二四時限目『 四つ腕オーガ (多腕鬼)』【 バルーンアート写真付き】
四つ腕オーガ(多腕鬼)
■種別:肉食の亜人型魔獣(人食い巨人の魔獣)
■主な出現地域:魔獣深森の深部
■出現数と頻度:1〜数10頭? / ごくまれ
(部族単位で出会うことはまず無い)
■サイズ:身長 三メートル超
■危険度:中〜上
■知能:人間なみ?
■人間への反応:敵対
■登場エピソード: 蜘蛛の意吐・第三部三の二十三(https://ncode.syosetu.com/n4757eu/58/)
■身体的特性とパワー
四つ腕オーガは、一つ眼の獰猛な巨人でこめかみに二本の角があります。
人食い鬼のオーガの亜種といわれますが、身長は三メートルを超えてふたまわりは大きく、赤い巨躯に太い四本の腕が生えています。
戦闘では、剛力の四本腕で武器をふるいます。
力まかせの投石攻撃や、長く重い丸太を荒々しく振り回して戦うこともあれば、それぞれの腕に大斧や長槍、棍棒、蛮刀を一本づつ持って、巧みに操ることも出来ます。
見かけによらず弓矢も巧みで(かれらの力と体格に合う逸品があれば)、四つ腕で異様な矢継ぎ早── 大威力の速射をみせるといいます。
さらに、岩のような拳は大槌の威力です。
四つ腕のかれら独自の武術もあり、猛者は自分よりも大きな熊の魔獣を素手で打ち、投げ、四肢の関節をことごとく砕いて殺せるそうです。
四つ腕オーガは、魔獣深森の奥地にいてすがたを滅多に見せません。魔獣狩りのハンターでさえ、多くの者は四つ腕オーガのことは伝聞でしか知りません。
また、これまでの遭遇事例では、ほとんどの四つ腕オーガは単独で、多くても十数頭の小集団でした。
噂によると、野獣同然のオーガの群れと異なり、四つ腕オーガたちは魔獣深森の奥地で部族社会を築き、固有の狩猟文化をもちます。戦士長や族長クラスの闘士は、上位魔獣の素材でつくられた最上級の武器や鎧を代々継承し、単独で亜竜を倒せる怪物だということです。
異説もあります。
それによると四つ腕オーガは、オーガの亜種や上位種ではなく、長く生きたオーガから新たな腕が生えた変異個体(群)です。
苛烈な闘争を続けると、長い年月を経て、六つ腕や八つ腕オーガに強大化するとのことですが、今のところ、そのような多腕オーガは見つかっておらず、異説の内容の真偽は不明です。
▷蜘蛛意吐本編の、四つ腕オーガ(ネタバレ有ります)
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闇の母神の秘密教団の下僕として、スピルードル王国領内の地下本部に登場しました。
人間の邪神官の特殊なアイテム(『ボサスランの瞳』)で自由意志を奪われ、素手で手練れの騎士と戦わされましたが、最後は突然『瞳』が破壊されたことで心身に異常を来し、もがき苦しむ中、とどめを刺されました。
騎士の武勇も尋常では無く、四つ腕オーガから甲冑が変形するほどの拳打を受けながら戦い抜き、両者の激闘は、のちに英雄譚の一節として、子供向けの絵本や舞台劇を通じて多くの人々に知られました。
→ 蜘蛛の意吐 欄外スピンアウト『赤い槍に降る白い花』
https://ncode.syosetu.com/n4627ff/55/
▷スピルードル王国の古い伝承の四つ腕オーガ
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建国期のスピルードル王国は、突然、四つ腕オーガの戦士集団に侵入されています(『13の悪鬼)』の伝承)。
かれらは何か特別な理由で人類領域に押し入ったとみられ、全員、未知の魔獣素材の鎧や盾で身をかためて、さまざまな強力な武器(大きな骨槍や戦斧、金属質の木の棍棒、魔獣の爪や歯のノコギリ刃の木剣。さらには四本腕で射放つ大弓など)を所持していました。
独特の、対魔獣の素手戦技もみせたといいます。
謎の四つ腕オーガたちは当時の英雄に討伐され、生き残りが魔獣深森へ撃退されました(*:討伐数は諸説あります)。
四つ腕オーガから得た戦利品は、スピルードル王家の宝物庫におさめられましたが、武器化された上位魔獣の素材は由来や加工法がわからないものがあり、長い歳月を経て、今日も数点が魔力をたもっています。
▷東の国の、四つ腕オーガ
