湯けむり温泉郷【13】幻想
結界内部上空に、ふたつの影が浮かんでいた。その真下には切り立った岩に囲まれた湯場があり、その端に少し大きめの平坦な岩場があった。
その浮島のような場所を囲むように、大小様々な形をした尖った岩が湯の中からつき出ており、それぞれの元に数人から数十人の湯着を身に付けた兎族の女性たちが試合を観戦していた。
試合開始からしばらくは、ふた手に別れて応援合戦が繰り広げられるなど、お祭り騒ぎで対戦を楽しむ雰囲気すらあったが、予想と大きく異なる試合展開に笑顔が失せ、代わりに手で顔を覆いながら震える女性の姿が目立ちはじめた。
国の英雄であるアレンが一方的に攻め込まれ、傷付き倒れる様子を茫然と見守る女たち。彼女たちの目には自然と涙が浮かび、どれほど傷つこうと諦めずに立ち向かうアレンの姿に感動しながらも胸を痛めていた。
「これは夢よ。こんな事が現実である筈がない」
「アレン様は体調がお悪いのでは?」
「もう止めて!このままではアレン様が死んでしまう。少しくらい手加減してくれてもいいだろうに、あまりにも酷すぎるわ・・・」などと口にしながら心の底からアレンの無事を祈る彼女たちの想いが、夜空の星に届くような感じさえあった。
それぞれの想いが交差する中、やがてシンと静まりかえった湯場に、アレンが岩盤に打ち付けられる音だけが反響音と重なり響き渡るようになる。
試合を取り巻くそれら悲壮感漂う雰囲気とは逆に、上空から観戦するふたつの影はポイントコールが上がる度に盛り上がりを見せていた。二人のうち片方は、派手に喜びながら宙返りをした後、ぴょんぴょんと跳び跳ねて奇声を上げる。
「わ!わ!また決まった!ダーリンのポイントだぁ!」
「容赦なしね。全く素晴らしい攻撃だわ」
「さすがダーリン!強い!凄い!最高だよ〜!」
これほどに騒げば誰かに気付かれそうなものだが、魔王であるラヴェイドすら全く気付く様子がない。その理由は、このふたりが実体でなく写し身だからだ。鏡に写った像に存在感がないのと同じく、上空ではしゃぐ影には気配がなかった。故に、見上げて直接見ぬ限りは絶対に見付かる事はなかったのだ。
影の正体は、言うまでもなく夢魔王メリーサと蛇王ヨムルだった。ふたりは試合開始当初からこの場所にて試合を観戦していた。
二人の本体はどこにいるのか?
彼女たちの実体は結界の制御房の中にいた。警備舎とは距離があり、独立した施設の地下にある制御房の中では、どれだけ騒ごうと声が漏れ出す心配はない。
そこに設置された結界を制御する魔法陣の中に、ひとりの青年がうつ伏せの状態で倒れていた。整った容姿の少々華奢なウサミミ青年は、鈍く光る多重防御結界の魔法陣の中心で穏やかに寝息をたてている。
「ヒャッホー!すげぇぜ!!」
結界の修復と強化の終了と同時に、幼なじみのポールが歓声を上げた。半端無いやり遂げた感で満足気な笑顔を浮かべ、額に大量に浮かんだ汗をぬぐいもせずポールと抱き合って喜びを分かちあうリュオン。
「やったな!魔王ふたりを見事結界の中に封じ込めたぞ。これでしばらくの間は動けまいよ」
