五時限目 『 フレッシュゴーレム 』
フレッシュゴーレム
■種別:アンデッド(メイモント王国の改造強化されたゾンビ)
■主な出現地域:メイモント王国
■出現数と頻度:単独〜数体、ふつう
■サイズ:人間大〜オーガクラス
■危険度:タイプによる
■知能:低い
■人間への反応:命令次第
■登場エピソード: 蜘蛛の意吐 第二部(二の二十一)
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ビシャーン!
K; O 言O)ゞ :⚡︎⚡︎:・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄  ̄
「ズバリ! フランケンシュタインの怪物! ツギハギの肉巨人だ」
_______ なにその演出 (⌒ ⌒ ; P
「メイモント王国のアンデッドの軍勢に ── いたっけ??」
K; O 誉O)/:ズバリ!____
「いるにはいた!」
「でも、『灰塵の滅光』に消し飛ばされてお終い。活躍しなかった」
………
「今後に期待だ!」
______ ホラー演出? (⌒ ⌒ ; P
「解説終わり? … 無駄なとこにチカラが入ってるね」
K;  ̄ 0 ̄)コロっ___
「整理しとこう」
「《ゴーレム》が指すものは、そもそも秘術を施された泥土の巨像 … アンデッドじゃない」
「和製異世界ファンタジーだと、ゴーレムは魔法ロボットだ ── 石や鉄、さらには超合金もとい魔法金属で出来ているものがほとんど。
単体のデカいゴーレムは、さしずめスーパーロボット。てきとーなデザインでわらわら出てくる人間なみのサイズやつは量産型…… ザコ戦闘員。
木製とかで、ゴブリンなみに弱い」
______ざっくり来たな (⌒ ⌒ ; P
「まぁ、イメージはそんなとこかな」
「Kは、はじめにフランケンシュタインといったね」
K;  ̄ △ ̄)____
「フランケンシュタインの怪物、な」
「フランケンシュタイン、て名前じゃない。正確にはアレは『フランケンシュタイン博士に改造されて命を吹き込まれた人間の死体』なんだけど」
「『蜘蛛の意吐』のフレッシュゴーレムは死霊術の産物だけど、フランケンシュタインの怪物に近い。骨格や筋肉量なんかをいじった改造体を、死霊術で動かしている」
________ ツギハギ (⌒ ⌒; P
「改造組立して起動…… 魔法ロボット的なゴーレムと似ていると言いたい?」
K;  ̄ _ ̄)ぅぅ__
「正直なところ。蜘蛛意吐の『フレッシュゴーレム』に関しては、はじめて読んだとき、アンデッドの軍勢にゴーレム?と思った」
「今は……最終的に死霊術を使うから『ゴーレム』はおかしい、と感じるのは。実はおかしいのでは?と思う。
ゴーレムは、そもそも泥の巨人だ。
泥以外の素材にしたり、額の文字の要素を無くしたり、虫や獣のすがたにしたり。異世界ファンタジー作品は、ゴーレムを徹底的に跡形なく改変しているけど、それでもゴーレムと呼び続けている」
「それは『アリ』で、アンデッド化で起動した改造死体をゴーレムと呼ぶのは『ナシ(間違い)』と言うなら、そりゃあダブルスタンダードだ」
_____むむむム (⌒ ⌒ ; P
「異論はたくさんありそうだ」
「でも、肝心の蜘蛛意吐風・屍肉ゴーレムの出番が不遇だからなぁ」
K;  ̄ O ̄)___
「今後に期待だ!」
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■身体的特性とパワー
フレッシュゴーレムは、死霊術師が人間の死体をツギハギしたりして、性能を強化したアンデッドです。
呪詛(負の生命エネルギー)を宿すことで動き出しますが、人の手で改造した死体をアンデッド化しているので、ただのゾンビと違って自然発生しません。
改造死体は、オーガのような怪力の巨漢にしたり素早さに特化したり、いろいろな実験をするのでバリエーションはさまざまです。
メイモント王国は、下位アンデッドの軍勢を国防の主力にすえた特異な辺境国家で、死霊術の最新研究を国が押し進めています。
《超人》や《巨人》のフレッシュゴーレムの開発にも取り組んでいましたが、今のところ上級術師の職人芸的な少数生産に止まります。
『蜘蛛の意吐』第二部で侵攻して来たメイモント軍の場合、十数体のフレッシュゴーレムが所属していました。