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四つ腕オーガは、東の国では『アシュラ』と呼ばれて怖れられています。
東の国では、人食いのオーガが『オニ』と呼ばれ各地で人里や街道を脅かしています。オニ討伐が徹底しない原因は、多くの場合、人間同士の紛争(おもに領土問題)にあり、オニの逃散をゆるし、山間部や島嶼で勢いを取り戻す事態を繰り返しています。
一方、四つ腕オーガ(アシュラ)に対する東の国の人々の恐怖と警戒心は、病的に深刻です。
大陸の東方では歴史上、『アシュラの大乱』または『四腕の大禍』と呼ばれた時代があり、最大の被害を受けた東の国は、アシュラの大集団に王朝が滅ぼされました。
東の国の人々は、山奥や北辺などで生きながらえましたが、今日でも、苛烈な時代の記憶はあらゆる地域、あらゆる身分の人々にさまざまな形で伝承されています。*
アシュラはあらゆる人間の怨敵、恐怖の的で、ごくまれに現れると(たとえ単独でも)広い地域に大混乱を引き起こします。恐慌状態の住民の離散、町や村の放棄、指揮統率の崩壊。足止めのための凄惨な人海戦術。
そして、暴徒のような大軍が集まり、名のある剣士や魔術師たちまでもが狂ったようにアシュラへ挑む血戦が起きます。
ある旅行者(他国人)は、故郷への書簡で──
《 “アシュラへの怖れ” 。東の国の人々の血と心には、呪いが刻みつけられている 》
── と述べました。
《 かれら(東の国の人々)は、一部はアシュラをみると逃げ……つぎに、われ先に挑みかかって遮二無二戦う。死のうとするかのように 》
《 アシュラが一人で大けがしていても。味方が圧倒的多数で取り囲んでいても関係ない。獣のようにデタラメに暴れて、突進を繰り返すのは人間の方だ 》
《 討伐に参戦するものたちは、大昔に蹂躙されて、アシュラの家畜に堕とされかけた人間の末裔だ。一度攻撃を当ててしてしまうと、力尽きるまでアシュラへの攻撃を止めない。止められない 》
《 休まず攻撃していないと── 心にわき出る恐怖に堪えられないのだ 》
*⑴
『古えのアシュラ』に関する伝承は、さまざまなかたちがあります。古書や巻物、各地の旧家・武芸の流派の口伝が知られていますが、ほかにも詩歌、石碑、彫塑、絵画なども残されています。
『古えのアシュラ』に挑んだ英雄や勇士の亡骸、かれらの武器(遺品)も当時を知る重要な手掛かりと見なされています。
最近の話題は、当時の戦乱で逸失した魔術武器の槍が、突然、田舎の小さな神殿で発見された事件です。異名を《獣殺し》という槍は、地下の隠し部屋で『異形の怪物』の死骸を石壁に貫いたまま、封印されていたと言うことです。
⑵ 現在の四つ腕オーガと、大昔に東の国を席巻した古えのアシュラは、まったく別の種族の疑いがあります。
伝承では、古えのアシュラは雷撃や火球、暴風などの強力な魔法を自由にしています。しかし、今日みられる四つ腕オーガは、魔法特化の変異種でも攻撃魔法の威力と種類は限られ、武器戦闘と魔法攻撃の自由な切り替えは到底不可能です。
一部の伝承によると、古えのアシュラの中には高位で、三ッ眼や六つの腕の異形が少なからずいたとされます。
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関連項目
△オーガ
◎ おまけ写真 : オーガといえば《 背中 》
◎ 後書き
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今回の『四つ腕オーガ』は7月の連載(第2シーズン)の締めくくりです。そして、ほかの記事とは少々「ちがう」経過でコレクション入り(バルーンアート化)しました。
【 7月の連載は……九件? では、もう一件(一時限)加えて、キリよく十件にしよう 】
……そんな理由を挙げて、作者NOMAR様から、テーマのリクエストを募り取り組んだ次第です。
四つ腕オーガ。
正直、まったく記事にする予定が無かったのですが、手をつけると記事もバルーンアートも意外にハマり。とくに後者、バルーンアートは懲りました。
(筋肉がムキムキしなかった試作1号は、途中破棄)
だから、というわけではありませんが。
今回、多腕鬼のバルーンアート写真。これまでより多目でお送りします _φ(  ̄  ̄ ;K




