第6話 悪滅 中編 ライジングハートVS魔獣
ライジングハートの戦闘回です。時系列的には後編とほぼ同時進行だと思って下さい。
「ここが魔界フィールドの中…」
第6話 悪滅 中編
[どうした?手が震えているぞ。怖いのか?]
「ち、違うよ!こ、これは…そう!武者震いって奴だよ!」
(あれだけ啖呵切ったのに今更怖くなってきたなんて言えるわけないよ…)
魔界フィールドに入った雷葉は、精一杯の強がりをボルトに言い放ち、震える手を気持ちで抑えながら魔獣が居る場所に向けて走り出したのだった。
「で、魔獣さんとは、後どれくらいで会えるのかな?」
[なんだその魔獣さんって…後1キロくらい先に居るぞ。気を引き締めていけ]
ボルトに正確な魔獣の位置を教えられ、改めて自分の中の恐怖を押さえ込み走り続ける雷葉であった。
「見つけた…あれが魔獣か、お、思ったより大した事無さそうじゃん」
[強がるな。貴様が魔獣にビビっているのは私にはとっくにお見通しなんだよ。だが、まぁその方が油断するよりは良いんだがな]
「ハァ…やっぱボルトには敵わないなぁ。でもやるっきゃないよね。楓さんとの約束も守らなきゃいけないし、早く倒して新人さんの手伝いもしてあげなきゃ」
[張り切るのは良いが、焦らずにいけよ…余り言うと調子に乗るから言いたくは無いが、貴様と私ならばあの程度の魔獣に遅れは取らないだろう。だからさっさと倒して、美月を助けに行くぞ]
「も〜ボルトったら本当にみづきちが好きなんだから。うん…でもそうだよね!そんじゃサクッと倒して、ボルトの愛しのみづきちを助けに行くとしようか‼︎」
[そ、そんなんじゃないぞ‼︎ただ美月が居なくなると…そう、お母様が悲しむから仕方なく…っ!くるぞ雷葉‼︎]
《キシャァァァ‼︎》
雷葉の魔力を感知したのか、蜘蛛の様な形状をした魔獣は、奇声を上げて襲いかかってきた。
「おっと…危ないなぁ。あんまりガッツくとモテないよ?さぁて…ボルト‼︎魔導兵装を装備するよ‼︎」
[わかっている…魔導兵装ライジングトンファー起動‼︎]
魔獣の突撃を軽く躱した雷葉は、自らのの専用装備ライジングトンファーを装備した。
「蜘蛛はあんま好きじゃ無いから触りたくもないけど仕方ないよね…そんじゃ行くよ‼︎」
蜘蛛型の魔獣に対して嫌々ではあるが攻撃を開始するのであった。
「ハァッセリャッ‼︎も〜なんかこの魔獣、すっごい硬いんだけど⁉︎どうすればいいの?」
魔獣に対し、トンファーによる打撃を加える雷葉だったが、魔獣の外骨格に阻まれ有効打を与えられずにいた。
[この外骨格は相当硬いらしいな。だったら関節を狙えばいい…トンファーをソードモードに切り替えるぞ‼︎]
「成る程!そんじゃモードチェンジ‼︎」
[ライジングトンファー、ソードモード起動‼︎]
そうして、打撃部分を剣にしたソードモードに切り替え、魔獣の関節を狙い斬りかかった。
「ハァッ‼︎」
《シャァァァ⁉︎》
「よしっこれなら…」
魔獣の脚を一本切り落とし、手ごたえを感じる雷葉であったが…
[馬鹿っ気を抜くな‼︎]
「えっ?て、うわっ!」
ボルトの警告は一歩遅く、雷葉は魔獣が吐いた糸に捕まってしまった。
「うわぁ…ベットベトで気持ち悪いなぁ。ボルト〜早く何とかして〜‼︎」
[ったく…油断しやがって、この馬鹿が!それくらい今装備してる物で切り裂けばいいだろう]
「あぁ…それもそうだよね。そんじゃ…よいしょっと」
自分が今、装備している物を思い出した雷葉は、落ち着いた様子で拘束を切り落とした。
「ふぅ…まだベトベトするなぁ。もう怒っちゃったんだから‼︎ボルト、固有魔法を使って一気に決めちゃうよ‼︎」
[貴様が油断するからだろうが…固有魔法、超高速化…発動!]
ボルトが固有魔法の発動を宣言すると共に、雷葉の全身に稲妻が迸り、そして姿を消した。
《キ、キィ⁉︎》
「もう君の攻撃は当たらないよ。さよなら魔獣さん♪」
そう言って高速化した雷葉は、目にも止まらぬ超スピードで魔獣を縦横無尽に切り裂いた。
そして雷葉の姿が再び現れた時には、魔獣はバラバラに切り刻まれていた。
「雷神百烈斬…なーんてねっ」
バラバラに刻まれた魔獣はその場に崩れ落ち再び唯の魔力の粒子に戻っていった。
「おっと…いけない、いけない!魔力封印お願いねボルト!」
[全く…これだから貴様は面倒くさいんだ。一気に消滅させる魔法を使えばこんな事しなくていいのに。…魔力封印!]
ボルトの掛け声と共に、先程まで魔獣だった魔力の粒子は一つの石の様な塊になってその場に落ちた。
[これでこの魔力素は、二度と魔獣にはならないだろう]
「よしっこれで後は本部に戻って、みづきちを助けるだけだね!」
[あぁ…ん?本部からの通信だ。こちらボルト。要件はなんだ?]
『あ、ボルト?通信に出たって事は無事だったのね…良かった。雷葉ちゃんも怪我とかして無い?大丈夫?』
[大丈夫だって、相変わらず心配性だなぁ楓さんは…あれ?モニターがあるからこっちの状況って分かるはずなんだけど…まぁいいか。それよりそっちの状況は⁉︎みづきちは大丈夫なの?あたし達、早く戻った方がいいよね!」
『モニターならあの馬鹿が思いっきりぶっ壊していったわよ…あれ修理費、幾らかかる事やら…あ、後戻るのはゆっくりで良いわよ。初めての戦闘で疲れたでしょうし。こちらも解決はしたから』
「か、解決したって⁉︎だってあの子まだ殆ど素人だって聞いてたけど…」
『まぁこちらの事は、雷葉ちゃんが帰ってきてから話すわよ。それと…勝手に変身した事については立派な規則違反だからね。それ相応の覚悟はしといてね♪』
そう言い残し、楓からの通信は切れた。
「……なんか帰りたく無くなって来たんだけど…帰らなくて良いかな?」
[駄目だ。美月の様子が気になるからな…早く帰るぞ]
「そ、それも気になるけどさ…本当ボルトはみづきちが好きだなぁ。なんだか妬けちゃうよ」
[だ、だからそんなんではないって‼︎何度言わせたら気が済むんだ‼︎大体貴様は…]
「はいはい。もぅ照れ屋さんだなぁボルトは。さてそれじゃ愛しのみづきちが待つ本部に戻ろっか」
[だからっ愛しのとかそんなんじゃ…]
雷葉はボルトをからかいながら、本部へと帰る為に歩き始めた。
その顔には初めての勝利と、友人の無事の知らせのお陰か笑顔の花が咲いていた。
後編へ続く