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変わりゆく世界  作者: アイネコ
変革の時
3/3

おっさん、解雇される



 最近、俺の仕事は忙しくなった。

 だが、それは今だけの事と割り切ってはいる。

 なぜなら、あと数日の後に、俺の退社が決まっていたからだ。


 今から三カ月前の月末に、突然届いた解雇通知に、俺はやはり来たかと諦めた。

 理由はもちろん承知しているし、現状うてる手立てがないとも思う。


 今も起こっている例の事件が原因である以上、会社としても身を切る思いで、社員を減らさざるを得ないからであった。


 その事件とは何か?


 それは、とある異常な事態と密接にあり、謎の死亡事件が起きているからである。


 約半年ほど前の新聞紙面に、ある特定保養施設で複数の死亡事故が起きました。

 そして、その後も同様の死亡事故が連続して起きてしまいます。


 死亡事故から事件へと変わった、この件の捜査は難航しました。

 ですが、その捜査もある報告と共に、別の事件へと変わります。


 日本から遠く離れた複数の国でも、同様の事件が起きているとの報せが、世界中を駆け巡ります。


 その後、世界的な組織や調査機関が様々な角度で、この事件を調べましたが、そのすべてが不明であると、報告されてしまいます。


 事件、事故、人為的であるのかないのか、また未知のウイルスではないかと議論も尽されましたが、未だに原因がなんなのかも解りません。


 そして、この奇妙な事件は『突発性不自然死』という名で、世界中の人々に広まっていきました。


『突発性不自然死』という、全世界で巻き起こっている、異常現象。


 それが今では、日本では高齢者を中心に流行りだして、全国の介護施設で起こってしまい、今に至っては自宅療養者にまで拡がっています。


 この事態を重くみた日本政府も対応に動き出すも、原因不明の不審死が起きているのが、特定の世代だけに留まらず、若い世代の間にも起きてしまい、さらに問題となっています。



 ―― ―― ――



『突発性不自然死』


 とくに前触れもなく起こる、不自然な死。 怪我や病気、老若男女に関わらず、突然訪れる不可解な死亡事故。


 警察や大学病院などが、最大限の努力と科学的調査を繰り返したが、最終的な死因は心肺停止の心筋梗塞という結果に至ります。


 なかでも、とくに高齢者に多く起きて、体調の良し悪しに関係もなく、死が訪れます。

 その多くは、どういう訳か、安らかな寝顔のままで発見された事に、周囲の関係者だけでなく、親族たちからもその事に言及する人はあまり居ませんでした。


 ですが、ごく少数の人の中では、この不慮の死を受け入れ難い人たちも居ます。


 突然訪れた死によって、なにかに怯え、追い詰められた表情で息絶えた人も、少数ながら存在しました。

 そんな死を迎えてしまった人達には、ある共通点がありました。


 その死に顔は、なにか恐ろしいものを見たような歪んだ表情をしており、中には泣きながらに怯え、懺悔しているかのような姿で、発見される事例もありました。


 もう一つは、『有名人』であった事。 しかも、良くも悪くも目立ち、過去に何かしらの事で、世間で話題となった人物ばかりでした。


 ある人は惜しまれ、ある人は当然の報いではないかと噂され、世論が割れました。


 なにが起きているのか分からない恐怖と、確実になにかによって齎されたであろう死は、世界中の人々に、言い知れない不安と恐怖を与えました。



 ―― ―― ――



 俺の最後の仕事となる、引き継ぎも終わって、会社の同僚たちとささやかな送別会で一杯(本当に一杯)引っ掛けての帰宅だ。


「ふう…… 本当に、来週から無職になんのかぁ……」


 帰宅しても誰もいない、明かりさえついていなかった部屋に入り、照明器具のリモコンを手に取り、スイッチを押しながらドカリとベッドの端へと腰を落とし、ネクタイを緩めつつ明るくなる部屋を眺めた。


「もう十年、ここに住んでるんかあ」


 一部屋、六畳しかないワンルームのアパートではあるが、寝に帰るだけの住処と考えれば、十二分に足りる。


 入居のきっかけとなった馬鹿共の借金騒動で、殆どの財産は消えたが、これはこれで住み慣れた我が家となったな。


 両親の介護も何とか出来たし、あいつ等の自立にも関われたし、思い残すものもないか。


「うん。 田舎にでも引っ越すか? いや、歳を取りすぎたし無理だな。 ははは……」


 でもまあ、今の日本じゃどこに行っても同じかも知れんな。


「ああ! もう十歳、若ければなあ……」


 俺は、誰も聞いてない愚痴を垂れ流し、背中からベッドへと倒れた。


『ぐぅ〜』と、腹がなった。


「仕方ない、飯にでもすっか〜」


 俺はジャケットを脱いでハンガーにかけて、それをクローゼットに仕舞い、洗面所に向かった。 洗面台の前にたって蛇口を捻り、手にハンドソープを出した時に、俺は異変に気付いた。


「えっ!? ちょっ!! ええっー!!」


 ひねった蛇口から水はバシャバシャと流れ続け、俺は鏡に映る自身の顔を見て、驚き戸惑ってしまった。


 ペタペタと自身の顔を触り、鏡に映る自身と比べるも、どう見ても今までの自身の顔ではない。

 なんど見ても、触ってみたものの、そこにあるのは若返った自身の顔であった。


 鏡に映る、若返った自身の顔を何度も触り確かめても、ハンドソープのついた手と顔の泡の跡が、それを事実と認識させた。


 そして、鏡に映る変わり果てた自身の顔を見て、そのままストンと尻もちをついた。


「おれ、どうすんだこれ? この顔でなにが出来る?」


 若返りはしたとて、五十代のおっさんが、この顔でなにが出来るのかを考えたが、絶望しかなかった。


(どうすんだ? こんな顔じゃ誰にも相談出来ないぞ、これ。 知合いどころか、もう子供たちにも会えないかも知れん……)


「『ぐぅ〜』ははは……」


 洗面所の床で膝を抱え込み、腹の虫がなる中、俺は力なく笑った。





ちょっと若返りたいと思ったら、かなり若返ったおっさんの未来はどっちだ?

思い付いたが為、急遽書いてしまいました。

次回は未定ですが、書けたら投稿をしますので、気長にお待ち下さい。



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