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湯けむり温泉郷【13】勝敗の行方


「急がねば!」


 結界の修復と強化の為に、リュオンは屋敷の地下に設けられた結界術式の制御房へと魔術を使って転移した。結界の内側でなら魔術も妖術も使用可能だ。と、無人であるはずの制御房の内部に何者かが立ち、術式が刻まれまた聖魔石の床に向かって念を送っていた。


「誰だ!? そこで何をしている!!」


 振り向いた男の容姿を見て、リュオンの緊張がいっきに解けた。幼い頃より共に学び、競い合った友の姿がそこにあったのだ。


「遅かったじゃないか! すぐに駆け付けて来るだろうと思っていたのに、この状況はかなりヤバいぞ!」


「なぜ君がここに!? 遠征から戻っていたなんて聞いてなかったよ」


 制御房にいた者、それは学生時代からの旧友であり親友でもあるポール・アンカトルだった。没落貴族アンカトル家の血を引くポールの母親ビアンカは、ラヴェイドの妻となった後も貴族であるのに平民扱いを受けていた。しかしポールという優秀な息子が活躍したおかげで爵位も復活し、現在は第6妃の地位にまで出世していた。


 彼はリュオンの幼馴染みであり、最も信頼する人物のひとりだ。男兄弟ばかりの家系で、この屋敷での作戦にはノータッチの筈の彼がなぜこの制御房にいるのか?リュオンは意外な人物の登場に少々面食らったが、これ以上ない助っ人の姿にホッとしたのも事実だった。


 ポールはリュオンには及ばないまでも優秀な術士であり、魔法戦略のスペシャリストである。共に国家の魔術戦レベルを引き上げた仲間であり、魔術ユニオン創立時のメンバーでもあった。もちろん、これら結界陣についても豊富な知識を持っているだろう。


「お前さんがかなりヤバい計画に足を突っ込んでいたのは、以前から勘付いていたからな。この屋敷に運び込まれた聖魔石の石板がハンパな量じゃなかったから、当たりを付けていたのさ」


「いつからここに?」


「3日前だよ。気付かなかっただろ?」


 ニヤリと笑うイタズラっぽい笑顔は子供の頃から全く変わっていない。二人でよく学長の部屋に忍び込んでイタズラしたのを思い出した。


「リュオン、今は再会を喜んでる場合じゃない。もうすぐにでもこの結界は破られる可能性がある」


「分かっている。力を貸して欲しい。結界を強化するんだ」


「そのつもりで準備だけはしておいた。構造が複雑過ぎて、俺じゃあこの程度の事しか出来なくて申し訳ないが」 


「いや、助かったよ。ありがとうポール」


 結界魔法陣の自動修復プログラムがポールによって起動され、自動では直せないほど破壊された箇所が浮かび上がって操作を待っている。連結術式ではなく個別に起動した結界を直列に組み合わせているので、連結式よりも制御そのものは難しいが修復や強化は容易く出来るようになっていた。


 ポールがあらかじめ破壊箇所を浮かび上がらせてくれていたおかげで修復作業は予想以上に早く済み、続いて行う強化作業に予定よりもずっと早く取り掛かる事が出来た。しかし、ここから先の作業には莫大な魔力を消費する事になる。正直なところ、リュオンはひとりでそれをするのには魔力が不足しており、生命エネルギーを魔力に転換して使うしかないと考えていた。要するに、何年分かの寿命を犠牲にする覚悟でこの制御房に来たのだ。


「制御陣に入る。私ひとりの魔力では足りない」


「見れば分かるさ。遠慮なく俺のも使えばいい」


「感謝する。では行くぞ!」


 リュオンが魔法陣の中心に立ち、呪文を唱える。多重集積防御結界の魔法陣は新たな力を得て高速で回り出すと、地下室から漏れ出す程の勢いで光を放ち出した。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 試合が開始されてから、7分が経過しようとしていた。はじめのうちは二人を応援する女性達の奇声が温泉郷に激しく響いていていたが、今はそれもない。宙を舞う巨体が大地に叩きつけらる音だけが響き、その信じらぬ光景は観戦する者達から声を奪っていた。


 誰が予想しただろうか?大人と子供程の体格差があるのに、闘いは小さく小柄な男によって一方的な展開を見せていたのだ。


――――いったい何がどうなっているんだ!?


 アレンには、自分の身に何が起こっているのか理解できない。ただ確かなのは、自分の攻撃は一つとして相手に届かず、一方的に投げを食らい続けているという事だ。


――――この奇妙な体術はなんだ!?

異世界の武術か?それとも妖術との複合技なのか!?


