まずは情報整理
少女から星を救ってほしいと頼まれそれを任されるのはいい、だが
「それで、任されるのはいいけど。まずはお互いの自己紹介とどうしてこうなってるのかをちょっとkwsk教えてくんない?」
まずは情報が必要だった、自分の状態はともかく少女のこと。
そして、どうすれば世界を救えるのか
「まず、俺は藤咲想、藤の咲く想いで藤咲想、地球生まれの地球育ちの一般人だ」
「あ、えっと……私はフィリナリス・イルフェス・イルシェラール、この星の巫女よ、あなたを呼んだのはさっき言ったようにこの星を救ってもらうため、そのためにいろんな人やいろんなもののエネルギーを使ってあなたを召喚して、救うための力を与えて星が滅び始める前の世界に飛んだの」
フィリナリス・イルフェス・イルシェラールは心の中で頭を抱えていた
星の消滅を防ぐために呼んだ救世主は自分のことを藤咲想と名乗った
この少女、見た目は美少女で私よりも年下に見えるのに一人称は俺と男のようで話し方も何かを達観したような、諦めたような雰囲気をしている
それなのにさっきから真面目に話したりふざけたりしている
そんな救世主で大丈夫なのか本当に頭を抱えたい気分だったのだ
「ほうほう、呼んでから力を与えるなら誰でもよかった感じ?」
「ううん、人を……魂を呼ぶためには星の波長と魂が合う人じゃないといけないの」
「なるほ、で、さっき言いかけてた拒否権がないっていうのは逆らったらめっちゃ苦しい呪文とか縛るナニカがあるんだよね」
「……それは…………まず、呼んでしまったら元の世界に送り返すことができないの……それと…」
「それと?」
「あなたの魂と私の魂を一つにして二人で一つの命になっているの」
フィリナリス・イルフェス・イルシェラールと名乗ったその少女は泣きそうな顔で俯いた
当然だ
どこの誰ともしれない奴に星の運命を託して、しかも自分の命で手綱を握らなければいけないのだから
「そうか……悪いな、嫌なこと聞いちゃって」
「ううん、気にしないで、それが私の役目だから」
「でも話してそして頼ってくれるんだ、こっちはそれにできる限りこたえるよ」
役目、救世主の首輪としてとかそういうことだろう、呼ばれた時点で逆らえないようにっていうのはあると思った。
だが少女の命を手綱に「魂を繋げているので私が死ねばあなたも死にます」なんていう脅しは考えていなかったな
なんて考えているとフィナリスが口を開いた
「……………あなたは……落ち着いてるのね…」
「まぁね、驚く経験とか平静を保たなくちゃいけない場面はそれなりに経験してきたし、拒否権はないって時点で何かしらの条件付けっていうのは予想できた。それに平サラリーマンの俺に頼って可愛い女の子が泣いて世界を救ってくれと言ってきた。なら、やるのが男ってもんでしょ」
「………ありがとう」
「こんなんに自分の命と世界の未来を託すなんて不安だらけだろうけど。悩んで泣いて悔やんでもそのあとには前を向いて進もうよ、その方が楽しいぜ?」
「ありがとう……ありがとうございます!」
「うむ、その調子で頼るがいい!で、さっきの続きなんだけどもな、この世界が将来、消滅する、でそれを防ぐために俺が呼ばれた、そしてその首輪に君が選ばれたってとこまではわかった。ならここはどこで星が消滅するどれぐらい前?」
「えっと、私たちがいるここは私たちがあなたを召喚した星外の詩詠みの塔だと思う、それで今は星が消える120000年前のはず」
「ん?星外って星の外のことだよね?ってことはここそんな高い場所なん?」
星の外ならここは宇宙で呼吸なんてできない、それに120000年前というのは人にとっては長く思えるが星としてすぐと言ってもいいはずだ、そんな短期間で星が消滅するなら星自体が寿命だっていう可能性もあるがまずは場所のことから詰めていく
「偉い学者が言うには空気の層の外側にあるみたい、でもこの塔にだけは空気があるみたいなの」
「これって君の時代に作られたものじゃないの?」
「違うよ?、ずっと昔からそれこそこの時代よりも昔、この星の誕生からあるんじゃないかっていうのが学者さん達の定説みたい」
「星の誕生から……あ、それでなんで12万年前なの?」
