よくある異世界物とは一味違う
俺は松原東生、大学四年生
絶賛就活中!
こんな書き出しから始まる異世界ものをよく見かける
でも、現実にはそんな都合よくいかなくて
松原東生、大学四年生
内定0!!
やばいー
遅刻する!
なんで面接の前の日に飲み会なんて
そんな後輩の誘いを断れない自分に呆れながら
面接会場へ向かう。
国立大とはいえ日本で何本の指になんて別世界
それでもここまでなんとかやってきた
「ここか」
新しくない雑居ビルを見上げる
その向かいには恐らく誰でも名前は知っているであろう
大東物産
世界的企業にして
就活生憧れの的
年収もたかくまさにエリートの集まり
当然、うちの大学から就職した者などいるはずもなく…
そんな別世界の光景を見ていると
「ぐ、ぐぐぐ」
呻き声と共に前を歩く初老の紳士がうずくまっていた
時計に目をやる
時間は無い!
にもかかわらず、通りすぎていく人並み
「大丈夫ですか?」
その声をかけるのにたいした迷いはなかった
どうせこの会社もダメだ
そんな思いもあり老人に駆け寄る
「き、急に胸が締め付けられて…」
額から冷や汗を流しながら訴える老人
「今救急車呼びますから」
(はい、消防です)
「救急です、道で人が倒れて、胸が締め付けられてると言ってます」
(わかりました、救急車を向かわせます。現場の住所はわかりますか?)
「えっと」
電信柱に目をやり
住所を伝える
「目印は大東物産前です」
~~~~~
その後搬送される老人を見送ると
面接予定の会社に謝罪にいき、家路につこうと駅に足を向けようもしたとき
「あのー、失礼ですが、先程救急車を読んでいただいたのは…」
小綺麗な感じでスーツ姿の若い女性が声をかけてきた
「はい、俺です」
「やはりそうでしたか、遠くからは見えていましたが、駆けつけたときにはお姿が見えなかったもので」
「そこの会社にはいってましたからね」
ちょうど入れ違いになってしまったようだ
「申し遅れました。私、大東物産会長秘書の望月と申します。
先程お助け頂いたのは私の上司、大東物産会長、大東一でして」
あらー
さっき凄いビルだと見上げた会社の
それも会長があのじいさんとは
頭が混乱してきたぞ
「そうでしたか、それで後様態は?」
「お陰様で大事には、持病でして
病院に搬送された頃には安定とのことです」
死にそうな勢いだったぞ
と心のなかでツッコミをいれつつ
「それは何よりです。」
「ご連絡先を教えていただけますか?後日改めてお礼に…」
望月と名乗るその女性は
断る俺を何度も嗜め
最後には
「礼節を欠いては会長に怒られます!」
と押しきってしまった。
はてさて
どうなるのよ俺