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フェリックス=ファーブラ〜獣と鎧の物語〜  作者: シュオウ
過去編、短編等
2/21

過去編2話、いざエルフの村へ

遅くなって申し訳ないです。その割に描写不足等が目立ちますが、何卒よろしくお願いします(´・ω・`)

ヴェルディン大森林の隅にある、ひっそりとした村。その中央にある、他の家よりも一際大きい木造の建物がある。

そこのテラスで長い耳をした薄紫色のロングヘアの女性が、優雅にティーカップの中にハーブティーを注いでいく。



「今日は、半年に1度のハーピィの女王との情報交換の日ですね」


カップいっぱいになったハーブティーを1口口に含む姿は気品のある貴族を彷彿とさせる程様になっている。誰が見ても優雅だと思えるような絵面だ。

お茶の風味や森の雰囲気を堪能した後、ゆっくりとカップを下ろす。

顔を横に向け、ふっと笑みを浮かべてここからでもハッキリと見える天にそびえ立つ大樹へと視線を向ける。

そこは、ハーピィの女王の住処である、天高く聳え立つ大樹。通称、『生命の大樹』と呼ばれるものだ。


もう、友人は出発したのだろうか。いつもの時間帯にはまだ早すぎるが、それでも早く来てくれないものかと思わずにはいられない。


他の種族との交流が極端に少ないエルフ。プライドが高い種族であるが、彼女にとってはハーピィ・クィーンの来訪は楽しみで楽しみで仕方がないものだ。

小鳥たちの囀りや川のせせらぎ、草花が風に揺れる心地よい音を聴きながらカップに手を伸ばす。







「ふふ……あの子と同じ境遇の子も連れてくるとも言っていましたね……全く……ハーピィも拾い物が好きなようです」


思わず嬉しさが込み上げてきてクスリと笑ってしまう。親友が尋ねてくるのを楽しみにしている心境と同じなのだろう。

この交流を楽しみにしている自分がいると共に、ハーピィが拾った人間についても興味が湧いてきたところだ。




また楽しみが出来たと件の少女。そして、背後から感じる視線を茶菓子に見立てて優雅にハーブティーを飲み進めた。


ハーブティーを飲み終え、カップをことりと置いた時、感じていた視線が消えた。


(あらあら……今日という日が楽しみだったのかしら?……なるほど。そういう事なのですね。ええ。ふふ……あの子も可愛いところあるじゃない。……さて、大樹を経緯して連絡しましょうか)


そう言ってエルフはハーブティーをもう一度カップに注ぎ、ミルクを少量入れていく。


「ふふ……ゆっくり……ゆっくりと……そしていつか……」


ーーーーー



3匹のボスモンスターとの挨拶を終え、森の中を飛ぶハーピィと、その脚に捕まっているアリィ。

程よいスピードで身体中に当たる風が涼しく心地よい。思わず眠ってしまいそうになるが、ウトウトしていると激しく揺らされるので何とか踏ん張っていく。もう落ちたくは無いのだ。


ーーーハーピィ・クィーンから感じてくる気配が変わった。今までは親というか、なんというか……慈しみの雰囲気だったが、突如として狩人のような雰囲気に変わった。



<ここからは歩いていくわよ>


睨みつけるような鋭い眼光に一瞬ビクッとなるが、それを振り払うが如く首を横に振た後、こくりと頷いた。

表情からは分かりにくいが、長い付き合いであるハーピィ・クィーンにはキリッとした表情だと分かる。

思いつきや行き当たりばったりとは違う、至って真剣な表情で見据えられれば、何かあるんだろう。それに、自分が狩られるような気配を感じてしまえばいくら相手が母親とはいえ思わず息を飲み込んでしまう。


ゆっくりと降下し、安全に地面に着いた。そこからはアリィもハーピィ・クィーンも歩いていく。

見渡す限りの木。木。木。開けた草地では無く、見通しの悪い森の中で歩いていく。


---見慣れたものだ。いつも4人の親と過ごしている大森林とほぼ同じ。視界の悪さ以外、そこまで変わったことは無い。


が、やはり初見の地を歩くという行為はどこか不安が芽生えてくるものだ。どの生物も、住み慣れた環境から離れたところで過ごすとなるとストレスが溜まるのは共通しているのだから。


<大丈夫よ。歩くって言ったって、もうすぐなんだから>


ふわふわした羽でアリィの頭を撫でる。我が子を慈しむような母親のような表情で。声で、雰囲気でこれをされてしまえば、思わず頬が緩んでしまう。


<さ、行きましょう>




地理を知っている者とはぐれてしまえば、森の住人でも迷子になってしまうほどの深い森の中を歩いていく。


その森にも、当然野生のモンスターは存在している。ハーピィの女王と人間の少女をじっと見つめているモンスター達である。


警戒しているのか、怖気付いているのか。はたまたこうきしんゆえか。どちらにせよ、姿を見せたり攻撃の素振りをしない為放っているが、視線に慣れないアリィは少しムッとした表情をしている。


森を歩き、足場の悪い地を歩き、狭い丸太の橋を渡る。空がテリトリーで、歩く事はやや苦手なハズのハーピィ。その女王は息一つ乱れること無く悠々と進んでいるが、後ろからついている少女は汗を流し、息を大きく吐いている。