「それは、星にある星神権から視ることができる星の記録、そこにこの12万年前から数年後に文字化けが出るようになったの、私たちの時代の記録はほとんどが空白で文字が極稀にあるかどうかで…」
「星の寿命、星神権が終わるからそうなった、そういうわけじゃないんだね?」
「星が持つ生命力は見えない程の緩やかさで減っていくの、でも12万年前の数年後から目に見えて減り始めているの、まるで何かに吸われているのか、抜けているみたいに」
「似たように星を救うゲームをしたことがあるんだけど、そのゲームでは異世界人を招いたことで星が消耗していっていたんだ。もしそれと同じように、原因が俺が来たことだとしたら?」
「異世界の魂をただ持ってくるだけならその魂を通じて星の生命力が異世界へと流れていくことがないとは言えない、でもあなたの魂は異世界から切り離し、私と混じり、世界に適合した、だからそういったことになるのはありえないの」
「ならいいんだけど、それでその星の生命力が減り始めた原因はわかってる?」
そんな質問に彼女は悔しそうに顔を歪める
「ごめんなさい……わからなかったの……」
「マジかっていうかやっぱりか」
「やっぱりってなんで?」
「その星神権の記録ってあくまで星単位の記録でしょ?」
「う、うん」
「なら星を消滅させる為の大きな事じゃなくて小さなことがコツコツ溜まっていったのはわからないんじゃないかなってね」
「あなたってたまにふざけているように見えて真面目に考えてる?」
「俺はいつでも真面目なんよ?でも真面目に真面目にってだけだと身体の視野も、心の視野も狭くなっちゃう、だから俺は真面目だけど真面目じゃないしふざけているけどふざけてない、楽しむっていったら不謹慎だけど前を向いて明るくいた方がやりやすいだけだよ」
「そ、そんなの……そんなのでうまくいくなんて……」
「だからまずは情報を整理して何をどうしてどうするのかを考えなきゃいけないのよさ」
「ここが星が消滅する12万年前で星外の詩詠みの塔、そこの天辺に俺たちはいる、この時代で数年後に起こる変化が起きないようにもしくは起きても早急に対処できるようにしなければいけない、だけどどういう変化が起きるのかはわからない、ここまではいい?」
「うん」
「俺たちはそれに備えなければいけない」
「うん」
「まずはね、こういうことは焦っても解決はできない、まずは落ち着いて考えよ、俺たちにはこの時代の情報がなさ過ぎる、常識、言語、地理等々足りないことだらけだ、二人だけの情報では無理だ、この時代の人たちの協力がいる」
「わかった、それでね、情報についてはわかったんだけどさっきから自分のことを俺って言ったりしゃべり方が男の人っぽいんだけどもしかして男なの?」
「そ、見た目は美少女!、中身は男!その正体は!みたいなね」
「………あなたってそういう趣味が……?」
「否定はできない!だけどどうか安心してほしい!手は出せないから!」
「ぜんぜん安心できない…」
本当にこの先頑張っていけるだろうかという一抹の不安がこの少女から消え去ることがあるのだろうか
その感情が表情に出ているようで彼?はなんとか巻き返そうとあたふたしている
「いやいや!大丈夫だから!一応、能力は使えるみたいだしなんとかなるって!」
「ならいいんだけど……あとさっき言ってた情報のうちの言語は大丈夫なはずよ、それに常識って言っても大きな問題を起こさない限りは常識知らずなんてレッテルを張られることはないわ。あと名前なんだけど、その見た目でその名前だと違和感あるしいい偽名か何かない?」
「言葉と常識が通じるならなんとかなりそうだな、名前はキャラの名前でイイスナマオンってのがあるよ、友達からはマオって呼ばれてる、好きに呼んで」
「じゃあ、マオって呼ぶわ、私のことはフィナって呼んで」
「あいよ」
「あと一人称を俺じゃなくて私とかちゃんと女の子らしくして、言葉遣いも直してね、そうじゃないと違和感すごいから」
「善処しますよ~い」
フィリナリスはこの掴み処のあるようなないような救世主を信頼していいのかどうか
まだ決めかねていた、だが今の自分にはなにもできず
できることをやり、必ずこの星を救うと胸に誓うのだった
めっちゃ文字数少ないですが小出しで頑張ります!