一七時限目『 グリーンラビット(緑魔兎)』【バルーンアート写真付き】
「 牧場? 脱走してやるさ!」
グリーンラビット(緑魔兎)
■種別:草食の哺乳動物型魔獣(ウサギの魔獣)
■主な出現地域:魔獣深森の浅部。寒冷な山野から平地、乾燥地まで広く分布。
■出現数と頻度:一匹〜最大20匹(数家族)、ふつう
■サイズ:子供が背中に乗れそうなサイズの大兎。
■危険度:小(単独)
■知能:動物並み
■人間への反応:攻撃
■登場エピソード:
『蜘蛛の意吐 欄外スピンアウト』より、『新おねー様、ウサギ娘(https://ncode.syosetu.com/n4627ff/19/)
『火炎嬢のいらだち』11話(https://ncode.syosetu.com/n6134gh/11/)ほか
■身体的特性とパワー
グリーンラビットは野うさぎの草食魔獣です。
草の色と同じ緑の毛皮で、かわいらしいみかけによらず荒い気性で好戦的です。人間たちや大きな魔獣に遭っても怯まず、鋭い前歯で攻撃して来ます。
魔獣深森の浅いところに暮らし、すぐれた適応力と繁殖力でほとんどあらゆる気候の土地に進出しています。いろいろな近縁種や亜種がいて『首刈り兎』は上位種とも言われてとくに有名です。
縄張りをもたない若いハグレ個体やツガイは、おいしい果実や草を求めて森の外の人間の領域へ足を踏み入れることがあり、果樹園や畑、牧場(牧草地)に時折被害を与えます。
相手を素早い動きで翻弄して戦闘力も高く、危うくなれば跳躍して逃げてしまうので、討伐難度はやや高目です。 ルーキーのハンターは、グリーンラビットを『単独で』逃さず狩れると一人前と呼ばれたりします。
▷緑色の毛皮
グリーンラビットの緑はかれら固有です。ウサギ系の上位種やほかの魔獣にも、全身が草色の毛皮のものはいません。
グリーンラビットの緑色は森や草原で保護色になりますが、敵に気がつくと自分から動き出す(突進してゆく)ため、景色に紛れ込む効果は意味をなしていません。このため何人もの魔獣研究者が(魔獣深森で比較的遭遇しやすいことから)かれらの「緑」に関心を持ちました。
① 古代の動物兵器説
グリーンラビットは、古代魔術文明が作った環境破壊兵器、という説です。
この説によれば、巨大ウサギは敵国に秘かに放されて、山野や農耕地を荒廃させて敵国民を直接襲うこともします。緑の毛皮は、敵の航空戦力や遠距離攻撃魔術に照準されにくくして、効率よく狩られないようにするためのカムフラージュです。
② 古代魔術文明の実験動物説
グリーンラビットは、危険な病毒兵器を開発するためにつくられた実験動物、という説です。
緑の毛皮は逃亡対策で、自然の動物と一目で区別がつきます。また、実験施設が岩だらけの乾燥地や雪原にあった場合、大兎の緑色は逃げかくれを難しくします。
③ 狩猟獣説
グリーンラビットは、別の大型肉食魔獣のために作られた餌動物、という説です。
緑の毛皮は、問題の魔獣(巨人?巨鳥?)に狩り尽くされないためのカムフラージュ、と説明します。
肝心の巨大魔獣を示さず、説明不足の点がいくつもあるので支持者はあまりいません。
■ 履歴;人間との関わり
グリーンラビットは捨てるところがないほど有用で、着実に狩れるハンターは食いっぱぐれが無いということです。
魔獣素材は次の三つが有名です。
▷毛皮 ∥ ふかふかして長持ちして、すぐれた防寒具として人気があります。
比較的軽くかさばらないことからハンターに重視されますが、毛皮を傷モノすることを意識しすぎ、トドメをしくじったハンターが反撃されたり、逃げた手負いが狂化個体になる事件が時折起こります。
▷肉 ∥ 食用になります。独特なクセがありますが、果実を主食にしたグリーンラビットの肉は香りが良いと評判です。
盾の国では、王宮料理の食材です。
▷骨 ∥ 粉にして煎じて飲むと、風邪に効くといわれます。
