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一三時限目 『 バロメッツ 』

    挿絵(By みてみん)

 

バロメッツ


 ■種別:未分類の魔獣(植物魔獣??)


 ■主な出現地域:辺境の山野


 ■出現数と頻度:百〜千体以上 / ごくまれ


 ■サイズ:人間大


 ■危険度:小(単独)


 ■知能:なきにひとしい


 ■人間への反応:本能的(捕食)


 ■登場エピソード:

作者『NOMAR』活動報告ーー 『 蜘蛛意吐に、バルーンアート貰ってスピンアウト更新 』(2020.3.13.コメント内ショートストーリー)


■身体的特性とパワー

 バロメッツは、正体不明のゾンビのような怪物です。

 緑色がかった歩く屍と、朽ちた草木の不気味な複合体で、アンデッドなのか植物の魔獣なのかはっきりしません。


『やぶれた肌の下から樹皮がのぞき、暗い色のつるや芽を生やして蠢めく死体』

『木皮と蔓と枝でつくったいびつな人形に、腐乱死体を無理矢理ねじ合わせた醜悪なカカシ』

 ……… などと形容されますが、細部は千差万別で、なかには右半身が木化していたり、切り株にミイラ化した手足が生えたようなものもいます。


 感情も知能もほとんどないようです。


 本物のゾンビさながらのギクシャクした動きで人間を襲い、しぶとさと怪力、そして、洪水のような勢いにまかせて人里を蹂躙します。

 獲物の肉や臓物を千切り、からだのあらゆるすき間(口の部分と限らず、細い裂け目やくぼみ)にねじ込みますが、意味のある行為なのかはっきりしません。

 バロメッツのその部分に、消化吸収の仕組みは無いとされているからです。


 バロメッツは、魔性の異常植物が呪詛の宿ったゾンビを苗床に増えていると言われますが、別の有力説は、呪詛をあやつる怪奇な植物が人間に寄生し、生きたままアンデッドに変えたなれの果てとしています。

 議論には死霊術師や精霊魔術師が加わることもあり、どの説にも多くの異論や反論が寄せられています。


 見解がまちまちなのは、どこでどのように生まれるか不明だからです。


 出現時期や出現地域(襲撃地)も不定で、倒した屍?は劣化が早いためまともな標本が残りません。

 このため過去のバロメッツの残留物、被害報告、インタビュー記録など。盾の三国の対魔獣研究機関(とくにスピルードル王国の王立魔獣研究院)には多くの資料が集められていますが、信頼できるまとまった情報は限られています。



 ❀ ❀ ❀



◇ルブセィラ先生の授業参観・3

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「……… 人型植物のバロメッツはもともと、魔獣深森の奥の魔性の大樹になった『実』だといわれます。地面に落ちると歩いて動きだすと。しかし、不確かな噂に過ぎません」


「不可解なのは、過去にバロメッツは緑のヒツジ───『魔羊』だったことです」


「植物のヒツジ──── 古い記録のバロメッツは『四つ足の獣』でした」


「植物ゾンビのように森から大群があらわれるのですが、植物ヒツジたちはよろよろさまようだけで、害は畑を歩いたり農道で邪魔になるぐらい。

 弱々しく、女子供でも棒で追い払えたそうです」

「『枯れ草色の羊がみのる魔樹』が森の奥地にある…… 今と変わらない噂も流れていました。しかし、植物ヒツジは無害で無価値で、危険を冒して確かめに赴くものはいませんでした」


「ゾンビまがいの人型植物になったのは、250年以上前です。『盾の三国』の原型が出来た頃ですね。植物ヒツジはこの時期から逆に、すがたを見せなくなりました」


「植物ヒツジのバロメッツは、もともと発生が稀でした。害も無かったので、辺境でもあまり正確に調べられていなかったのです。

 そのため後からあらわれた『ヒトガタのバロメッツ』は、たいした議論もなく単にバロメッツと呼ばれるようになり。逆に植物ヒツジは、存在自体を忘れられたのです」


「これは、わたしの個人的想像ですが」


「もしかしたら、新たな魔獣が森の奥で生まれつつあるのかも知れません。魔性の植物を起源にして、人や動物の姿をまねた分体を遠隔地へ送り出す植物の魔獣です。

 今はトライアンドエラーの段階…… 」


「わからないのは、はじめがどうして【 ヒツジ 】だったかということですね」



・・・ん?


ハラード(ウィラーイン伯爵)

「羊? ()()が羊だったとはの」


ルブセィラ

「あれ、とはまさか……また!」

「ルミリア様 ⁉︎ 」


ルミリア (伯爵夫人)

「そういえば、昔、相手にしたことあったわね」


ルブセィラ

「バロメッツとの接触、観察の記録は本当に少ないんです!」

「どんな風だったのでしょう。ええ、例えば……

 動作の早さや、身体の重さ硬さです。四肢の関節の動き、体液の性状、仲間同士が群れる仕組み、からだを傷つけられたときの反応やダメージの入り方───」


▶︎「おおら! 28体目!」

▶︎「あ、俺、30体目」

▶︎「ほんとか? ごまかしてないかハラード?」

▶︎「とか言ってる間に31体目」

▶︎「この、負けるかあ!」

▶︎「………!!!」

▶︎「………!!!」



ハラード

「バロメッツの勢いをいなすのに必死であった…… すまんの、ちゃんと答えられん。ともかく相手は大群だったのだ(真顔)」


グラフト(伯爵家執事)

「はい、ひどく慌ただしくて。きちんと数える暇もなかったのです(真顔)」


ルブセィラ

「……ル、ルミリアさま? 」


▶︎「そこのバカ二人! いい加減にしなさい! 火嵐を放つわよ!」

▶︎「ルミリア様、調査に来たのに全部燃やしてはいけません」


ルミリア

「ごめんなさい。あの頃、わたしもまだ不慣れだったのよね。ちゃんとした標本や、メモやスケッチを残せていないの」


アステ(医療メイド)

「……そうでした、ええ。大群にいきなり出会って、ものすごくデタラメな討伐でした」

( あのとき、剣士のおふたりは、なんで腕くらべを始めたんでしょう )



…… ハラードとルミリア、そしてグラフト、アステの四人。


 かれらはまだ若いころ、ハンターチームとして各国を旅したことがあった。異例づくしの戦歴は、20年以上過ぎてもなお、魔獣研究者のルブセィラを驚かせる。


 だが、ハンターたちの勇戦の実情が、かなりポンコツで力まかせであったことは、このときまだ秘密であった。

▷ 授業参観、そして、オリジナルモンスター登場回です。

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