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四時限目『 フロストゾンビ 』

    挿絵(By みてみん)

フロストゾンビ


 ■種別:メイモント王国の自然発生のゾンビ

(冷気をおびたゾンビの変種)


 ■主な出現地域:メイモント王国の一部の山岳地


 ■出現数と頻度:十数体〜、まれ

(限定地域以外;発生しない)


 ■サイズ:人間大


 ■危険度:小〜中


 ■知能:なきに等しい


 ■人間への反応:攻撃


 ■登場エピソード:なし


■身体的特性とパワー

 フロストゾンビは霜まみれの凍った屍です。

 メイモント王国の一部の山岳地からわき、山野を小集団で彷徨いながら出会った人間を襲います。


 冷気をおびた顔は不自然な顔色で、虚ろな目、霜のはりついたかたい肌です。一様に白い貫頭衣をきています。

 石のように凍った手足は、キシキシ、動かすたびに微かな音をたて、噛みつこうと口を開けてもきしみます。

 かたい肉は鎧を着込んだように武器攻撃に抗し、普通の威力の矢はほとんど通用しません。


 戦闘では木材や石を怪力で振りまわします。素手でも、凍った拳は金属の棍棒の威力です。からだをつかまれると、素肌に凍傷を負わされます。


 フロストゾンビの遭遇時の危険性は、力や硬さではなく、氷雪の上を歩く能力です。

 どのような力が働いているのか、なぜ足をとられないのか不明ですが、人間が自由に動けない場所も踏破します。豪雪地での遭遇戦は人間に不利で、アンデッド討伐のベテランチームが悪天候下の雪道で全滅した事例もあります。

 


♢ ♢ ♢ ♢



□ ルブセィラ先生のコメント

「フロストゾンビは彷徨う冷凍屍体。メイモント王国という寒冷な辺境国家に固有の、いわば『ご当地』アンデッドです」


「厄介な特徴をもっていますが、あくまでも下位のゾンビです。数は少なく、あらわれるのは山奥なので被害は限られています」


「メイモント王国の人々の脅威となる魔獣は多くいます。

王国固有と言ってと、フロストゾンビにとくに関心を寄せる学者もいませんし、現地のハンターの評価は、自然発生する奇種、素材にならない難物(無価物)ということです」


「そう『自然発生』なんです・・・」


「フロストゾンビは危険度とはべつに、おかしな点があります」


「大陸にはいくつも雪山や氷雪の森がありますが、フロストゾンビが発生するのはメイモントの山中だけです……なぜ限られるのか?」


「また、死霊術はフロストゾンビをつくり出せません。凍りついた屍に無理やり術をかけても呪詛は宿らず、なにか特別な生成条件が要るようです」


「深い雪の上をどうして平然と歩けるのかも謎です。もっと上位のアンデッドなら兎も角、下位のゾンビなのです。ゾンビが単独で魔法に似た力を常時発動・・・ほかに聞いたことがありません。

 からだの冷気の発生源も不明です。


 そのくせ、浄化術への抵抗力は腐乱死体のゾンビより多少勝る程度…… ちぐはぐですね」


「謎といえば。

 メイモント王国はアンデッドの軍勢をつくった関係で、国民の遺体回収や墓地の管理が徹底されています。

 ところが、おかしなことにフロストゾンビは山奥から出現し続けています。少数ですが、スピルードル王国まで南下して来るゾンビも途絶えません」


「これまで看過されていたことですが、フロストゾンビが着ている白い貫頭衣は、変わった縫製の見慣れない素材です。また、からだに怪我や病気のあとはみられません。かれらはそもそも、なぜ死んだのか?


 ‘凍死’と考えられてきましたが証明されていません。なぜかわかりませんが安楽死、集団自殺という噂が立ったことがありました」


「そして、フロストゾンビたちがあらわれるメイモントの山岳地の一角は、祖霊崇拝の禁足地になっているようです。

禁令がしかれたのは何百年も前ですが、メイモントの祖霊崇拝の歴史からすると新しい禁足地です。何故、そうしたのか」


「フロストゾンビは、生前、何者だったのでしょう。

 いつの時代、なぜ命を落としたのか。そして、『氷づけのアンデッド』はどこでどのように発生して、禁足地の山には何があるのでしょう…… 」


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