「君のおかげだよポール。こんなに巧く行くとは正直驚いている。まるで夢のようだ。これでアレン兄さんも心置きなく闘えるだろう」
「その事だが・・・、少し残念な知らせがあるだ」
ポールはうつむいて苦しそうな表情を作る。その変化に違和感を感じつつも、リュオンは親友の顔を見つめ直した。
「何があった?まさか、アレン兄さんが!?」
「その通りだリュオン。君は結界強化に集中していたから邪魔する訳にもいかず言い出せなかったが、凜々さんから念話が届いたんだ。だが俺の口からこんな重要な事を伝えてもよいのだろうか・・・」
「もったいぶるな。早く教えてくれ!」
「心をしっかり持てよリュオン。アレン兄さんが・・」
「アレン兄さんが!?」
うつむきながら肩を震わせていたポールは、突然顔を上げてニパッと笑い、アダムを打ち負かし勝利したそうだ!と拳を突き上げ「イェイ!イェ〜イ!」と踊りだした。
確かに残念な知らせだ。兄が勝負を決める瞬間を見逃してしまったのだから。イタズラ好きのポールは学生時代から全く変わってない。彼が持つ天性の明るさは、真面目で面白味に欠けるリュオンには羨ましい限りであった。彼のように底抜けに明るく振る舞えたらと思う事もあったが、性格的にそれは無理だという事も分かっている。
「さあ、アレン兄さんのところに急ごう!お前が戻るのを皆が首を長くして待っているぞ。父上もたいそうな喜び様だという事だ!」
「そうだな。早く兄上の顔が見たい!」
ポールに促され試合会場に駆け戻ると、いきなりアレンがガバッと強烈に抱きついて来た。兄の体には闘いによる傷ひとつ見当たらない。時間的な事を考えれば、速攻で勝負が着いたのだろう。あの正体不明のプレッシャーを放った異世界人も、兄の前ではなす術なく打ちのめされたに違いない。
「やったぞリュオン!俺たちは勝利したんだ!」
「はい、兄上。おめでとうございます」
「何を他人事のように言っている?これは俺とお前とで勝ち取った勝利だ。お前の結界がなければ実現しなかった」
「いやいや、兄上が勝敗を決めたのです。私など・・・」と言う横から、ラヴェイドがハッハッハーと笑いながらリュオンとアレンの肩に手を回してガッシっと抱き抱えて来た。
「遠慮は無粋というモノだぞリュオン。もちろん他の皆も頑張ったが、一番の功労者は誰が見てもアレンとリュオンお前達だ。我は父親として鼻が高い。ハッハッハー!」
知らず知らずのうちに涙がこぼれる。父からどことなく距離を置かれているように感じていたリュオンは、その言葉に安堵して素直に喜びを表現した。
「父上からそのような言葉を頂けるとは思いもしませんでした。今日は最良の日です」
「喜ぶのはまだ早い。お前に良い知らせがあるのだ」
「なんでしょうか、父上」
「闇のアダムは条件をのみ、我が国に婿入りする事になった。相手は蘭々だ。近日中には正式に婚礼の式をあげる」
「え?アダムの相手は凛々さんと蘭々さんのふたりという事ではなかったのですか?」
「我もそのつもりであったが、状況が変わったのだ」
「状況が?」
「アレンから聞いたぞ。お前は子供の頃からずっと凛々の事が好きだったそうではないか?」
「え? えええ――っ!!