 さほど強く腕を握られている感覚はないのに振りほどけない。振りほどこうとすると手首を捻られ、体を反されて瞬く間に投げられてしまう。起き上がろうとするところを、掴まれたままの腕を起点にまた投げられ、まともに立つ事すら許されない。


 それに、アダムはほとんど立ち位置から移動していなかった。自分だけが右に左にと振り廻され、攻撃が当たったと思われた瞬間に視界が反転し、背中から岩盤の大地に叩きつけられてダメージを負っていた。


 ひとつひとつのダメージはたいしたモノでなかったが、積み重なるとそうも言っていられない。こちらがどんどん体力を削られて行くのに対し、信じられぬ事に相手は汗ひとつかいていないのだ。


 一撃必殺の蹴りをまるでそう来るのが分かっているかのように躱しながら、蹴り足の方向を軽く手を当てるだけで容易く変化させ、その勢いのまま地面に叩きつけられる。相手がこちらの力を利用しているのは分かっているが、分かったところで何が出来るだろうか?


 更に攻撃のスピードを上げ、相手が反応する前にヒットさせる以外に対処法が思いつかない。もちろんそんな事は先程からしているのだが、フェイントを巧みに混ぜ繰り出した攻撃が全く通用しないのだ。それもその筈。目の前の男は先程から目を閉じたまま闘っている。視覚に対して発生させた幻惑を含むフェイント技など全く意味がなかった。


――――まるで神業だ。オレはとんでもない男を相手にしてしまったらしい。


 横殴りにはらった裏拳が空を切り、脇に手を差し込まれたと同時に踏み足を飛ばされ、そこから裏側に捻りを加えられて肩口からダイレクトに地面に落とされた。


「ぐはっ!」


 今まで、何度となく叩きつけられながら声ひとつ上げなかったアレンの口から、少量の血と一緒にうめき声が飛び出した。


――――内蔵をやられたか? いや、アバラがいったな。


「ポイント、アダム!!」


 凛々のコールが響く。

肩を庇い、無理やり受け身を取ろうとして失敗した。脇腹を尖った岩に打ち付けたアレンは口端から血を流しながら、それでも立ち上がって構えをとった。


――――オレは今、一族の運命を託されてここにいる。負けるなど絶対にあってはならない事だ。たとえ命尽きようとも、最後に勝つのはオレでなくてはならない!


 凛々が試合続行の合図を出すと同時に、痛む脇腹を意識の外に置き再び闘いに身を投じるアレン。彼の脳裏には勝利の二文字しか存在していなかった。



「ポイント、アダム!!」


 このコールを聞くのは何度目だろうか?

27回目よとアリスが即座に教えてくれたが、そんな事を言いたい訳ではない。何度倒そうと、微塵も闘志を衰えさせる事なく立ち上がるアレンの姿に、俺は心の底から驚嘆していた。


 タフだとは分かっていたが、実際これだけ粘られるとさすがに呆れる。我慢強さにも程があるというモノだ。開始のコールから既に15分が過ぎようとしていたが、メリーサとヨムルが到着していておかしくない頃なのに二人が来る様子はまだない。


―――タイムオーバーで優勢のまま終わるはずじゃなかったのか?このまま続けるとそろそろヤバいぞ!


 ポイントは27対0だった。だが、アレンはもとからポイントなど気にしていない。常に一撃必殺のKO狙いで攻めてくる。


 だが、そんなアレンにも焦りが見えはじめた。体力の低下とともに動きにキレが無くなり、ひとつひとつの技に雑味が帯びて来る。こうなればもう勝敗は決していた。俺はアリスのチート能力と『時止め』を併用し、アレンに余力が残されていようと居まいと全くお構い無しに、容赦ない攻撃で更にダメージを積み重ねて行った。


 現代武術における合気道は、『捻り』を相手の関節を壊す目的で使用してはいけない。関節の駆動域を利用して捻る事により相手のバランスをコントロールして投げを打つ。


 駆動域を熟知しているからには、腱を切ったり関節を壊したりする事もやろうと思えば出来る。しかし、普段しない事はやれたとしても無意識にブレーキが掛かってしまい、危険な角度になると自然に力を緩めてしまう。アリスが作った仮想現実世界での特訓でも、その心のリミッターを外すのにはかなり苦労した。やらねば殺されるという恐怖心がなければ、最後まで不可能だったかもしれない。


 投げ技にしてもそうだ。

きれいに背中から落とすのと、肩口や頭から落とすのとでは与えるダメージが全く違う。頸椎を破壊するような技はアリスから禁じられているので使っていないが、それ以外は容赦なく実行していた。だが、抱えて直接関節を折ったりはしない。それをすれば技が終了して動きが止まる。止まったところを反撃されれば、場合によっては致命傷を負う可能性があるからだ。


