十時限目 『 スライム 』
スライム
■種別:粘液型魔獣(野生化した人造生物?)
■主な出現地域:古代魔術文明の遺跡、洞窟
■出現数と頻度:単独〜十数匹/ふつう
■サイズ:さまざま(こぶし大 〜 )
■危険度:小〜中
(多くの場合、大型個体ほど危険)
■知能:なきに等しい
■人間への反応:本能的(捕食)
■身体的特性とパワー
スライムは、遺跡迷宮の掃除屋のアダ名を持つ不定形の怪物です。
洞窟や古代文明の遺跡によくみられ、見た目は命ある粘土、うごめく粘液です。人や動物を襲って餌食にしますが、筋肉組織も骨格もなしにどうして力強く動けるのか。目や耳、神経組織を持たずにどうやってまわりを感じ、からだ全体を統制しているのかわかっていません。
また、遺跡探索したハンターなどから、強酸や擬態、触手、悪臭など、特殊能力をもつスライムの亜種や変異体が報告されていますが 研究者の情報の整理や検証は不十分です。
スライムはぐねぐねしてしぶとく、叩く、斬る、刺すの武器攻撃ではなかなかダメージを与えられません。また、天井や樹上、物陰にひそんで通りかかった人間を不意打ちするため、手練れのハンターでも深手を負わされることがあります。
さらに、スライム系は変異しやすく、亜種や変種、狂化個体が生まれやすい傾向があります。
前述のように関係情報の整理は不完全で、見つかっても正式に命名されないことが多く、それぞれの生息スポットの狭さ、個体数の少なさもあって、変異スライムの危険は一般にあまり知られていません。
有名な災害事例は、筋肉の塊のような大型亜種・マッチョスライムの大発生があります。
これは古くからスライム・普通種がいた洞窟が監視や調査をされずに放置されていて、いつの間にか危険な亜種の巣窟に変わっていたケースです。
在郷のハンターや地元民が気づかなかったことから、王種による異常発生のさい、突然、屈強な触腕の未知の怪物たちに遭遇することとなり、近隣の街や村が壊滅したのでした。
今日、スライムの大群の討伐は、不意打ちや危険な変異の可能性を考慮し、可能な限り間合いをとることが基本です。さらに、さまざまな方法で一ヶ所にまとめて、火系魔術か氷系魔術を撃つのがセオリーです。
スピルードル王国の一部地域では、大きな焚き火を燃やして、スライムを布袋に詰めて集めて、つぎつぎ放り込んで始末しますが、人類社会の例外中の例外です。
【履歴】
スライムは、古代魔術文明の人造生物が遺跡迷宮などで野生化したと信じられています。
つくられた目的は不明で、廃棄物を食べさせるゴミ処理、施設警備、別の実験動物のエサ、自己増殖する生体素材(原材料)などといわれます。調整不良の人造生物が組織崩壊した成れの果て、という話もありますが、いずれの説も明確な証拠はありません、
粘液型魔獣の調査研究は低調で、その最大の理由は、人々の関心がとても低いことです。
スライムは、野外に適応した種類はわずかしかおらず、国や有力者、住民たちは、ほかの魔獣のより頻繁で切実な被害対策を優先しようとします。
マッチョスライムの事例は古く、一般にあまり知られておらず、魔獣研究家でさえも、極めてまれな不運な出来事と見做しがちです。
スピルードル王国は、数代前の宰相が特例を設け、スライムの調査活動に毎年の予算を認めました。
古代遺跡の発掘調査(魔術研究)、その危険対策の名目でしたが、急速に形骸化してしまって、現在では集められたスライム系の研究資料の保全もあやしくなっています。
❀ ❀ ❀
★ルブセィラ先生の備忘録
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
新たに大陸中央にうまれた『魔蟲新森』ーー ここで最近、大柄なスライムの目撃が相次いでいます。
ジャイアントアントなどの魔蟲に比べれば、わずかね報告数ですが気になります。
もしかして、粘液型魔獣が魔蟲新森の新しい生態系へ大量進出しているのでしょうか。あるいは、壊滅した魔術国家が生命創造にも手を出していて、森の奥で何かが暴走しているのかも………
現地から連絡を待つだけでは、万一のとき、後手にまわるかも知れません。しっかりした情報が欲しいですね。
王立魔獣研究院に動きが無さ過ぎます。
スライムと侮っているのでしょうか?