兄上!それは絶対に秘密にすると約束してくれたではありませんか!」
「わるい、わるい。ちょっと口を滑らせちまってな。でもな、リュオン。この機会にお前にも嫁を取らせるべきだという話になっちまったもんだから、ならば本当に好きな相手と結ばれたほうがいいと思ったんだ。アダムを迎え入れた後は、政略結婚などしなくても強国の仲間入りとなる。妹には本当に幸せになれる相手と結ばれて欲しいと思うのは兄として当然の事だろ?」
でも、しかし・・と言いかけたところを後ろから羽交い締めにされたリュオンが驚いて振り向くと、彼が愛してやまない憧れの凛々そのひとがいた。
「おい、リュオン。あたしの事が好きだったなんて知らなかったぞ?なぜ早く言ってくれなかったんだ?」
リュオンは三つ歳上の凛々の事がずっと前から好きだった。湖の祠でアレンと出会い、交流を持つようになってから2年目の春、はじめて家に招待された時に出迎えてくれたのが麗々婦人と凛々だった。
引き締まった完璧に近いプロポーションと野生味のある美しい容姿。男勝りでやんちゃな所も見たままで好感が持てたし、それでいて女性らしい心配りと優しさが共存する不思議な魅力にリュオンのハートは一発で虜となった。
いつまでも結婚しなかったのも、凜々が隣国に嫁いだ後も彼女への想いを捨て切れなかったからだ。その憧れの女性に後ろから羽交い締めにされ、照れながらもあわてふためくリュオン。
「なあ、知ってたか?あたしもお前の事が昔から気に入ってたんだ。子供の頃はあんなに懐いてくれてたのに、あたしが成人してからは近付くとさっさと姿を消しちまうから、てっきり嫌われちまったとばかり思ってた」
「そ、そんな訳ないじゃないですか!私は凛々さんの事が・・・」
「あたしの事が?」
「――――ずっと好きだったんです。
結婚されたと聞いた時は本当に悲しかった」
「好きだった?―――――過去形か?」
「今でも好きです。愛してます!」
その言葉を聞いたとたん、凛々はリュオンの顔を半ば強引に振り向かせ激しいキスをして来た。ただのキスではない。感情を込めた熱いディープなやつだ。父と兄の前だというのに、なんて大胆でぶっ飛んだ女性なのだろう?それも凛々らしく、リュオンが憧れた昔のままに情熱的で荒々しく、狂おしいまでに美しかった。
「リュオン、あたしを幸せにしてくれるか?」
「もちろんです!一生離しません!」
ふたりは堅く抱きあい、再びキスを交わすのだった!
わざわざ言うまでもない事だが、これは夢だ。
リュオンは地下室に設置された制御房の中に倒れ、幸せそうに表情を緩めながら夢を見ている。
夢魔王メリーサの仕掛けた夢の牢獄『夢之国』 夢と気づくまで解けない事はもちろんだが、たとえ気づいたとしても、それを完全否定し脳裡から未練を断ち切らない事には解除される事のない甘美な牢獄である。対象の持つ最も強い願望を夢にして体験させる夢魔族特有の精神妖術だ。
夢であるので矛盾も生じるし、ハメられた事に全く気づけない訳ではない。しかし、その甘美な夢に逆らう事は自分の夢を捨てるに等しく、まさしく断腸の思いを強いられる。夢の内容は時間がたつにつれて過激になり、刺激も増してエスカレートして行く。
最終的には必ず願望のままに幸せが訪れるのだが、そこに至るまで山あり谷ありと韓ドラ風のドラマ仕立てになっており、結果が分かっているようなコテコテのストーリーにも関わらず、続きが気になって気になって仕方なくなるという非常に厄介な術だった。
リュオンは、色恋沙汰には非常に奥手だ。
学問の分野では、国内外を問わず彼に並ぶ者など存在しない程に優秀なのに、異性の事となるとさっぱり駄目だった。
長年想い続けた凛々への恋心が実り、周りから祝福を受けながらはじまる新婚生活。その蜜月の夢はリュオンにとって余りにも甘美であり、手離す事の出来ぬ大切な時間だった。
「こいつがあの結界を作ったってホント?」
「間違いないよ。夢の中で結界を操作していたし」
「それにしては、あなたの術にどっぷりハマちゃってるみたいだけど?あんなとんでもない防御結界を造った本人だとはとても信じられないわ」
「それだけ純粋だって事だよ。ヨムルちゃんみたいなタイプにはあまり効果ないけど、効くひとには物凄く効果的な術なのさぁ〜」
「その言い方だと、私がひねくれているように聞こえるわね?おもしろくないわ」
そういう意味で言ったんじゃないんだヨ〜と言いながら、イタズラっぽく笑うメリーサ。ふたりはどうやってリュオンの計算を上回るスピードで結界を突破できたのか?
