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机上の机  作者: 戸倉宝
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閉された世界観と変われない日常

「人間関係のリセット」田舎でこれ程難しい無理難題もないのではなかろうか。


田舎というのは人が少ない上、昔ながらのよく言えば地域の絆が、悪く言えばムラ社会の傾向がすごぶる強い。

人の情報というものが、真偽を問わず物の見事に共有される。

それは、絶対数の少ない若者になればなおのことであり、なおかつここは只の田舎ではない。


少子高齢化率全国ワースト10位の、人口減少と過疎化がこれでもかと進みに進んだ消滅寸前の田舎町である。


殆どが1クラス分の人数さえギリギリの小規模校であ

り、そのうちの結構な数のところは生徒数のの都会では考えられない少なさゆえに、複式学級という2学年をまとめて1人の教師が教えるという無茶な事をやらないといけない。


それは中学校までの人間関係の絶対的な継続であり、世界観の極端な狭さを示す。


だから、これが高校に変わったところで変化はあまり望めない。


田舎のそのような気質と殆どの奴が地元の公立校に進学するせいで、イメチェンでもしようものならあっという間に情報の共有が行われる。それはだいたいどんなにうまくいっていようが、そいつは元の自分に引き戻させられる。


『変わりたい』そんな願いなど、集団の圧力の前には無に等しい。無駄に等しい。そいつがどんなに頑張っても周囲にとって都合の良いようにしか解釈されず、そこから先は何もかもに乾いた笑いが出てくるだけだ。


殆どの人々が望むのは『自分にとって』の平穏な日常であり、多くは変化を良しとしない。





その平穏な日常が、例え如何に歪んで、おかしなものであろうとも。















目を開けるとそこには幾何学的に配置された机と椅子に座ったクラスメイト達が、怪訝そうな目で俺を見ている。

ここはどこだ?いや、俺はさっきまでそもそもどこに……。

「あれ〜?敦君また寝ちゃってる?ダメだよ、起きとかないと!まぁ、私の授業はつまらないものでありましょうけど!」

やばい、完璧に寝落ちした。良かった先生が、恐ろしい奴じゃなくて…

じゃない!あいつは国語の平山早苗だ!

「先生〜、志木は先生が見えなかったんじゃないですか⁉︎」

クラスがどっと湧く。

「だからぁ、お前ら私をどんだけ小さいとおもってるんだっ!」

うん、絶対に顔で年齢を当てるのは不可能な童顔に小さな身長と、凹凸の少ない体つき。まぁ見た目は、控えめにいって天使である。

顔は本当に幼いが目がクリクリととにかく大きく、頰は白くまるい。天然物の茶髪から分かるように色素は抜けるように薄く、100人中100人がかわいいと思うだろう。

だが「敦君後で来なさい!先生は怒ると怖いからな〜」

やべぇ、なぜあんな可愛らしい表情と声で怒りを伝えれるものなのか。目がメラメラとに燃えているのに、こちらには凍てつくような冷気しか来ない。お前ら、せんせーかわいーとかいってんじゃねーよ!こっちはこれから殺されにいくんだぞ!そんな事を思いながら、小さくハイと返事をする。




俺は自分の運命を悟りながら午前中最後の、いや最期の授業を聞き流した。


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