一騎当千を目指す超人や巨人タイプではなく、俊足の斥候タイプ、感覚強化タイプです。不案内な土地で先行させたことから目につき、スピルードル王国の首脳陣にフレッシュゴーレムの存在が報告されました。
しかし、わずかな数のフレッシュゴーレムは、数万の大軍同士の野戦が始まるとメイモントの本陣へ下げられ、アルケニーのゼラがメイモントの軍勢を叩きはじめたときも、ゾンビやスケルトンの数で押しつつんだり、攻撃魔術の一斉射撃で対抗したので、フレッシュゴーレムの出番はありませんでした。
開戦後に一度だけ、アルケニーが一時的に動きを止めたときに、斥候タイプ一体が本陣から直接、情報収集に送り出されましたが、相手の姿を確認することなく混乱の中で失われました。
▷戦後の動向
メイモント王国は敗戦後、戦力の回復、具体的にはアンデッドの軍勢の員数の補充を急いだことから、フレッシュゴーレムの制作に強健な遺体がまわされにくくなりました。
さらに、魔獣のゾンビやスケルトンが、今後の新タイプのアンデッドの開発の中心になることが決まり、フレッシュゴーレムの研究活動は次々打ち切り、乃至、凍結縮小になっています。
現在、関係者は難しい状況におかれています。
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□付記・・『リベアランク』
リベアランクはメイモント王国の軍関係の用語で、手足などの折損や欠損を修繕された『再利用』のゾンビやスケルトンを指します。
正統的な死霊術の言葉ではなく、メイモント王国の一部でしか通用しません。
アンデッドの損傷の理由は、戦闘や事故、避けがたい経年劣化などで、問題の部位や悪化の程度、機材の質、技術レベルによって、直された後の姿形、力の回復程度はさまざまです。
最近まで、折れた手足を荒っぽくのばして当て木したり、ハンマーやフックを義手にする方法が当たり前でした。
しかし、ある時期から、きわめて優秀な技術者たちが参加したことですぐれた補装具や精巧な義肢、骨や肉の溶着技術、豚革の擬似人皮が使われるようになりました。
現在、アンデッドの外観や運動機能の回復は格段に向上しています。
ただし、過去に大きなダメージを受けた個体は二軍以下の戦力の扱いで、倉庫の荷役や重要度の低い施設の歩哨、巡回部隊の数合わせにされます。
どうしても損傷箇所は強度が低下しますが、下位アンデッドはフォローする動作をおぼえないためです。
メイモントの最北の通称「死霊砦」は、城塞の全周の壁に上半身だけのゾンビの投石兵が銃座のように三重に組み込まれて異様な空気を漂わせています。
そのような「非人間化」は例外的で、メイモント王国のアンデッド軍は国民の献体で成り立つため、バラバラの部品のような再利用は好まれません。
アンデッドの義肢や補修補強技術は、フレッシュゴーレム製作のそれと大きく異なります。
しかし戦後、死霊術師ではないリベアランクの補修技術者が、フレッシュゴーレムの新型開発に参加する動きがみられます。
素材不足を背景に大型のフレッシュゴーレムを女子供や怪我人の遺体を組み合わせて作るプランが浮上し、リベアランクの関連技巧が注目されたのです。
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関連事項
△ スケルトン
△メイモント王国のアンデッドの軍勢
◎「暴走読者」のタイトル回収
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フレッシュゴーレムは実は、本シリーズに未登場です。事実上は。
どういう事かというと──
■(主人公カダールが)目を逸らす直前に見えたのは、ゼラの手から生まれた極大の光の柱が、横向きに一直線に戦場を貫いたこと。その光の柱の中で、ゾンビが、スケルトンが、フレッシュゴーレムが、その形を失いボロリと崩れるところ。
(本編 第二章/二の二十一)
── これでお終い。
ゾンビたちと混ぜこぜで瞬殺されるワンカットが登場シーン。
フレッシュゴーレムの、姿かたちの具体的描写ナシです(ナニしてた⁉︎︎)。
本稿は、読者が、あとは一人で勝手に役割設定を足したり、ふくらませたり、組み合わせたりした暴走の産物です。
作者(NOMAR様)に原稿を見てもらい、あらためて内容を深めたり、聞き出した部分はありますがーー
スタートダッシュは勝手気まま。
この先、このフレッシュゴーレムと似た、あるいはただの一度も、本当に登場シーンがなかったモンスターが『増量・改造されて(設定を)』登場します。