湯あみと夫婦
「そのまま入ってきちゃったけどフィナの後にしたほうがいい?」
「え?どうして?」
「ほら、一応は元男だし」
「いいよいいよ、マオはこんなのじゃ動じないでしょ?」
「ん~…悲しいことにうんともすんとも…」
「あはは…」
「でもフィナも恥じらいくらいは持ったほうが」
「マオ以外の前じゃちゃんとします」
「ならいいけど~」
湯あみ場は脱衣所と浴室でできているが内装はかなり和風だった
「ねぇ」
「言わないで、なんか伝わるような気がするから」
「今まで洋風なとこにいたはずなのにカムバック日本みたいになってる」
「マオが元いた場所ってこんな感じだったの?」
「あ~銭湯ってとこがこんな感じだったかな」
「へ~落ち着く雰囲気だね」
「そういえばちょくちょく知らないはずのこと知ってるけどフィナ達と似たとこでもあるの?」
「えっとね、マオと私の心が一つになってるから意識して知ろうとすれば一般常識とか軽い情報はわかるんだよ」
「へぇ~」
とアニメとか漫画ならここでカポーンという音でも入りそうなものである
「ってそれどういうこと!?最初に言わなかったよね?!」
「えっとその何と言いますでしょうかやってみたらできてしまったといいましょうか…」
「できればそういうのは教えてほしいよう」
「ごめんなさい」
「でもそれなら口に出さなくても意思疎通可能?」
「そこまで行こうと思うともっと深くお互いに信頼しないと…」
「まぁ、会ってすぐの人間を信頼は難しいよね」
「そう、ですね…」
「そのうちなんとなるさ」
「はい…」
外は至って中世みたいな雰囲気なのに水道とかいろいろ整ってるのがアンバランスなのかバランスなのか
「ところでさっきの模擬戦のことなんだけどね」
「どうやったのかってやつでしょ?」
「うん」
「あれはアニメで見たキャラクターの動きをイメージしただけなんだよね」
「スキル使ったの?」
「使うっていうのを意識しながらイメージするとまんま身体が動くみたい」
「なら手の怪我は?」
「向力奪与で拳にかかる分の力全部返しちゃうと盾貫通してジョイフルさん死亡とかありえたから…」
「なるほど、調整は必要そうだね」
「さすがに鋼の肉体にはなってないみたいだからね」
「そのへんは頑張って」
「へいへ~い、んじゃ出ようか」
「うん」
何気なにし風呂に入って出てきたが着替えるものがないと普通なら思うだろうだがこの湯あみ場の脱衣所はかなり高性能なようで脱いだ服を入れる籠にReinigung{洗浄}の魔法が付与されているらしく綺麗に洗濯されていた
「あ、ジョイフルさん、お待たせしました」
「ううん、俺も今出てきたところさ」
「どこかうつ伏せになれるところありますか?」
「休憩所兼仮眠所があるからそこなら寝れるよ」
「一応はさっきのお礼ということでマッサージして差し上げますよ」
「おぉ!美少女からのマッサージとは役得だねぇ」
「ジョイフルさんは仕事はいいんですか?」
「ははは!フィナちゃんそういう固いことはいいのだよ」
「それってサボリなんじゃ…」
「ま、人では足りてるし俺の残りの仕事はちょっとした報告事項のまとめだけだから後でもいいんだよ」
「ならいいですけど」
「そんじゃさっさといこか」
「なんかマオちゃん雰囲気柔らかくなった?」
「?、そんなことないと思いますよ?」
「もしかしてお風呂好きなの?」
「嫌いな人はいないと思いますよ」
「ははは…」
このときのマオの表情が若干にこやかだったのをわたくしことフィナは忘れない
「で、ここが休憩所兼仮眠所だよ」
「それじゃ始めるのでうつ伏せで寝てください」
「一応聞いておくけど大丈夫なの?」
「たぶん大丈夫です」
「それ結構怖いんだけど」
「それじゃ行きます」
それからしばらくジョイフルの嬌声が廊下まで響いて何人かが覗きに来ては
あっ…(察し)
という表情と羨望、嫉妬の混ざった表情で見ては去って行った
