塔の街「エルッフェ」へようこそ
ガストさんと昼食という名の朝食を食べ終えたあとはガストさんの仕事が終わるまで一緒にというわけにもいかないので騎士たちがいる詰所の中を見て回ることにした
「俺はこれから街のパトロールに行ってくる、この敷地内だったら見て回っても構わんから夕刻まで時間を潰しといてくれ」
「はい、お気をつけて」
「お勤めご苦労様で~す」
「おう、じゃあな」
ガストさんを見送って食堂を出る
「さて、まずはどうするね」
「う~ん、私がいた時代と常識とかいろいろ違うからそういうの調べよ?」
「そだね、となると図書室みたいなとこかな」
「さっき来る時に資料室ならあったけど」
「それ関係者以外が見たらまずい奴だから多分駄目だよ」
「だよね」
二人でどうしようかと考えていると前からジョイフルさんだった
「や、お二人さん、食事はすんだかい?」
「あ、はい」
「はい、とてもおいしかったです」
「そうか、ならよかったよ、ちょっと調書と珍事件で時間が掛かりすぎてしまっていたからね」
「いえ、お気になさらないでください、私たちは助けてもらっただけでもありがたいんですから」
「もしかして珍事件ってあのドナなんとかさんのこと?」
「あぁ…マオちゃんには悪いことしたね、普段はいい人なんだよ?、ただ子供が大好きなんだ」
「それって結構問題なんじゃ…」
「それでも一応はこの街の市長だから…」
「そういえばまだ街の名前を聞いていませんでしたね」
「あぁ、君たちはここを知らなかったね、こんなタイミングでいうのもなんだが」
そこまで言うと区切ってお辞儀をして
「ようこそ、塔の街エルッフェへ、君たちの来訪を歓迎する、汝らに幸あれ」
「おぉ、騎士っぽい」
「いや、ぽいじゃなくて騎士だから」
「なんかかっこつけたのにあんまり受けなかった…」
「いや、ちゃんとかっこよかったですよ!ね?マオ」
「あ、はい」
「おざなりだぁ…」
「というのは置いといて、ジョイフルさんジョイフルさん、私たちできれば本かなにか読んで時間潰したいんですけど」
「あぁ、それならそこにある読書室のを読んでいいよ、ほとんどがみんなの持ち寄りだからそれなりに面白いと思う、っていうか君たち字が読めるんだね」
「はい、一応ですけど」(やぁっべぇええええええ!しくったぁ!識字率とか考えてねぇべ!)
「知識が大いに越したことはないですから」
「そうだね、もし余裕があったらこの先にある訓練所においでよ」
「はい、ありがとうございます」
読書室のある廊下の先へと歩いていくジョフルさんにお礼を言って本棚を覗くと
「一応文字は読めるのね」
「うん、こっちに引っ張ってくるときにこういう情報も入るようになってるから」
「そこにこっちの知識を織り込むのはできなかったの?」
「ちょっとそこまで手が回らなくて…」
「まぁまぁ、なら仕方ないよ、それに頑張ってくれたおかげで文字や言葉で苦労しないで済んでるんだし」
「ただ識字率は考えてなかったよ」
「それね、内心焦って危なかったよ」
その後いくつかの本を漁っていたが大体が魔法や魔術、剣術などに関する指南書で対して時間を潰すことができなかったがフィナは違ったようだ
「ちょっと飽きてきちゃったから訓練所見に行かない?」
「ちょっと待って、この魔法と魔術についてなんだけど」
「えっと、魔法とは空気中と体内魔力を意のままに操ることができて魔術は儀式や魔術陣、魔術回路を介して体内のみの魔力を操ることができるだっけ」
「よく覚えてるね」
「この身体のおかげか目を通すだけで大体理解できるっぽいからね」
「でね、この魔法なんだけど」
「フィナ達の詩詠みに似てるよね」
「そう、でも星霊さん達と契れるのは女性だけだし名の通り詩を詠まないと使えないの」
「となると別物だと?」
「多分そうだと思う」
「でも魔法や魔術があるならなんで詩詠みが出てきたんだろ、そっとのほうが便利だろうに」
「なにかあるんだよ、魔法や魔術が使えなくなったか使わなくなったなにかが」
「その辺は後々だね、今は訓練所いこうよ」
「マオは飽きただけでしょ…」
「わかる?」
「そりゃあね」
「さて、すみません、ジョイフルさんいますか?」
訓練所と書かれた看板の奥に入り番頭みたいなところにいるヤクザもびっくりな顔したおっちゃんに声を掛ける
「おう、いるぜ、おい!ジョイフル!かわいい嬢ちゃん達から指名だぞ!」
「は~いはいはい」
「はいは一回」
「マオちゃんはお母さんみたいなことを言うね…」
「あ、やっぱりどこのお母さんも言うんですね」
「まぁね…で二人とも読書に飽きて見学に?」
「それと体を動かしに」
「ん~別にいいけどなにするの?」
「ちょっとでいいから相手してほしい」
「いいけど、獲物はなに使う?」
「手甲とナイフを貸してほしいんだけど」
「それでいいの?」
「うん、あんま重いのだと振り回されちゃうから」
「フィナちゃんは?」
「私はそういうの苦手で」
「じゃあ見ててよ」
「よし、じゃあ受けてあげるから好きに仕掛けてきていいよ」
「りょーかい」
軽く準備体操をして手甲とナイフを装備してちょっとした戦闘力の確認を始めた