過去編3話、門番戦
おひさしぶりーふ。一気にやるよりちまちまやった方がまとまると思ったマン(´・ω・`)
多分技術下がってると思いますが、よろしければどうぞ宜しく
ハーピィ・クィーンの合図と同時に先に動いた金髪の女。矢筒から3本矢を取り出し、慣れた手つきで指に挟み、投げ放つ。
そしてエルフの装飾を施した双剣を抜き、投げた矢に続くように走った。
---それが、ハーピィ・クィーンが金髪の女に合図をし、その後アリィに合図をした時までの僅かな時間である。
矢先が眼前まで迫った時、アリィは合図と同時に瞬時に身を低くすると、矢は頭上を通り過ぎる。
通り過ぎた矢は、カカカンっと気持ちのいい音を立てて木に突き刺さった。
「呆気なかった、な!」
体勢を立て直そうとするアリィは押し倒される。仰向けに倒れたアリィに跨るようにして一振の剣を構える。
狙うは脳天。心臓とは違い、一瞬で即死させることが出来る部位だ。
『必ず殺してやる!』と視線と手元がそう強く訴える。気配が煙のようにじわじわと強くなっていく。
ーーーこれは模擬戦だ。降参か気絶。若しくは1本取った者の勝利。
だがアリィに跨り、剣を振り下ろす女はそんな事は知ったことかとばかりに殺しにかかっている。親の仇を取るかのような目でアリィを見ている。
ーーーこれ以上は不味い。今すぐに止めーーー
小学校低学年並みの身長のアリィに対し、男子高生並の身長を持つ女。大きな膝は小さな手を抑え、小さな足は大きな背中にすら届かない。小さな身体にいくら力があろうと、当てられなければ意味は無いのだ。
女は剣を振り下ろす。刃がアリィの脳天を貫こうと迫ってくる。
<ーーー!!!>
ガキィン!!
キリキリキリ……
「なっ……!?」
女は眼光をガン開きし、思わず声をあげる。
アリィに跨る状態でのトドメとも言える一撃を防がれたのだから。
しかも、目の前の少女は自分の身を守れるくらいの固いもの……それこそ盾や石など持ち合わせていないのだから。
更に言えば、膝から伝わる小さな手の感触は、とても柔らかかった。鍛えに鍛えた者は鋼のように硬くなる肉体を持つという話を聞いた事はあるが、それは無いと確信できる。
いくらヌシモンスターに育てられたからと言っても、相手は人間である以上、刃を防ぐことは出来ない筈。
だと言うのに、目の前の光景はなんだ?
冷や汗が1滴、額からたれていく。もし達人が相手だとしても、決してこの手段は取れないのだろう。
---アリィは刃を噛んでいた。迫り来る刃を喉が貫かれる前に歯でガッチリと防いでいたのだ。しかも、歯が当たっている箇所にはヒビとも呼べる亀裂が出来上がっていたのだから。
---有り得ない。ただの子供が。それも人間が。モンスターでもない存在が。その思考が思わず手を緩めてしまう。
その瞬間だった。
バキィィィン!!
「……噛み……砕い……た……?エルフの刃を……?」
粉々になった破片が音を立てて飛び散っていく。自慢の武器である剣が一振、ダメになったのだ。それも人間の子供の歯で。
頭が真っ白になり、抑えていた力も抜け、呆然とアリィを見つめている。
「ガッ!?」
アリィが踏まれていた手で足を押し上げ、バランスを崩す。前から急激な力が加えられ、姿勢を維持するのも困難になってしまう。
ここで、バランス崩しという遊びがあるのはご存知だろうか?その場から動かず自分の姿勢を維持して相手を動かすか、体勢を崩した方が勝ちという、バランス感覚がキーのゲームだ。
手と手を合わせて押したり、時には引いたり。時には相手は押すのか引くのかという駆け引き。バランスが崩れた体勢の立て直し。
相手のバランスを崩そうと思って思いっきり手で押したら空振り、そのまま前に転ぶ事もあるだろう。相手に押されて後ろに倒れまいと何とか踏ん張る事もあるだろう。
今、まさにアリィに股がっている女がその状態だ。バランスを崩さないようになんとかして踏ん張っている。さながら綱渡りの際に落下しないように何とかするように。
そして体勢を崩された力というものは、必然と弱体化する。単純に踏ん張れないからだ。
アリィが思いっきり押し出すと、ドミノのように倒れる。呆然と動きを止めてしまった故に、受け身も取れずに背中を叩きつけられる。
ーーー例え目の前の少女がハーピィ達に育てられたにしても、アレはおかしい。
ハーピィとは人間と鳥が合体したようなモンスターだ。俊敏な動きと歌による魔法による連携が主な戦法。それ故に近接戦闘はからっきしで、精々獲物を強靭な脚で鷲掴みにする程度だ。
<……>
自身が立ち上がった時はもう既にアリィは立っていた。
気配が一気に強くなったのを感じる。それと同時に、身体中から冷や汗が流れ出てくる。
相手は小さい少女だ。取るに足らない人間の子供だ。力の差は歴然だ。
なのに、背後から巨大な獣のオーラが見える。相手が自分よりも大きく見える。
熟練の狩人のような、捕食者の目だ。自分は今、狩られる。食べられる。そう錯覚してもおかしくは無かった。
ーーー構えろ。震えるな。思い出せ。目の前にいるのは……
<███████!!>
アリィが吼えた。思わず耳を塞いでしまうほどの咆哮。
それが聞こえなくなった瞬間、目の前には拳を握りしめるアリィがいた。
避けられないと判断した女はもう一振の剣を盾代わりにするが、その拳は容易く剣を砕き、身体をぶっ飛ばした。
「かハッ!?」
思いっきり木に背中を打ち付けられる。その衝撃で胃液が逆流し、思いっきり吐き出した。
いとも容易くエルフの刃を破壊し、自身をボールのようにぶっ飛ばすなどもはや外見詐欺もいい所ではないだろうか?
なんとか歯を食いしばり、直ぐに顔をあげる。
<……!>
再び拳が目の前に迫ってくる。ブォン!という音と共に繰り出された一撃を今度は避けることが出来たが、地面には子供の拳サイズの穴が出来上がっていた。
「こ……の……!いい気になるなッ!!」
距離をとり、矢を次々投げる。盾や遮蔽物に隠れるしか避けられない弾幕。
それもアリィには通用しなかった。なんと矢の集団に突っ込んでいくのだ。
4足で俊敏に動き、腕で弾いていく。横から力を加えられ、速さを失った矢は音を立てて地面に落ちていく。
「負けてたまるかァァァァァァァ!!」
瞬時に距離を詰めていくアリィに対し、虚勢を貼り叫んで拳を振りかぶった。
ドゴォォォォォォ!!
大岩が砕けたような音と砂煙が辺りに舞う。凄まじい衝撃が走ったのに痛みがない事に驚いた。
「2人とも。そこまでよ」
柔和な女エルフが2人の拳を受け止めていたのだから。
Q、なんでアリィは歯で刃を砕けたの?
A、初回から砂漠の修行で空に困ったから石を食ったのが始まり。
Q、なんでアリィの気配が強まったの?
A、模擬戦だったのに相手は仕留める気で居たので。「遊びやめた!狩る!」モード。