やっと婚活─って、なんでそいつが来んの!?
お待たせしましたぁぁぁぁ!
活動報告にも書いたのですがしばらくこちらを優先します!
あと1話を多少変更しました!読まなくても物語に支障はないと思いますが、変更点はエドワードの浮気が四回じゃなくて何十回も、に変更しました!
「お父様!無事に婚約を解消出来ましたわ!!」
「…メイリア……いつかお前はやると思っていたが───」
お父様はノックも無しに部屋に飛び込んできた私に驚いた様子だったが、私の言ったことを理解すると俯き、肩を震わせた。そしてガバッと立ちあがり、
「…素晴らしい、素晴らしいぞメイリア! 陛下たちには悪いが、あのバカ王子と縁が切れて本当によかった!」
と、満面の笑みで私の肩を掴んだ。
「ええ。これでやっと婚活出来ますわ」
「……それなんだが……ずっとここで暮らしてもいいんだぞ…?」
私は置かれた肩をさりげなくそっと外しながら微笑む。
お父様は手を外されたことにも気づかず、泣きそうな顔をしている。
「ふふ、お父様ったら…ご心配には及びませんわ。私は結婚が、したい、のですから」
私は結婚という言葉を強調しながら笑って言った。
「……メイリア………そうか………うぅっ」
お父様はその言葉にショックを受けたのか、また俯き肩を震わせた。多分今度は違う意味で。お父様はいい人なんだけど過保護過ぎる。そう思いながら私はため息をついた。
「…お父様…もう、私は一先ず部屋に戻りますからね」
まだ俯いて肩を震わせているお父様をスルーし、私は自室に戻ることにした。
*****
自室に戻った私はソファに座って深呼吸をする。無になろうとするがニヤニヤが止まらない。
「ふふっ、これでやっと夢が叶う…!前世からの因縁、絶ち切ってやったわ!」
ガッツポーズをしている私は、そう、前世の記憶がある。自分以外の名前はほとんど覚えていないが、長年の夢は覚えている。
それは優しくかっこいい、自分を裏切らない人と結婚すること。
なぜなら前世の私は、付き合う人全員が最低な奴らだったからだ。
ある人はギャンブル好きで借金まみれ。
ある人は約束を守らない、自己中な奴。
ある人ははたらかずグーダラするヒモ男。
──そして私が、一番大っ嫌いな浮気する奴。
別に別れるのは仕方ないと思っている。人の心は移りゆくのだから。しかし、好きな人が出来たのならそう言って縁を切ればいいだけの話。それを言わなくてもあいつはいいと思っているやつこそ私が付き合っていた男。
ま、そいつらはその最低な性格しか覚えていないが。
私はそんな奴らともう付き合いたくなくて、婚活サイトだったり結婚相談所と色々利用した。
…けれど私が死ぬ前に結婚を前提に付き合おうとした奴は詐欺師だった。私は年齢もあって色々焦っていたから、詐欺にも気づかず、あげくお金を持ち逃げされ、必死に貯めた貯金が底をついた。結婚は諦めよう、そう思って青になった信号を渡り始めた矢先、私はよそ見運転で飛び出してきたトラックに跳ねられ、そして死んだ。
そこまでは覚えている。
──ああ、もう死んでしまったんだ。
そう思っていたら、なぜだか心配するような声が聞こえる。
もしかして…私はまだ死んでない─?
そう思って目を開けると、涙を溜めうるうるとした瞳で心配そうに私を見つめる、綺麗なアメジストの瞳をした男性と、縦ロール付きの金髪の綺麗な女性の姿があった。その二人はメイリア!と呼びながら私に抱きついてきた。
見知らぬ男女、見知らぬ天井、聞き覚えのない名前。
──もしかして、と思った私はベッドから飛び起き、ベッド近くの姿見の前に立った。場所も何故か知っていた。
周りは私を心配しているのか騒がしいけれど気にならない。だってそこには先ほどの男女と同じ縦ロールの金髪にくりくりしたつり目のアメジストの瞳、そして幼い体の美少女がいたからだ。私は顔や体をぺたぺたと触り確認する。そして気づいた。これはもしかして、もしかして──異世界転生ってやつ─!?
