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閑話休題⊷人形たちの日常⊷

あの実験の後、ドロシーたちは、一旦家へと帰された。

何でも、実験中に起こった異常現象を調査するために、しばらく時間がかかるのだということだ。

事の詳細が分かり次第、また連絡をよこすとのことだ。

レオナについてだが、しばらくデザイア邸で面倒を見るとのことだ。


実験の日の翌日、ドロシーの自室にて。

眩しい朝日が差し込むキッチンにて、ロボ丸は主人のために朝餉の準備をしていた。

着せ替え人形用のエプロンを身にまとい、手慣れた仕草で自身の数倍はあるフライパンを器用に操っている。

本日のメニューはベーコンエッグとトーストだ。


「よし、いい具合に焼けたロボ!」

ロボ丸はフライパンをのぞき込み、満足げに微笑んだ。

ロボ丸は、フライパンの中のベーコンエッグを近くに置いた皿に器用に移しかえた。

ちょうどいいタイミングで、チンッという音を立てて、トースターからキツネ色に焼けたパンが吐き出される。

ご機嫌な朝食の完成だ!


「ステラ!朝食が出来たからご主人を起こしてきてほしいロボ!」

ロボ丸は、居間にいるであろうステラに声を掛けた。

だが、返事がない。


「ステラ?聞こえてるロボ?返事するロボ!」

ロボ丸は居間に行き、ステラの様子を見に行った。

ステラは、何かの本を開き、それを読みふけっている真っ最中だった。


「ステラ、何してるロボ?」

「あ、ロボ丸!ステラ、今絵本読んでた!」

ステラは絵本から顔をあげて、ロボ丸のほうを見上げた。


「本を読むのは後にするロボ!今はご主人を起こしてくるロボ!」

「わかった!ステラ、マスターを起こしてくる!」

そう言うと、ステラは寝室で寝ているドロシーを起こしに行った。


一方、ドロシーは、作業机に突っ伏してすやすやと寝息を立てていた。

机の上には、作りかけと思しき何かの機械部品が散乱している。

卓上に広げられた設計図にはよだれが滴り、黒い染みをつくっていた。


「マスター、見つけた!」

ステラはドロシーへと駆け寄り、そのままぴょんとジャンプして、作業机の上に飛び乗った。

「マスター、起きて!」

ステラはドロシーの頬っぺたをつついて起こそうとした。


「う~ん……むにゃむにゃ……。もう食べられないよ……。」

しかし、ドロシーの眠りは深く、一向に起きる様子がない。

その後も、頬っぺたを叩いたり、耳元で叫んだりしたが、全くと言っていいほど効果はなかった。


ステラは思案した。

叩いてもダメ。叫んでもダメ。

いったいどうやったらマスターは目覚めるのだろう?


その時、ステラの脳裏にある考えがよぎった。

さっき読んでいた絵本では、王子様がお姫様にキスをし、魔法で眠らされていたお姫様を目覚めさせていた。

この手ならいけるかもしれない。


ステラはドロシーの顔の横にかがみこむと、そのまま唇にキスをした。

ドロシーの唇とステラの小さな唇がふれあい、そのまま静かに時が流れた。


「ステラ、ご主人、何してるロボ?」

ステラがあまりにも遅いので、二人の様子を見に来たロボ丸があきれた調子で声を掛けた。

「マスター、全然起きない……。」

ステラは落胆し、その場にしゃがみこんだ。


「しょうがないロボ。ロボが手本を見せてやるロボ!」

ロボ丸は作業机の引き出しから銅貨を一枚取り出すと、それを天高く放り投げた。

コインは弧を描いて飛来し、やがて重力に轢かれて机に落ち、チャリンチャリンと音を立てた。


「え?お金?どこどこ?」

ドロシーはガバッと起き上がると、硬貨の音のするほうを振り返った。

「ご主人、おはようロボ。もうとっくに朝ごはん出来てるロボ。さっさと食べろロボ。」

ロボ丸は呆れたような顔で、ドロシーを睨みつけた。


「それじゃあ、いただきまーす。」

ドロシーはテーブルに座ると手を合わせ、朝食を食べ始めた。

バターをたっぷり塗ったトーストをかじりながら、新聞の三面記事をぼんやり眺める。


「ご主人、昨日の夜は遅くまで何してたロボ?」

マグカップにコーヒーを淹れながら、ロボ丸は尋ねた。

「んー?あぁちょっとね、あんたらの装備を色々作ってたのよ。これからの探索に必要になるからね。」

「あんまり夜更かしすると体に毒ロボ。睡眠はちゃんととるロボ。」

「あんたはわたしのお母さんか!」


そんなやり取りをしていると、不意に電話のベルが鳴った。

「はぁー、まったく誰よ!こんな朝っぱらから!」

ドロシーはぶつぶつと文句を言いながら、居間にある電話の受話器を取った。


「はい、もそもし?どちらさんですか?」

ドロシーは不機嫌そうにまくしたてた。

「おぉ、ドロシー殿。儂じゃよ、アリス・デザイアじゃ。」

なんと、電話の主はアリスだった。


「アリスさん?どうしたんですか?こんな朝早く?」

「いやなに、昨日の異常現象について色々分かったことがあっての。それで、こうして連絡をよこしたわけじゃ。」

「あぁ、そういえば連絡くれるって言ってましたもんね。」

「少々長い話になる。それと、またお主に頼みたいことができた。どうじゃ?儂が行きつけの喫茶店で、少し話をせんか?」


(頼みたいこと?)

ドロシーは訝しがりながらも、アリスとのデートを快諾したのだった。


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