 ここは仮想現実の世界ではない。死ねば終わりだ。アリスがいくつかの技を禁じたのも、カウンターの危険性を考慮しての事だ。


 俺の肉体は、アレンと比較したらデタラメに脆い。一撃でも貰えば、即試合終了となる。決して無理はせず、優位性を保ったままダメージを重ね、優勢勝ちを狙う。これがアリスの立てた必勝のプランだった。


 だが、そろそろ限界が来る。

『時止め』を使うにはかなりの妖力を消費するので、アリスのサポートがあったとしても後数回、いや、残り3回で打ち止めになるだろう。


 いかに三手先が見えていても『時止め』を使わなければ、アレンの馬鹿げた速度の攻撃を躱して技をきめるなど不可能だ。『時止め』が使える内に勝負を決めねば、俺は確実に負ける。はたから見たら圧倒しているように感じるだろうが、実際のところアリスも俺もかなりの無理をしていてギリギリのところで闘っていた。


「降参してくれアレン。このまま続けても結果は変わらん」


 痛めたアバラに重ねてダメージを受け、激しく吐血するアレン。折れたアバラ骨が肺に突き刺さっているのは間違いない。左足の腱もたぶん切れている。だが、満身創痍でありながらアレンの闘志には全くの陰りがないばかりか、傷を負う毎にギラギラと眼光が鋭さを増して闘気が膨れ上がる。


「闇のアダム。お前の名を教えてくれ」


 試合を開始してから初めてアレンが口を開いた。


「速水卓也だ」


「ハヤミ・タクヤ・・・」


「もう充分だろう?早く治療しないと命に関わるぞ!」


 俺は審判の凛々に視線を送る。

ここで優勢勝ちを告げれば試合は終わるのだ。状況だけを見れば、誰が判断してもそう映るはずだった。


「こんないい場面で試合を止めてくれるなよ、凛々。これからが本番じゃないか!オレのカッコいい姿が見たくないのか?」


 闘志をむき出しにして口元に笑みを浮かべ、体勢を低く構え直して溜めを作りながらアレンは言った。その言葉に、無言のまま試合の行く末を心配しながら見ていた女性達からどよめきとともに歓声が上がる。アレンはこの国のヒーローであり、憧れであり、シンボルなのだ。今の状況が何であれ、正義がどちらにあるかなどに関係なく、自国の英雄を応援する事はしごく当然の行為だった。誰かの口らかあがったアレンコールは、瞬く間に全員に伝播し、温泉郷は女性達のエールで埋め尽くされた。こうなれば当然、試合は続行されるだろう。ここまで来て、再び完全なるアウェイ感がハンパなく俺を襲う。


――――ありゃりゃ?また敵に逆戻りかよ。皆の為に闘ってるつもりなのに、これはかなりキツイなあ。


――――仕方ないわよ。アレン兄さんはこの国の英雄なんだから。私が絶対に兄さんを殺さないでって言った理由が分かるでしょ?


――――ああ。この状況を見れば想像がつく。もしそうなれば国民全てが敵になり、俺はずっと命を狙われ続ける事になりそうだ。


――――なりそうだじゃなくて、実際なってしまうの!アレン兄さんの人気は本当にハンパないんだから。


――――じゃあラヴェイドはどうなんだ?国王なんだから、やっぱり人気も凄いんだろな?


――――それ、知ってて聞いてるの?


――――どういう意味だ?


――――んとね・・・なんて言えばいいか迷うけど、あなたはあなたの会社の社長が好き?そう聞けば分かるかしら?


――――なるほど。よく分かりました。



 凛々が肩の高さで両手を上げると歓声が止む。

 腕を交差させれば試合続行だ。


――――すまないアリス。封印した技を使う。


――――わかったわ。でも絶対に兄さんを殺さないで!


 アリスにも状況は分かっている。

残された妖力も残り少なく、もう余裕もなく後がないのだ。次の攻防で勝負を決めなければ、ジ・エンドとなるのはこちらの方だった。


 凛々の腕が交差し、続行のコールが告げられる。が、アレンは溜めの体勢まますぐには動かず何かを仕掛けようと更に気を膨らませた。


ーーー何だ!?


 突然アリスの予知がブレた。

三手先まで見えるアレンの攻撃が写真の重ね撮りをした時のようにブレ、明確な像を結ばなかった。こんな事は初めてだ。


 と、動き出したアレンの後ろにもうひとりのアレンが続き、その後ろにもアレンが現れた!?


 妖術か?という俺の思考をアリスが否定する。

緊急時しか使わないはずの思考加速を展開し、アリスの高密思念が俺に正確な状況を説明すると同時に、回避行動を強制的に取らせた。


 アリスの操作で俺の体が動く!