…ということで私はこのメイリアに転生したというわけなのだが……このメイリアはとある乙女ゲームの悪役だった。
ここでそのゲームのメイリアの話をしよう。ゲームの題名は出てこないけれど、わりと有名なものだったのを覚えている。それは攻略対象が凄くイケメンとか、感動するストーリーだったとかじゃない。ただ、悪役が凄くウザくて邪魔で有名だからだった。
その悪役は縦ロールの金髪に、つり目のアメジストの瞳。そして名前はメイリア・フィール・アラカンタ。
つまり…………私だ。
メイリアは幼い頃から両親に溺愛され、我が儘に育つ。そんなときに第一王子に一目惚れし、権力を使って婚約者となる。しかしそれだけでは満足せず、色男たちをはべらせることもしていた。そして学園に入ると第一王子や気に入ったヒーロー達と仲良くなるヒロインに嫉妬する。
そこまではよくある乙女ゲームの話だが、メイリアはただのわがままで単純思考な令嬢ではなかった。頭が良く、優れた魔法の力を持っており、それでヒロインを虐めることになる。それは前世でいう小学生がやるようなものじゃなかった。メイリアは優れた魔法の力と頭の回転の速さを利用し、とことんヒロインを陥れ、時にはヒーロー達の命も狙う。そしてヒロインはヒーロー達と協力しメイリアを倒し、ハッピーエンド。
メイリアはその場でヒーローに殺されるか、国民の前で処刑させる………もしくは薬漬けにされ奴隷に堕ちる………というのがメイリアに待ち受けている運命だ。
どうやら私が目覚めたのは、本物のメイリアが不注意で池に落ちて溺れたせいのようだった…。
…なんで悪役なのっ!? 王子との婚約なんて嫌だし、せめてヒロインに転生させてくれても良くない!?って思ってたけど…これってもしかしてチャンスじゃない?…だって公爵令嬢として生まれて、美人で頭がいいのよ……結婚できるじゃない!
ということですでに嫌われている使用人達には謝り倒したお陰で良好な関係になれた。あとは婚約者探し、と思っていたのだが、ゲームの強制力が働いたのか結局私は第一王子の婚約者となってしまった。もちろん断ったのだが、国王陛下直々のお願いならば断れなかった。
そして第一王子との初めての顔合わせの時、私は婚約破棄を強く誓うこととなる。それは第一王子が思ってたよりバカだったからだ。なんというか…お子さま王子っていうイメージが強かった。まぁそりゃ前世と比べりゃ全然子供だが、同い年でももっとしっかりしている子どもはいたぞ。
私は前世で、似たような人と付き合ったことがあるので(もう思い出したくないが)会話を適当に受け流して「殿下は素晴らしいですわね」なんて適当に褒めていたら突然王子が立ちあがり「お前なんか大嫌いだ!絶対に婚約破棄してやるからな!」と怒って行ってしまった。
私は王子がどうして突然起こりだしたのかわからなかったが、お互いに婚約破棄したいなら…まあいいや、と、気にしなかった。
そのあと、何回か王子に会うことはあったのだが、王子は私にずっと怒っていたようなのでまともな会話はしなかった。そのあと王子が浮気野郎になるとは思いもしなかったが。
王子は最初、私に見せつけるように浮気をしていた。しかし私がいつまで経っても興味を示さずにいると、いつからか堂々と浮気をするようになり、勉強もせず遊び放題していた。最初はせめて友達のような良好な関係になれればいいかな、なんて呑気な考えしていたが、だんだんと王子にイライラするようになってしまった。
今の王子は簡単に処刑するとか言いそうだったので大人しくしていたが……ついに、ついに今日!婚約を解消することができたのだ!
「ふふふ…」
ああもう、ニヤニヤが止まらない…!そう思っていると私付きの侍女・エイミーが私の様子に訝しんで話しかけてきた。後ろにいる双子の侍女・ミアとレアも気になっているようだった。
「何か良いことがあったんですか? お嬢様」
「ごめんなさい、皆にはまだ話してなかったわね。ふふふ、実はね──」
私はわざと溜め、皆をじっと見つめた。三人はごくりと喉をならし、私の言葉を待つ。
「実は…?」
「──婚約を解消出来たのよ!」
「まあ! そうだったんですね!おめでとうございます、お嬢様!」
三人は拍手しながら凄く喜んでくれる。中には涙ぐんでいる人もいた。私やお父様と同じで使用人の人達は、婚約者…いや、元婚約者の浮気を知っている。だから皆、自分のことのように喜んでくれるのだ。
中でもエイミーは私が前世を思い出して真っ先に謝った人。そのお陰か使用人の中では一番仲良しだ。もちろん、他の皆も大好きだが。
「それでお嬢様、婚活、するんですよね?私達ももちろん、協力しますよ!」
「皆、気が早いわよ?まだ婚活解消したばっかりなんだから」
「そう言いながらお嬢様もニヤニヤが止まってませんよ?」
「あら、本当ね!ふふふっ!……さあ、みんな婚活に向けて色々頼むわよ!」
「「「はい、お任せください!」」」
みんなは声を揃えて言った。ああ、本当にここの人達はいい人だなぁ。そう改めて思っていると、来客の知らせがやって来た。私が誰が来たのかと聞くが、その瞬間私は固まることとなった。
「お嬢様、その……レオナルド・アドルフ様、という方がお嬢様に会いたいと……いらしたそうです」
「──は?」
──レオナルド・アドルフ──?
……なんで、そいつが?だってそいつは乙女ゲームの攻略対象で……しかも私の大嫌いなチャラ男騎士なんだけど─?
なんで、なんでそんな奴が私に会いに来るのー!!?
お読みいただきありがとうございます。
さて、次回も時間かかりますが…しばしお待ち下さい!