それからマッサージが終わったのは約45分後のことだった
「あ゛あ゛あ゛~」
「どうでしたか?」
「すごいとしか言えないね、身体が軽い、こんなこと初めてだ、いまならなんだってできる」
「それ死亡フラグですよ?」
「?」
「マオ、マオ、あとで私にもお願い」
「別にいいけど」
とそこでガストさんが顔を覗かせた
「お、聞いた通りここにいたのか」
「あ、ガストさん」
「お疲れ様です、お仕事は終わりましたか?」
「あぁ、二人ともこいつに変なことされてないか?」
「大丈夫ですよ、とても親切にしてくださいました」
「ちょっとおっさん、俺がモテモテだからって嫉妬しないでくれます?」
「俺には妻がいるからな、その歳で独身なお前と比べるんじゃない、それじゃ家にいこうか」
「はい、よろしくお願いします」
「ジョイフルさんもありがとうございました」
「あいよ、またなんかあれば是非頼ってくれ」
ジョイフルさんや騎士の方々に挨拶をすませてガストさんの家に向かった
「一応、巡回の途中に連絡はしたおいたからな、今夜は歓迎会だって大はしゃぎなんだ」
「すみません、突然なのに」
「いや、構わんさ、それに人生っていうのはどんなとこでなにがあるかわからん、いつかは俺たちが君に助けられるかもしれんからな」
「この恩は必ず返します」
「いつか覚えていたらでいいさ、さ、ついたぞ」
そういってガストさんが立ち止ったのは街で見た中でもひときわ大きな屋敷だった
「え?」
「すごっ…」
「そういってもらえるとありがたいなこれでもそれなりの出身だからな」
「もしかして有名な貴族なんですか?」
「貴族っちゃ貴族だな、一応家名はスカーライクってんだ」
「はぁ~」
「すごい」
玄関を抜けるとそこにはメイドが4人と執事さんと奥様とお子さんらしき人が立っていた
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「あなた、お帰りなさい」
「パパ!お帰りなさい!」
「すごい、リアルメイドとリアルショタだ」
「え?」
「いえ、なんでも」
「お二人が夫の話していた迷子さんですのね、私はこの人の妻であるグラッチェと申しますこっちは息子のリッカペーニといいます」
「初めまして、僕はリッカペーニといいます」
「は、はい、突然押しかけてしまってすみません、私はフィリナリスといいます、こっちは」
「マオンっていいます」
「二人とも礼儀正しいのね、大歓迎よ!この屋敷は部屋が余っていますし、私もあなたたちみたいな若い女の子たちとお話ししてみたかったの」
「え、奥様も十分にお若いような」
「そんなことありませんよ、私なんてもう37ですのよ」
「「え?」」
驚愕以外の何物でもない一言であった
37と言った奥様の見た目はパッと見で女子高生と言われても全く違和感のないレベルだった
「(ガストさん、本当ですか?)」
「(本当だ、俺と結婚してからこれまでこれっぽっちも変わってねぇ)」
「あなた!なにをコソコソとされていますの?」
「い、いや、嬢ちゃんが若さの秘訣が気になるみたいでな」
「あら、そんな私がまだ美少女だなんてお恥ずかしい」
「満更でもないのね…」
「かわいいだろ、俺の嫁なんだぜ?」
「お世話になるって言っといてなんですがすっごくノロケが…」
「あなたもあの頃からかっこいいままではないですか」
「褒めすぎだぜ、お前の方こそあの頃からずっと綺麗でかわいいまんま、いや今も最高に愛してる」
「マオ…今なら私砂糖吐けそう…」
「安心してフィナ、私も吐けそうよ…」
褒め合いノロケ話から戻ってきた二人をメイドと執事とリッカペーニがいつものこととでもいうような表情で見ていたからいつものことなのだろう
「お二方とも、これからよろしくね」
「おう、自分ちだと思って寛いでってくれよな」
「「ありがとうございます、よろしくお願いします」」