第二話 ギルド、クエスト、カウンターにて
無我夢中で走っていた禎司はいつの間にか外にいた。そして後ろには大きな城が建っていた
「やっぱりお城だったんスね。ってことは目の前には城下町が・・・」
広がっていた。ただし地平線が見えないほど大きく、高い壁と共にだが
「まるで棺桶、いや牢屋か鳥かごでヤンス。こんなところに居たら気が滅入りそうッス」
見たところ戦争が始まるから急いで建てた訳では無さそうだが、何故こんな壁がいるのだろう
(考えても仕方ないでヤンス。まずは異世界にはあるはずのギルドと図書館を探すでヤンス)
城下町に行くと以外と活気があり、まさに映画の中世ヨーロッパを思わせる町並みで、人々も思ったよりも壁を気にしていない様である
とりあえず道行く厳つい男に声をかけてみる
「あのー、この町にギルドと図書館は無いでヤンスか?」
「あ?何だ兄ちゃん。田舎から出稼ぎか?」
いえ、異世界人です。とは言えないので適当に話を合わせる
「違うでヤンス。オイラは冒険に憧れて村を飛び出して来たんでヤンス」
「ほー、んじゃその奇妙な服は田舎のかい?」
すっかり忘れていたが自分の服装は学ランのボタン外しルックで、確かにこの世界からすれば異服だろう。ついでに自分は茶髪のボサボサヘアーで、ヤンキーに見えるので嫌だったりする
「あー、お袋が作ってくれたんでヤンス」
「いいお袋さんだな。っと図書館はあの一番デケー建物でギルドはあの青い旗が上ってる建物だ」
「どうもでヤンス」
お袋さんを大切にしろよー。と言う男を後にしてまずはギルドに向かう
ギルドに入ると受付カウンターへ向かうと受付嬢が
「ようこそいらっしゃいました。ご依頼ですか?」
と、笑顔で聞いてきた
「依頼を受けたいんでヤンスけど、なにぶん初めてなもので。どうすればいいでヤンスか?」
「冒険者登録ですね。ではこちらをどうぞ」
と言われて渡されたのは少し小さめの透明なクリスタルだった
「なんでヤンス?これは」
「こちらは冒険者、つまりギルド利用者のランクおよびステータスを見る事が出来るギルドクリスタルです」
ステータスときたか。これではファンタジーと言うよりゲームだな。と思ったが顔には出さず
「ランクにステータスでヤンス?」
と聞いておいた
「はい。今のままではただのクリスタルですが、後程冒険者登録が行われますと、持ち主のギルドランクを色で表してくれたり、ステータスを表示するようになります」
「紛失したらどうなるんスか?他人にステータスを見られるんスか?」
持ち主のステータスが表示されるとなると、落とした場合危険なのではないかと心配になった
「紛失した場合、ギルドに言っていただければ新しくお渡ししますし、クリスタルは現在持っている人で、なおかつ冒険者登録をされている場合にのみ効果を発揮しますので、他人にステータスがバレることはありません」
「便利でヤンスねー」
「質問は以上ですか?以上でしたら登録に移らせてもらいますがよろしいですか?」
「もう1つあるでヤンス。ランクってどう分けられてるでヤンス?」
「はい。ランクは上からSS・S・A・B・C・D・Eと分けられており、クリスタルでは下から赤、オレンジ、黄、緑、水色、青、紫と発光するようになっております。また過去に伝説と呼ばれた冒険者14名が虹色のクリスタルを発現させており、そちらはレジェンドと呼ばれ、未来永劫ギルドに名前を刻むらしいですよ」
男ならレジェンドを目指したいが、今は一刻も早く元の世界に帰る為に旅の金を貯めなくてはいけないのだ
(なんせ自力で別の国に行かなくちゃいけなくなっちまったッスからね)
「もう質問は無いでヤンス」
「かしこまりました。では登録させて頂きます」
すると受付嬢は魔方陣を書いた紙をカウンターの上に置いた
「こちらに手を置いて頂きましたら完了でございます」
「早いッス!もっと面倒かと・・・」
正直ロマンも何もあったものじゃないッスよ。と思いつつ手を置いた。すると魔方陣がわずかに光り、手のひらが温かくなった
一瞬の後に光はおさまった。そして紙は受付嬢に回収され、登録完了だと言われた
「そういえばステータスはどう見るんス?」
「クリスタルを持ち、開示と言って頂ければ見れます」
ステータスは誰も居ないところで見よう。と思いながら武器が必要無さそうなキュアフラワーを集める依頼を受けた
キュアフラワーは白いつぼみ状の花で、あらゆる回復薬の調合材料らしく、需要は無くなる事はなく、多ければ多いほど報酬も増えるので駆け出しには持ってこいの依頼らしい
町を出て10分ほど歩いたところにキュアフラワーの生えている森が見えてきた
(森の中でステータス見てみるでヤンス)
更に5分ほど歩いた所の木の影に座りクリスタルを出し
「開示」
そう呟いた瞬間、クリスタルからパネルのような立体映像が出てきてステータスが表示された
NAME テイジ・イナツキ
SEX MALE
AGE 17
LEVEL 1 NEXT 0/10
HP 100/100
MP 40/40
HEAD ---
BODY 襟詰め学生服
LITE ---
REFT ---
LEG 学生ズボン
FEET 運動靴
ACCESSORY ---
SKILL・MAGIC 『創造魔法LV.1』『自己流武術LV.3』
TITLE 子分気質・異世界の勇者(仮)・駆け出し冒険者
「お、なんかVRゲームみたいでヤンス。ってか何でヤンス?この『創造魔法』って」
試しに文字を突っついてみると、詳しく表示された
『創造魔法LV.1』 NEXT 0/100