それは、現在の時間帯が大きく影響していた。
午前2時の丑三つ時は、夢魔の力が最も強くなる時間帯だ。半精神体の彼らは、この時間帯だけ外界からの影響を受けにくくなる上に妖力も増す。
リュォンは、既設の結界に追加したのち強化するかたちで夢魔対策の術を施した。しかし、計画開始から実行までの準備期間があまりにも短かかったため、夢魔への完全な対策は半数に止まり、残りは従来の設計強度のまま追加したに過ぎなかったのだ。
ヨムルが使い魔を湯水のように使い捨てにしながら結界の半ばまで進んだところ、厄介な対策が施された部分を通過したのが分かった。メリーサは術の対象となる者が屋敷内に存在する事を感知すると『夢渡り』を使い、結界を素通りして侵入を果たしたのだ。
『夢渡り』は夢の中を移動する夢魔の術だ。
屋敷を警備する兵の中に通常時の癖で仮眠をとっていた者が数名いた為、それはいとも簡単に行われた。
侵入したふたりはブチ切れ状態だった。
余りにも強固でしつこい防御結界に心の底から腹を立て、屋敷に侵入を果たすと同時に制御房を見付けると、こんなのを造ったクソ野郎をぶち殺すつもりで中に入った。
だがそこは全くの無人。すぐにでも完全に破壊してやるつもりだったのだが、あまりにも見事な術式の出来栄えにふたりは感心して、製作者が誰なのかを確かめようという事になった。
制御房に入ったと同時に発動するよう夢縛り術の高位術『夢之国』をトラップとして仕掛け、少し待つと数分もしないうちに見事に罠に掛かった男がいた。何の警戒もなく罠にハマるリュオンを前に、こんな馬鹿が製作者である筈がないとヨムルとメリーサの間で言い合いになったのだが、そこにヨムルの使い魔から報告が入り闇のアダムの健在とアレンとの試合がはじまる事を告げた。
『交魂の儀』を通じて絆を持ったメリーサには、彼の生存は侵入する前から分かっていた事だ。騒動の主犯格がラヴェイドだと確認できた時点でそれはあまり心配していなかった。正体不明の組織や盗賊、または、最も心配していた人類側に拉致されたのでなく、魔王がアダムを連れて行ったのなら目的など分かりきっていた。しかし、その目的の事でもあまり心配していなかった。何故なら、ある強力な仕掛けをしておいたからだ。
その仕掛けとは貞操呪だった。
夢空間の部屋でたっぷり子作りに励んだ際に、相方のシンボルに何重にも貞操帯の呪式を縫い付けておいた。自分以外の女性が精を奪おうとすれば、逆に精気を奪われてしまう。無理をすれば死に至る強力な呪術を念入りに仕込んだ。
契りを交わした相手にしか掛けられぬ術であったが、効果は絶大。夢魔族に代々伝わる『嫁の嗜み』であり、成人した時にそれぞれの母親から教わる浮気防止術のひとつであった。ちなみに、一夫多妻の場合は正妻のみにその権限があり、正妻が認めなければ夫は他の妻との間に子をもうける事が100%出来ない。
「タクヤがアレンと試合をするわ」
ヨムルは使い魔がもたらした情報をメリーサに告げた。
「アレンってあの『豪脚アレン』?」
「この場面で他の誰だというの?そのアレンよ」
「なんでダーリンがアレンなんかと試合する事になっちゃってんの?今のダーリンじゃ一撃食らったら死んじゃうよ!」
「いえ、そうでもなさそうだわ。タクヤの顔には自信が満ち溢れている。何かまで分からないけど、よほどの秘策があるのかも知れない。それに、信じられないかも知れないけど、タクヤは相当量の妖気を纏っている。使い魔の目を通してだから詳細は分からないけどね」
「他には誰がいるの?ラヴェイドがその場にいるのはここからでも分かるけど」
「『閃光の凛々』と『影殺術の蘭々』、ラヴェイドご自慢の武闘派姉妹がいる。それに第1妃の麗々とその御付きの暗部八人衆、加えて紅兎も・・・ラヴェイドの持つ奥衆の中でも怱々たるメンバーが勢揃いしてる感じね」
ヨムルの使い魔たちは優秀だ。ほとんど無限に出現させられる上に隠密性能が高く、あらゆる用途に合わせ変化させられる万能細胞で出来ている。彼女単体でも一個師団に優ると云われる理由のひとつは使い魔の数と性能だった。
「ん? あとひとり私の知らない娘がいるけど・・・
何この娘!? 使い魔の感知を全く寄せ付けない?
