神殿騎士(仮)と迷子
「これ多分下へのエレベーターじゃないか?」
草原の真ん中、自分たちがいた場所のすぐそばに円形のでっぱりがあった
「こういうのって踏んだりすると降下したりなんか仕掛けが作動したりするんだよな」
思い出すのは人間性を捧げて絶望をくべるようなゲームでかなりよく見たエレベーター
隣の少女はまさに「え?そうなの?」とでも言いそうな顔でそれを見ている
「乗ってみたいけどその先になにがあるかわかんないからなぁ、私はいいけどフィナに何かあったら危ないし」
「マオがびゅっといって帰ってこればいいんじゃない?」
「離れてる間にフィナになんかあったら困るんだよ・・・」
「マオのスキルで私も守れないの?」
「あ~、ちょっと試してみるか」
そういいながらフィナの周りにバリアを張れないか試してみる
「おっ!張れた、意識すればバリア張りっ放しもできそう、ついでに浮かんでみよう」
「え?わっ」
言うが速いかフィナが少し浮く
「も、もうちょっと間を置くとかして心の準備とかさせてもらえないかな!?びっっくりするから!」
「ごめんごめん♪」
「誠意が感じられないよ!」
「でも急に何かあったらやるからね」
「それはわかるけど、今はそんなでもないんだからさぁ」
「ごめんごめん、じゃあ次は手を繋いで」
フィナを降ろして手を繋いでバリアを張って浮かぶ
「このふわふわした感じ、ちょっと苦手・・・」
「わかる、なんかしっくりこないっていうか不安な感じするよね」
そのまま上昇や移動ができることを確認したら今度こそエレベーター(仮)のスイッチらしき円盤に乗る
「「せーの」」
ガコンという音と共に円盤の半径2mくらいが下に降りていく
「そういえばフィナがここに来た時はどうやって登ったの?」
「私たちの頃には外側にエレベーターがあったの、真ん中のところには詩詠みの巫女が乗る台があってこんなのなかったんだよ」
「なにかがあってこのエレベーターが使えなくなったか真ん中を使いたいからエレベーターを使えなくしたのか」
「多分真ん中を使いたかったんだと思う」
「だろうなぁ、広場で祈るって言ったらやっぱり真ん中だよなぁ」
そうしてどれだけ降りただろうか、周りが壁とたまにある不思議な明かり以外何もないので暇になってしまった
「これどれだけ降りるんだろうなぁ」
「どうだろうねぇ」
これがフラグだったのか周りが開けて広い場所でエレベータが止まった
「お、止まったな、円盤が上がってきてるし、ここがこのエレベーターの終点か」
「そうみたいだね」
周りには柱が何本も並んでいるがその隙間から見える外はここがまだ高所だと言う様に雲と青い空しか見えなかった
「また降りれそうな場所探さないとな」
「うん、また二手に分かれる?」
「いや、一緒に探そう」
「もしかして怖がり?」
「もしかしなくても怖がりよ、そうじゃないとなにがあって怪我したり死んだりするかわかんないじゃん」
「スキルがあるのに?」
「スキルに頼りっ放しだと、いざというときに慢心して痛い目を見たりするからね」
「おちゃらけてるのにしっかりしてる~」
「ふふん、しっかり者だろ!褒めてもいいのよ!」
「そうでもない」
「ガックシ」
そんなやり取りをしながら柱の並ぶ広間を歩いていくと
「おい!貴様ら!ここでなにをしている!」
まさに神殿騎士です!とでも言わんばかりの格好をした厳つい人がいた
「やった!フィナ!人だよ!人がいたよ!」
「え?え?」
「いいから合わせて」
小声でフィナに伝えて神殿騎士(仮)のほうへ行く
「おい!質問に答えろ!貴様らはここで何をしている!」
「助けてください!私たち気がついたらここにいて!」
「よくわからなくて迷ってたんです!」
「ふざけるな!ここは神詩の塔だぞ!ここに一般人が入ることは許されていない!どうやってここにきた!」
「ふざけてなんていません!本当に気がついたら二人でここにいたんです!」
「そうです!だからどうやって降りればいいのかわからなくて・・・」
フィナが涙をいっぱいにして神殿騎士(仮)に縋りつく
「ありえん・・・だが侵入者が入ったという報告もない、わけがわからんがこのままここにいさせるわけにはいいかん、ちょっと待ってろ、応援を呼ぶ」
「「ありがとうございます!」」
「わかった!わかったから俺の法衣で涙を拭くな!鼻をかむな!おい!そっちの妹!姉をなんとかしろ!」
ありがとうございますといいながら神殿騎士(仮)さんのひらひらした白い布で涙を拭いて鼻をかむフィナにかなり慌てて私に助けを求める神殿騎士(仮)さん
「す、すみません!こら!フィナ!離れて!」
「ご、ごめんなじゃい!」
「はい、これで、チーン!」
「おまえらどっちが姉だよ・・・」
140くらいの少女が160の少女を介抱いているという構図に厳しそうな神殿騎士(仮)さんも毒気を抜かれたように呆れている
「えっと応援を呼ぶって言ってましたけどここからどうやって呼ぶんですか?」
「なんだ、知らんのか、俺たち神殿騎士は魔法が使えるからな、念話が使えるんだ」
「魔法が使えるんですか!?すごいです!」
「マオ、ありがと、もう大丈夫」
「ん」
「お前ら本当にどうやってここに来たんだ?」
「わからないんです、気がついたら妹のマオと二人でこの奥のとこで倒れてたんです」
「誰かに連れてこられたってことか?」
「多分そうなのかな?」
「それ私に聞くの?」
「こうなってしまった以上は仕方ない、下まで連れて行って調書とったら帰らしてやる、お前らはどこの出身だ?」
「それが・・・」
「私たち、故郷がわからなくて旅してたんです」
「ほう、その歳でか」
「うん」
「そりゃあ、大変だったな、なんか目星になるとこでもあんのか?」
「いえ、手掛かりがなくて・・・」
「それに荷物もなくなってしまったし」
「あ~」
「お~い、ガスト!その二人が例の迷子かい?」
神殿騎士(真)さんがなんともいえない表情でいたところでその後ろから声が聞こえた
「ガスト?」
どこかのファミリーなレストランの名前まんまだがこの神殿騎士さんの名前だろうか
「あぁ、名乗ってなかったな、俺は神殿騎士隊副隊長のガストだ」
「そして俺が隊長のココスだ」
なんということでしょう、ファミリーなレストランな神殿騎士さんが+1です
「大体のことは念話で聞いてた、誘拐からの放置の迷子だなんてなかなかに災難だったな、だが安心しろ、しばらくはこのガストが面倒見てくれるから」
「は!?隊長!?俺引き受けるって言ってませんでしたよね!」
「いいだろ別に、お前の家広いんだし、それにこんなかわいい子たちを見捨てるなんてなぁ!」
「えっと、そこまでしてもらうのはご迷惑なんじゃ」
渾身の上目遣いでファミレス副隊長を見上げながら
「うっ!」
「いえ、そこまでしていただかなくても、自分たちでなんとかしますから」
若干悲しそうにしながら
「うぅ!」
「おめぇがこんな薄情もんだったとはなぁ」
「わかったよ!わかりましたよ!二人の面倒見ればいいんでしょう!」
「いえ、やはりそこまでしてもらうのは・・・」
「大人がいいっつってんだからそういう好意は素直に受け取っとけ!いいか!二人のたびの準備ができるまでだからな!」
「「ありがとうございます!」」