レベルを犠牲にすることにより、魔法を生み出す事ができ、一度生み出せば通常の魔法と同じくMPを消費し、発動出来る。更に、生み出す魔法が強力で有れば有るほど消費するレベルが増える。但しこの魔法により自身のレベルが1を下回ることは無く、1の場合は使うことが出来ない
・・・これは俗に言うユニークスキル、もしくはチートスキルと言うのでは無いのだろうか。少し痛い代償はあるが中々にヤバいスキルだ
「・・・まあ、考えてても仕方ないでヤンスし、依頼をクリアして宿賃を稼ぐでヤンス」
そう言いながらキュアフラワー集めを始めた
1時間位たった頃だろうか、あらかた集め終わったので帰ろうと思っていた矢先だった。急に木陰から何かが飛び出して来たのだ
「なっ、なんでヤンス!?こいつは!」
飛び出して来たのは溶けた緑色のゼリーの様なモンスターだった。もしも自分のゲーム脳が正しければ恐らくスライム系統のモンスターだろう
「毒の無いタイプなら良いんスけど・・・」
コレがゲームなら考える時間は無限に有るが、今は現実で一瞬の油断が命取りになるかも知れないので逃げる事にする
「三十六計逃げるにしかずってことわざもあるでヤンスし」
クラウチング姿勢を取り、全力で駆け出した
命が懸かってるからか、それとも幼い頃から続けてきた武術の特訓のお陰か、10分ほど掛けてきた道を3分で帰れた。今なら学校一になれる気がする
そんなこんなでギルドに戻り、報酬を貰いに来た
「あら?ずいぶん早いですね」
「ちょっとモンスターに遭遇したんで早めに切り上げてきたんスよ」
「そうですか。それは災難でしたね」
等と話しながらキュアフラワーを渡す
「まぁ!依頼の数の3,4倍はありますね」
「草むしりは得意だったんで30束ぐらいなら軽いッス」
受付嬢が束を数え終わると
「では、こちらが通常報酬の2000バルに追加報酬の4000バルになります」
どうもッス、と言いながら出された銀貨数枚をポケットにしまいながらギルドを出た
「まだ日も高いし、図書館に行ってこの世界の常識を学ぶッス。それにお金の事も調べないと・・・小学生以下の勉強をするなんて思わなかったッスよ」
等と呟きながら少し重い足取りで図書館に向かった
図書館に着くなりお金の本に世界史の本にモンスター図鑑を探し出し読んでいた
「文字も日本語で助かったでヤンス。もし分からない言語なら野垂れ死にするとこだったでヤンス」
お金は白金貨、金貨、銀貨、銅貨、とあり、銅貨のみ大、中(通常サイズ)、小とあるらしい。銅貨は大が100バル、中が10バル、小が1バルとなっていて、銀貨は1000バル、金貨は10000バルになっている。白金貨は金貨100枚分の値段であるが、そうそう世に出るものではない
世界史は正直国について知れれば良いのでそこまで真剣には読まなかった
モンスター図鑑は頭に内容を叩き込んだ。そして森で出会ったモンスターについて見ていた
「やっぱりスライムだったでヤンス。しかも毒も何もない奴」
倒して経験値にすれば良かった、と後悔した
あらかた調べ終わると、ステータスについて調べ始める
「TITLEって多分称号ッスよね?装備したらステータス変化があるゲームが有るからその系統なら良いんスけど」
どうやら称号は誰かに呼ばれたり、ある条件を充たすことで入手出来るらしい。称号は装備する必要がなく、入手した時点で効果を発揮し、現在ある称号より高いランクの称号を手に入れた場合低いランクの称号は消えるらしい
「(仮)が消えるって感じッスね。まさにゲームでヤンス」
次は魔法の本を探すが、自分に分かりそうなのが『スライムでも分かる!魔法・技入門』だけだった。泣きたい
「オイラスライム以下ッスか?・・・まぁ仕方ないでヤンスよね?」
自分を慰めながら魔法について調べる
魔法とは、炎、水、風、氷、土、雷、光、闇の属性を持ち、人によって得意な属性がある。また、高位魔法では複数の属性を合わせたり、高位属性の時魔法が使えるようになることもある
魔法は誰もが持つが、機械である『機械族』と獣である『獣人族』は使うことが出来ない。稀に使える『獣人族』が確認されているが、なぜ使えるかは謎である。更に悪魔である『悪魔族』や、妖精の『妖精族』は得意であり、効果も我々『人間族』よりも強いが、それぞれ、各属性のうち一つしか使えない。
もちろん魔法にもレベルがあり、レベルが上がれば威力も上がる。単純に敵を倒すだけでも経験値は入るが極々わずかしか入らず(10000の経験値で魔法経験値は1しか入らない)、使った方が経験値が入るので使うことをオススメする。
「使った方って言うか使わなきゃレベル上がらないのと同じでヤンス・・・10000で1っておかしいでヤンス。お?この項目は興味があるでヤンス」
また、まれにユニークスキルというものを持つ人がいるが、これは生まれついての固有能力であり、後々使える様になるわけではない。このユニークスキルは基本的には強力な魔法や技であるが使える人が少ないので、軍に入れば隊長間違い無しだろう
「説明少ないでヤンス・・・ユニークスキルって事もあるでヤンしょうが、もしや魔法よりも技がメインの世界なんスかね?」
そこで再び技について調べる
技とは、武器を使ったいわゆる必殺技的なものである。基本は属性がなく、レベルにより威力が上がり、経験値は魔法と同じ感じだ!
「・・・適当過ぎない?」
思わず語尾を忘れてしまうほど適当な説明だった。
この話以降、禎司はテイジと表示します。
異世界だったらカタカナだよね?