トラック
これは私が普段の日は隣の県で仕事をして、週末だけ実家に帰っていた頃の話です。
勤務先のある街から実家へは高速道路を使えば2時間と少々で帰りつけるのですが、毎週となると高速代もバカにならないので、私は国道が空く夜20時以降にいつも現地を出発していました。
その日もいつもの様に車を走らせていると、県境の山岳地帯に差し掛かりました。
そのまま暫く上り坂を上って行くと、前方に大型トラックのテールランプが見えてきました。
トラックと普通車では上り坂では結構速度差があるので、私は抜けるポイントに差し掛かる前にある程度差を詰めようと思いました。
いつもそのままの速度を維持するだけで無理する事なくトラックには追いついていたので、この日もそうしていたのですが、カーブを幾つか回ってそろそろ追いつくかと思ったタイミングでも、前方を行くトラックのテールランプや横腹を見せた時のマーカーの大きさが変わりません。
いつもならとっくに追いついて長い直線や登坂車線で追い越すのですが、全く追いつける感じがしないのです。
更に妙な事に相手が速度を上げたようにも見えないのです。
不思議に思いつつもそのままの間隔を維持して暫く走ると、長い直線と休憩所があるエリアが近づいてきました。
そして目の前のカーブを抜けてそのエリアに出たのですが、私の前を走っていたトラックが忽然と消えていました。
確かに休憩所に大型トラックは数台いましたが、たった今止まったような様子の車は一台もなく、長い直線の先にも何もいません。
脇道にでも入ったのかとも思いましたが、大型トラックがそんなに素早く入れるわけが無いですし、トラックが入り込めるような大きな脇道もありませんでした。
文字通り消えてしまったのです。
随分不思議な事もあるものだと思いました。
後日色々調べてみると、結構この様な体験をした方がいるようですね。
私の知り合いも似たような体験をした人を知ってるとの事でした。
ある日タクシーに乗った時に、同乗者にこの話を暇つぶしにしていたのですが、運転手さんが突然「なんかぞっとするような事を言ってますね」と随分怖がられていました。
職業ドライバーの方は私などより道路で様々な珍しい現象を見てこられて、その事を思い出されたのかも知れませんね。