 思考加速をした状態でなお、アレンの攻撃を目視するのにかなりの精神力を必要とした。


 アレンの後に続いたアレンが、先のアレンが繰り出した攻撃と同じ軌道でいて微妙に変化を加えた攻撃を仕掛けて来る。その後ろのアレンは更に変化を加え、3段変化の時間差攻撃をして来たのだ。


 アリスの高密思念はこの技を『三身一合手』と説明した。自身の『存在力』を三つに分けて実体化させ、瞬間的にではあるが三人同時攻撃を可能にする超高等絶技だという。継続時間は一体につき1秒足らず、2体増やして三身になれば2秒だ。


 これは俺の師匠である猿王の持ち技であり、アレンが使えるとはアリスも想定していなかったらしい。予知も万能ではないという有り難くない証明となった。


 アレン三体による攻撃を2秒間躱し続けるのは、俺の身体能力の限界を遥かに超える作業だった。アリスの強制操作は俺の体にとてつもない負担を強いたが、それでも彼女のサポートがなければアレンの連打を食らい、俺は間違いなく絶命していたであろう。



――――ヤバいぞアリス。右目がやられた。


 右目の瞼の端が千切れ、血が滴り落ちる。目を開いている感覚はあるのに、右目からはなんの情報も受け取れなかった。


――――ごめんなさい。躱しきれなかった・・・


――――大丈夫だ。衝撃波で一時的に麻痺しているだけで直撃はしていない。すぐに回復するだろう。


 しかし状況はすこぶる悪い。肝心要の初眼すら使えなくては、次の攻撃に反応するのは不可能だ。それに今の攻撃をかわす為に無理をした俺の体はあちこちが悲鳴をあげ、全身に激痛が走っている。


「この技すら届かぬか?」


 全てが空振りに終わり、驚きながらもなぜだか嬉しそうな表情を浮かべるアレン。


「次の武術大会の為に秘密で特訓を重ねた"取って置きの技"だったんだがな。やはりまだ未完成だったか・・・」


 満身創痍の状態で無理をしたアレンは、それと分かる程に深刻なダメージを負っていた。


 ガクガクと震える左足の腱は完全に断絶し、無理矢理に動かした為に関節までもが壊れてしまっている。脇腹の辺りには白い骨が2本皮膚を破って突き出しており、出血もハンパない。


 それにも増して、最も深刻なのは酸欠だ。

全身の皮膚が紫色に変わり、どう見ても片肺は機能していない事が分かる。もしもこのまま試合を続行すれば、脳に酸素が行かなくなり彼は死ぬ。酸欠で意識が飛びそうになるのを気力だけで必死に繋いでいるのがありありと分かった。


 次の一手でどちらかが死ぬ。

 あるいは、二人ともが死ぬかも知れない。


 俺は凛々の方を見た。目に止めろという意思を込めて、彼女の瞳を真っ直ぐに見た。だが、凛々は哀しみを浮かべながら首を横に振ると、訴いかけるようにラヴェイドの方を見る。ここで止めなければアレンが死ぬということは凛々にだって分かるはずだ。


 しかし凛々は止めない。

ラヴェイドから念話を受けていたのだ。


―――父上、これ以上やれば、兄上は確実に死んでしまいます。試合を止めさせてください。


―――駄目だ。試合を止める事は絶対に許さん。


―――この状態が分からぬはずはないでしょう!呼吸が止まれば、極度な酸欠状態にある兄の脳は深刻なダメージを負います。今すぐにでも試合を止めて治療をしなくては!


―――何度も言わせるな。試合続行だ。アレンもそれを望んでいる。


―――今の技を使い勝ったとしても結果は同じです。父上は兄を失う事を何とも思わないのですか!?


―――負ければなんの価値もない。たとえ力尽きようと勝たなければ意味がないのだ。勝って死ねるならアレンも本望だろう。


―――兄上は不世出の英雄です。その兄を失うなど絶対にあってはならない!


―――何を言っているのか意味が分からんな。

英雄ならここにいるではないか。息子などまた作ればよいのだ。アダムの妖力は間もなく尽きる。今がチャンスなのが分からんのか?アレンにも同じ技を使えば必ず勝てると伝えた。次で勝負が決まる。


 凛々が次に同じ技を使えば兄が死ぬと言っているのに、その技を使って勝てと命じるラヴェイド。まさにゲスの極みとしか言いようがない。それでも続行を渋る凛々に対してラヴェイドは更なるゲスの命令を重ねた。


―――これ以上続行を延ばすならば魂爆丸を使うしかない。アレンとの戦闘でガス欠寸前の今なら、たとえ異世界人であってもノーダメージとは行かぬだろう。アレンはもう使えんだろうから、お前かリュオンを術の触媒に使うとしよう。


―――父上!あなたというひとは・・・そこまでに


 噛み締めた凛々の唇が血で滲み、やがて一筋の線となってこぼれ落ちた。震える腕が、交差する動作をとる為に動き出したとき・・・


「降参する。俺の負けだ」


 再開の合図を待たず、俺は自らの負けを宣言した。



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