第三話 初戦闘・・・無双ゲーの間違いじゃね?
あらかた調べ終わり、図書館を出ると辺りは日が沈み初めていた
「しまったッス!宿屋の場所知らないッスよ!」
誰かに聞こうにも運悪く周りには誰もいない
「・・・ちょうど良いでヤンス。少し町を見ながら探すでヤンス」
町を良く見ると剣や盾、ハンマー等の絵が書かれている看板が付いている建物があり、テイジからすると異世界というよりはゲームの世界に来たと考えた方がしっくりくる
「多分、武器屋に防具屋に鍛冶屋ッスね。RPGみたいでヤンス」
とかなんとか考えていると『INN』と書かれた看板があり、迷うことなく建物に飛び込んだ。すると歴戦の冒険者って感じの雰囲気を出している髭の濃いおじさんがカウンターに立っていた
「いらっしゃい。一晩素泊まりなら500バルだよ。食事付きなら700バルだ」
「食事付きでお願いするでヤンス」
「んじゃ宿帳に名前と部屋番号を書いてくれ。部屋は25番だ」
漢字の名前などこの世界には無いだろうと思い、テイジ・イナツキと書き、お金をはらい部屋へ向かった
部屋へ着くなりベッドに倒れ混んだ
「今日は疲れたッス。いつもならおやびんと一緒に帰って、課題をやって飯食って寝る、って感じなんだよな・・・俺本当に帰れるのか?」
精神的に参っているのか口調が崩れ始めた。やはり、なんだかんだ言いながらまだ学生なのだし、色々な事が一気に起きたので無理もないが
「とりあえず明日は武器と防具を見に行って、金が足りなきゃまた草むしりでヤンス」
ふいに扉を叩く音が聞こえたので扉を開けると髭のおじさんがお盆を持って立っていた
「はいよ。パンにベアラビットのシチューだ」
「ありがとうでヤンス。腹がペコペコでヤンスよ」
ベアラビットは確か熊みたいなウサギで、肉質は少し固めだと図鑑に書いていた気がするが、気にせず食べる。・・・うん、フツーに旨い。肉を単体で食えば少し臭みはあるが、シチューと一緒に食べると臭みが消え、またパンが良く合う
テイジが食べていると髭のおじさんが聞いてきた
「兄ちゃん、ここらじゃ見かけないな、観光かい?」
「いや、オイラ冒険者に憧れて村を飛び出して来たんでヤンス」
「そうかい。俺も昔冒険者だったんだが親父が倒れてな、冒険者をやめてこの宿屋を継いだんだ」
(何かいきなり昔話を始めた!)
「ん?あぁ、悪い悪い。兄ちゃんを見ていると昔を思い出してつい話し掛けちまったんだ」
「おっちゃんがオイラみたいだったんスか?」
「ああ。右も左も分からず四苦八苦しているのがな」
やはり歳をとっているだけあり、表情の変化にはよく気がつくのだろう。この宿屋に入った時のわずかな表情変化を見られたに違いない
「良く気が付くんスね。年の功ってヤツッス?」
「んー、どちらかと言えば経験だな。戦っている相手の細かな変化を見て次を予想するって事が基本だったからな俺は」
「へー、先読みッスか。オイラも一応武術をやってるッスけどまだ難しいでヤンス」
「ハハハ。まぁ戦ってりゃ自然と出来る様になるさ」
しばらく話していたが、おじさんは仕事に戻ってしまった
「今日は疲れたし、もう寝るでヤンス」
ベッドに入るとすぐに睡魔に誘われ、深い眠りに落ちた
朝、目が覚めたテイジは早々と宿屋を出た。目的は昨晩言っていた武器、防具を買うためだ
武器屋に入ると意外にもこざっぱりしていて、剣や槍や斧などのオーソドックスな武器が数本壁際に置いてあるのと、カウンターだけだった
「いらっしゃいませ。クレイマール武具店へようこそ」
カウンターでは、綺麗な金髪のお姉さんが接客をしていた。気のせいか客も男ばかりで武器よりもお姉さんを見ている様な・・・
「すいませんでヤンス。この店に剣か籠手はあるでヤンス?」
「剣は有るわよ。剣は片手剣?両手剣?もしくは刀?」
「とりあえず片手剣を見せて欲しいでヤンス」
そう言うと何処からか数本の小降りの剣を持ってきた
「見たところ駆け出し冒険者ってところね。予算はいかほど?」
「4000までッス。宿賃も残しておきたいでヤンスから」
「じゃあこのスチールブレードがお手頃ね。試しに振ってみて」
と、一本の剣を渡された。言われた通り振ってみると思ったより軽く、扱いやすい気がした
「これ気に入ったでヤンス。いくらでヤンス?」
「2500バルよ」
早速お金を払い、店を出た
「本当は籠手があれば一番よかったんスけどね。防具屋にならあるでヤンス?」
次は防具屋に入った。こちらも武器屋とあんまり内装が変わらず、武器の代わりに防具が置いている位だ
「いらっしゃい。クレイマール防具店だよ。ゆっくり見ていくといい」
こちらは黒髪のイケメンなお兄ちゃんが接客をやっていた。・・・周りの綺麗なお姉さん達が黄色い悲鳴を上げている
「すいませんでヤンス。グローブか籠手はあるでヤンスか?」
「あるよ。予算はいくらかな?」
「1500までッス」