・・・え!? な、何なのコイツ!!」
「ど、どうしたの!?」
突然に表情を変えた様子にメリーサは驚き、ヨムルの顔を覗きこむようにした。ヨムルは少し動揺している様子だったが、メリーサに向き直ると大丈夫だと告げた。
―――いったい何なのあの娘!? 私の感知に気付いただけでなく、指向性の念話を飛ばして来た。あの一瞬で私達の居場所を完全に捕らえ、私達が誰であるかも把握していた。只者ではないわ!あの娘がラヴェイドの隠し玉だとしたら、勢力バランスが変わる程に危険な能力を持っている?
アリスがヨムルに対し送った念話の内容はこうだ。
「彼の事は心配しなくて大丈夫。お二人はそこから影を飛ばして上空から試合を観戦していてください。不測の事態が起これば乱入されて構いませんが、たぶんそうはならないでしょう。あと、兄を殺さないでくれてありがとうございます。もうひとりの方とお話し出来ないのは残念ですが、全て終わりましたら後ほど直にお会いしましょう」
まるで何もかもが分かっていたかのような落ち着いた思考。こちらからは情報の一切も感知出来ないのに、心の動きまでが悟られているような感覚。紛れもなく超一流の特殊な感知能力を有している事は間違いなかった。
それに、もうひとりの方とお話し出来ないとは念話の事か?それともメリーサとの約束の事か?もし約束の事であったなら、それを知り得るような能力をヨムルはひとつしか知らない。魔族である限り決して持つ事のできない究極の知覚能力・・・
――――まさかね。それはあり得ないわ。
頭に浮かんだ疑念を払い退け、ヨムルは『夢鏡』の能力で試合を観戦する事をメリーサに提案した。
夢鏡は、360度全方位スクリーンの中にいるように全景を見渡せる術だ。夜にしか使えない事と、投影した姿が肉眼で見えてしまうのが難点だが、見える事を生かしてテレビ電話のように使う事も出来る。魔法にも鏡影術はあるが、魔力感知に引っ掛かる可能性がないという点では『夢鏡』のほうが優れていると言える。
試合の相手が格闘技世界一を決める武術大会の常連で、優勝経験もある『豪脚アレン』だと知り、心配で仕方ないといった感じで上空から見守るメリーサだったが、試合開始と同時にその心配は欠き消された。
不思議な体術を使って、終始試合を一方的なまでに有利に進める最愛の男の姿に涙が流れる。メリーサにはすぐに分かった。彼が自分がプレゼントした技を使っている事が!
――――凄い!凄すぎるよダーリン!
でもこんな不思議な事があってよいのだろうか?技を渡してからまだ12時間も経っていないのに、まるで熟練した格闘家のごとく絶妙なタイミングで『時止め』を使い、相手の懐に入ったかと思えば目にも止まらぬ速さで投げを決めている。相手の動きを完全に読み切り、圧倒的パワーの差を逆に利用してダメージを与える技術の完成度はまさに達人レベルだった。
「メリーサ、あなたタクヤに何かしたわね?」
視線は目下の試合に向けたまま、ヨムルはメリーサに質問した。有無を言わさぬ雰囲気に誤魔化しは効かぬと覚ったメリーサは、手を頭の後ろに回しながらニャハハと笑い、クルリと回転してポーズを決めてから自白をはじめた。