ある熱心な研究で薬効は否定されましたが、のちに研究は引き継がれて、栄養豊富で病気や怪我の回復力を高めることが証明されました。
ラビットフェルト
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
グリーンラビットの毛を圧縮して整形した『不織布』です。断熱や防音、衝撃吸収など、これまでに無い優れた性質があります。
服飾の大きな需要が期待されて、履物、鞄、建築・家具の内装、めずらしいところではある種の楽器の内部のパーツとしても評価されました。緑毛に羊毛を加えた混ぜ物のフェルトも(純正品に劣るものの)良好な成績をおさめています。
グリーラビットのフェルトは、傷モノの毛皮や売り物にならない部位の緑毛も有効活用できることから、ハンターやハンターギルドも期待を寄せました。
しかし、魔獣災害で中央諸国が混乱すると、商品開発は一時の勢いを無くしてしまい、事業の継続が危ぶまれています。
グリーンラビット牧場
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
グリーンラビットの家畜化を狙った多頭飼育で、スピルードル王国の西部の領主が非公開で進めています。半地下の試験施設で、周年飼育と毛刈りに成功しました。
現時点で、牧場事業とラビットフェルト事業のつながりはなく、まずは本格的な大量飼育(交配と累代飼育、傷病害対策)の成功、地元民による飼育施設の建設、安全な毛刈り技術の開発にリソースを集中しています。
(数日後……)牧場? 住めば都さ!
❀ ❀ ❀
◇ ルブセィラ先生の"魔獣学”教科書
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
* ページ余白の走り書き
「グリーンラビットは、毛刈りで『裸』になるとウソのように大人しくなった。なかには寒くて?ハナを垂らすものまで」
「魔獣の攻撃性が毛刈りで減退するとは!」
「画期的発見? でも、だれも認めないかも( ← よそで追試検証が出来ない)」
「上手く飼育に応用できないか」
「 案;グリーンラビットを生まれてすぐ『サマーカット』にすれば、ずっと大人しくて。いつでも毛刈りできるようになる?かも?」
* グリーンラビット牧場の相談役が、書き足したメッセージ
「……… ひどいアイデアだな」
「まぁ、あちの気分はおいて助言するとな。毛刈りはからだの『守り』を奪うから、ケガや寒さ、日焼けのリスクが増える…… 仔ウサギはちょっとしたことで命を危うくすると思え」
「毛刈りされた大人も、見かけや気性が変わるから、まともにカップルになれなかったり、子育てできなくなるんじゃないか?
変なストレスをためて、いきなり、産んだ赤ん坊を殺す可能性もありそうだ」
「おかしな飼い方は、きちんと育てて、増やせるようになってからにしとけ」
「それと、授業で子どもたちに、グリーンラビットの毛刈りでわかったことを伝えるのはいいけど、お前の『この』アイデアは聞かせない方がいいと思う。
中身の善し悪しじゃない。
人間の都合の押し付けは悪? 人と魔獣の力は、そうでもしないと釣り合わないから仕方がない? いろんな見方や考え方を知ってからじゃないと、大好きな先生が考えを呑めるか呑めないかの話しに[以下略、長文]………
* 魔獣研究班の女性助手の、くせ字の書き込み
「ラ… 相談役さんは書き文のときだと、ぴょんぴょん、言わないんですね。やっぱり自分の役を作ってた 〜 ♪ 判明! 判明!」
「あと、びっくりしましたよ〜。すごく考えているんです。本当、見直しました。食べるのが仕事なんて言いふらしてすみま あら□□□(判読不能)
* 相談役の追加の書き込み
「ルブセィラ! おまえの助手のトンマ、ちょっと一晩借りるぞ。説教だ!」
*ルブセィラのコメント
「教科書を伝言板にしないでください」
❀ ❀ ❀
関連事項
△ ホワイトゴースト・ヘェア
△ 首狩り兎