いつもならばこの位では息は乱れないのだが、見たこともない初めての場所だからなのだろうか。疲労が目に見えているようだ。


ハーピィ・クィーンは<大丈夫?>とアリィの肩を叩き、アリィは<大丈夫>と返す。

しかし、ハーピィ・クィーンはそれが強がりであると理解している。わが子同然に可愛がりっている愛娘であり、同時にまだまだ未熟な弟子であるから。


だから可愛い。だからこそ思わず頬が緩んでしまう。


目的地はもうすぐだと励まして翼を伸ばし、アリィの頭を撫でた後、手を掴んで引き上げる。


<ほら、見えたわよ>


ハーピィ・クィーンが翼を指し、その方向へアリィはゆっくりと顔を上げる。


<……>


初めて見る光景だ。木でできた高い立方体と三角形の突起物にしか見えない物。丸太を刺してくっつき合わせたようなやつも、大きく曲線を描いている入口にある物も、その近くに突き刺さっている模様が描かれている木の板も。


今視界に入るもの全てが初めて見る物で、森でいつものように過ごしている中でただの1度も見たことが無い。


ーーーこれが、『村』というものなのだろうか。人間やその形に近い亜人種はこの様な地に住んでいる者が多いと学んだが、聞いただけなのと実際に目にするのとでは全然違った。その様子を見て思わず笑みを零してしまうハーピィ・クィーン。


その中にいるものも見た事がなかった。

自分やハーピィ・クィーンのような人型の動物で、耳が長くとんがっている生き物だ。恐らく、この生き物がお母さんの言っていたエルフという生き物だろうと予想する。


初めて見るものに興奮を抑えきれず、疲れも忘れて一目散に駆けていくアリィと、それを見てほっこりとするハーピィ・クィーン。


<!?>


ヒュッ!と軽い音が聞こえたと同時に、アリィの目の前に鋭い物が突き刺さった。


「ふん。なるほど……ただの獣では無いようだ」


声のした方へ顔を向けた。

視線の先にいる木の上で足を組んでいた女性はピクリと眉を上げ、ニヤリと笑った後にくるくると回転しながら華麗に着地した。

そして振り向き、ファッションモデルがパリコレで歩くが如く、ゆっくりと獲物を握……







「……無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きが好きなのね相変わらず」


「……黙っていてくれないか?」


ハーピィ・クィーンにため息まじりに言われ、雰囲気を一気に台無しにされた女性はジト目でハーピィ・クィーンに視線を送った。

今の自分はエルフの村の門番である。門番とは、侵入者を侵入させずに撃退する役目である。エルフの外敵から村を守る為の守護者である。


なのに、幾らこの村の常連であるハーピィ・クィーンにそんなことを言われなければならないのか?

彼女が連れている者は人間だ。充分、門番の仕事を果たす案件として成立している。


「アリィは人間だけど大丈夫よ。村や住人には危害を加えないし、私が加えさせない」


「信じられるか!人間は我が物顔で森を蹂躙し、森の守護者を焼き払う異常者の集まりではないか!」


ハーピィ・クィーンの言葉に怒りを隠しきれずに大声で怒鳴る。獲物を握りしめる手は震え、握っている力だけで折ってしまいそうな程に力強い。


<……………………????>



それに対して訳が分からずポカーンとしているアリィは完全に置いてけぼりを食らっている。木の上から爽快と現れたのはわけも分からぬ女だ。1歩手前ほどの見た目の金髪の女だ。しかも、自身と付き合いの長い母親であるハーピィ・クィーンと口喧嘩する程の仲。


つまりは、全くの赤の他人が自身の親であるシュハーガトゥ、オアンティアーラ、ジルニモスと同レベルの関係ということ。


生命の大樹に住んでいるハーピィでも無い。自分が知らない、ましてやお母さん達くらい威厳がある訳でも無い。




ーーー気に入らない。お母さんは私のだもん!と言いたげな睨みを聞かせるが、当の本人はハーピィ・クィーンに全ての意識を向けていて、言葉は段々激しさを増していく。

女がああ言えばハーピィ・クィーンが言い負かす。それが何度も続いていく。


「だいたい貴様はなんなんだ?今にして思えば、初対面から馴れ馴れしい。私はお前も認めたつもりは無い」


「お生憎さまね。私は長から出入り自由を認められている古くからの付き合いよ。貴女のような若輩にとやかく言われる筋合いはないわ。ましてや、あなたの言うあの子の同類にはね」


「ぐぬぬ……」


女がああ言えばハーピィ・クィーンがこう言う。たった数回の口数だが、勝てないと思ったのか、これ以上は無駄だと思ったのか。女はハーピィの女王から人間の少女へと照準を変えた。


「貴様をこの村へ通す訳にはいかん。この森は人間禁制の神聖な土地だ!目障りだ即刻立ち去れ!」


<……?>


今度はアリィに矛先が向いた。さっきまでハーピィ・クィーンと口論をしていたのに。しかもご丁寧に指まで指して。

なんで私だけ?と思っていたアリィだが、ハーピィ・クィーンは一瞬考え込むような仕草をして……


「じゃあ貴女。この子と1体1で戦いなさい」


「……はぁ!?そんなこと認められるか!人間を通すなどと……」


「その人間の子供を実力で通せないほど弱い門番なら門番やめたらいいじゃない。私も、このめんどくさいやり取りしないで済むし万々歳よ」


「……いいだろう……」


<アリィ。貴女が戦ってこの女に勝てば通してくれるそうよ>


<……?>


思わず首をこてんと傾げるアリィ。何やら話がどんどん進んでいる気はするが、戦えと言っている為に構えを取る。



「始めなさい!」


<始めなさい!>


先に女が動き、その後にハーピィ・クィーンの言葉に続くようにアリィも動いた。



アリィの初見村の描写は家、柵、門、看板のつもりです。(´・ω・`)

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