゃったな。では教えてしんぜよう。」
そう言うと、アリスさんは懐からメモ帳を取り出すと、あるページを開いて私たちに見せてくれた。
そこには、先程私たちが遭遇した大きなトンボのスケッチが描かれていた。
「これって、さっき私たちが見つけた新種のトンボ?アリスさんも見かけたんですか?」
「儂もさっき同じものを見かけたので、メモ帳に書いておいたんじゃ。それとドロシー殿、残念ながらあのトンボは新種ではないぞ。まぁ、世紀の大発見である事に違いはないがな。」
あのトンボは新種ではない?
でも世紀の大発見には違いない?
いったいどういう事だろう?
「ええと……どういう事ですか?アリスさん?」
「うむ、あのトンボの名はレムリアムカシトンボと言ってな、かつてこのレムリアの地に生息していた絶滅種じゃよ。」
「絶滅……?」
ほんの一瞬、思考が停止する。
今アリスさんは絶滅種と言わなかったか?
しかし、混乱する私に構わず、アリスさんは解説を続ける。
「あのトンボは数万年前に絶滅したはずのものじゃ。今では化石しか残っとらん。昔、辺境の採石場から化石が発見されたんじゃが、その化石からの復元図にあれはそっくりじゃった。」
「えっと、それってつまり、絶滅したはずの生き物がまだ生きてたってこと?それって大発見じゃないですか!じゃ、じゃあ、あの鳥も?」
「うむ、あの鳥はおそらくレムリアオオクチバシじゃな。かつてこの地に生息していた大型鳥類じゃ。あの大きなクチバシで昆虫を食べていたと考えられておる。」
なんという驚愕の事実!
なんと、あのトンボだけでなくあの鳥まで絶滅種だったとは……。
「それだけではないぞ。ドロシー殿、あれを見よ。」
アリスさんが樹上を指さす。
そこには、身体中を極彩色の羽毛で覆われた小さなトカゲがいた。
「アリスさん、あれは……?」
「あのトカゲは今の鳥類の祖先と考えられておる。もっとも、レムリアオオクチバシよりずっと大昔に滅んだ生き物じゃがな。」
「ほぇ〜〜……。」
私は感嘆し、ただ間の抜けた声を出すことしか出来なかった。
それから、私たちはアリスさんの先導の元、ジャングルの中をひたすらに歩いた。
道中、私たちは様々な絶滅動物たちと遭遇した。
まるで剣のように長い牙を持つ虎によく似た生き物。
毛むくじゃらの大きな像。
ブーメランのような形をした頭を持ったトカゲ。
その中の幾つかの生き物は私たちに襲い掛かってきたけど、アリスさんが幻惑魔法を使って追い払ってくれた。
それから一時間くらい歩いただろうか?
私たちの目の前に大きな門のようなものが見えてきた。
鬱蒼とした木々が邪魔してよく見えなかったが、近づくにつれてその建物の詳細が明らかになってきた。
それは、巨大な壁に取り付けられた、機械仕掛けの大きな門だった。
門はあちこちが錆びつき、ところどころ蔦が巻き付いていてとてもじゃないが動きそうにない。
壁はまるで城壁のように高く、内側に向けてゆったりとしたカーブを描いている。
「ドロシー殿、あれがそうじゃ。」
アリスさんは門の前で立ち止まり、感慨深い様子で城壁を見上げた。
「さて、面子も揃ったところだし、さっそく探索と行こうかの?」
アリスさんはこちらを振り返ると、ニヤリと笑った。