「フム、見たところ駆け出しだね?更に武器はスチールブレードか・・・ならベアラビットの皮のグローブはどうかな?ベアラビットの皮は頑丈で柔らかく、使い込むと手に馴染む様になるよ。」
と言われて出された茶色いグローブを着けてみる。着け心地も悪くないし、指も半分出ているから動かしやすい。買わない理由はなかった
「いくらでヤンス?」
「2000バルだけど駆け出しの君の成功を祈って1500バルでいいよ」
心までイケメンだった、こりゃモテるわ。テイジは色々負けた気がしたので即座に払い店をでた。もちろんまけてもらったお礼は言った
再びギルドに行き、今度は討伐依頼を受けた。何でも昨日の森にコボルトが大量発生してるとの事らしいのでレベルアップもかねて受けた
「コボルトっていえば二足歩行の犬ッスよね?」
「はい。通常であれば脅威では無いのですが・・・数が多すぎるのです」
レベルが上がればまとめて倒せる魔法を作るから多分いけるだろうと思い、森に向かった
森に着くと見渡す限りコボルトしか居なかった
「何でこんなに居るでヤンス?昨日はスライムしか見てないのに・・・一体何処から?」
考えても仕方ないので、にわか仕込みの剣術で向かって行った
コボルトは即座に反応し、防御をしたがスチールブレードはコボルトを豆腐を切るように簡単に斬ってしまった
「予想以上の切れ味ッス」
切れ味に感心しつつ、走りながら適当に振り回した
瞬く間にコボルトの死骸で森が埋め尽くされていったが、一向に数が減る気配がない
10分位振り回していて、疲れ始めたが数はむしろ増えている気がする
「どうなっているでヤンス!?このままじゃスタミナ切れでフルボッコ確定でヤンス!」
なるほど、数が多すぎるとはこういう事か。テイジは少し後悔した
「休もうにも森は埋めつくされているでヤンスし・・・ん?そういえば何で森から出てないんでヤンス?」
そう、文字通り森はコボルトで溢れかえっているのだが、森の外には見当たらないのである
「普通これだけいるなら外に出る個体もかなりいるはず・・・縄張りだと仮定してもこれはおかしいでヤンス」
取り敢えず確かめるために森を出てみると、先ほどまで敵対していたコボルト達が恨めしそうに睨みながら森の中で唸っている
「何でかは知らないでヤンスが今のうちに魔法を作ってみるでヤンス」
レベルを確認するとなんと13になっていた
「これならある程度強いの作れるでヤンス?」
爆発系は森が無くなるからアウト、炎系も同じくアウト、と考えながら考えた魔法は一定範囲の生物の重力を操作するというものだ
「これなら多分被害も少ないし、レベルも消費が少ないはずでヤンス。・・・叫べば使えるでヤンスかね?『創造魔法』!」
すると体が光り、力が溢れるのがわかった
ステータスを確認するとレベルが5にまで減っており、代わりに『重力操作LV.1』が増えていた
「魔法はよく分からないでヤンスが、要は気持ちの問題のはずでヤンス。範囲を森だけに絞ると考えるッス!」
森だけに意識を集中し、魔法を唱えた
「『重力操作』!30倍の重力になるッス!」
体から力が抜ける感覚があったと同時に森からグチャッ、ブチィ、メキメキなどの音が聞こえ、コボルト達の悲鳴が聞こえたと思ったら森が血の池に変わった
森に入るとそこらかしこに肉片が落ちていて足の踏み場もなかった
「やり過ぎたッスかね?っとそういえばモンスターの特定の部位を持っていくと追加報酬が出るはずでヤンス。コボルトは・・・たしか牙ッスね」
これは間違いでモンスターの遺体は全て買い取りされるのだ
森の中心にいくと不思議なものを見つけた。それは模様の描かれた、腰ぐらいの高さまである石の柱だった
「何でヤンスかね?これは。とりあえず壊しとくッス」
テイジは柱を持ち上げ、そこそこ大きな石めがけて石の柱を投げつけた。当然真っ二つに割れた
「とりあえず依頼は完了でヤンス。報酬はいくらでヤンスかね」
帰りに何気なくステータスを見ると色々増えていた
NAME テイジ・イナツキ
SEX MALE
AGE 17
LEVEL 18 NEXT 28430/32300
HP 70/340
MP 200/3000
HEAD ---
BODY 襟詰め学生服
LITE ベアラビットの皮のグローブ・スチールブレード
REFT ベアラビットの皮のグローブ
LEG 学生ズボン
FEET 運動靴
ACCESSORY ---
SKILL・MAGIC 『創造魔法LV.1』『自己流武術LV.3』『重力操作LV.2』
TITLE 子分気質・異世界の勇者(仮)・駆け出し冒険者・成り立て創造主・コボルトハンター
「MPスッゴいことになってるー!」
自分の変わりように驚きの声が空にこだました
テイジくん無双の始まりの予感・・・
こんな予定じゃなかったんです。勝手に世界が動いて話が変わり始めたんです。
とにかく次回、冒険へ行くかも?