ジャスティスレンジャー VS パステルクラッシャー・後編
モザイクを掛けておきたいパンツ乱舞攻撃は、ジャスティスガンナーにより見事撃墜されていた。
もともとが布なのだから銃で撃ち抜けば意味の無い物体に変化するだけだ。
といっても、なぜか打ち抜かれたブリーフが爆発している。
「ぬぅっ。やるではないかジャスティスレンジャー!」
王利は本気で悔しがるブリーフ男を冷めた目で見つめる。
アレが、同じ改造人間。
同族という嫌悪から、あきらめにも似た感情が湧き起こる。
そうだ。パステルクラッシャーは潰そう。首領に伝えておこう。そう思う王利。
あまりにも見るに堪えないブリーフ男に、ジャスティスアーチャーが弓を射かける。
さらにジャスティスランサーとジャスティスバッシャーが突撃。
ジャスティスガンナーは周囲の戦闘員掃討を始めていた。
「ブリーフシールド! こうなればブリーフソードで……」
巨大ブリーフを盾にしてエネルギー体の矢を受けたブリーフ男は、ブリーフ型の鍔を持つ剣を取りだす。
社会の窓から剣先が突き出た見るに堪えない剣。
あまりの下品さに王利はさらに白い視線を向ける。
出来るのことなら変身して自分がぶちのめしたいところだが、残念ながら今正体を明かす訳にはいかない。
なにせジャスティスレンジャーが目の前にいるのだから。
下手に変身すれば王利まで抹殺対象に指定されるだろう。
それはマズいと民間人を装っているのだが、装うまでもなく彼らは放置されていた。
蚊帳の外に置かれた王利は白けた眼で真剣に闘うジャスティスレンジャーと下ネタ男爵……じゃなくてブリーフ男を見ていた。
彼にはもう、勝敗などどうでもよかった。
王利はそっと構内へと戻ろうとする。
そちらでは真由たちが闘っているだろうが、こっちでクサい三文芝居を見せられるよりはマシそうだった。
が、踵を返そうとした瞬間、ジャスティスアーチャーの悲鳴が上がった。
なんだ!? と振り向けば、そこに居たのは、クロスブリッド・カンパニーの刺客、アンコウベア。
毛玉のようなミノアンコウとツキノワグマを掛け合わせた怪人である。
突如乱入して来た彼はその剛腕で地面を割り砕き、ジャスティスアーチャーの足場を破壊したのだ。
「クロスブリッド・カンパニー!?」
「マズいデス王利サン!」
「分かってる。逃げ……」
ヘスティの腕を掴んで駆けようとした王利だったが、その目の前に降り降りてくる怪人、ベルゼビュート・ハンマーシャーク。そしてコックル・ホッパー。
「ククク。逃がすと思うかヘスティ・ビルギリッテ」
気が付けば、エリマキ・ガンナーがジャスティスガンナーを、ニードル・スワロウがジャスティススピア、マンティス・サンダーバードがジャスティスバッシャーを妨害し始めている。
突然のことに戸惑うブリーフ男の背後に、ミカヅキ・メイフライ。その巨大な角でブリーフ男を突き殺した。
ブリーフ男は何が起こったか気付く事も無く砂の様に消え去っていく。
どうやら、秘密結社同士といえども共闘関係にはならないなしい。
まぁ、好きこのんでパステルクラッシャーと同盟結びたいとも思わないだろうが。
「なんなのこいつら!?」
「クソッ! こんな怪人初めて見たぞ!」
「強すぎる! うわっ」
ジャスティスレンジャーが戸惑いながら闘うが、やはり闘っていた相手がパステルクラッシャーだったせいか、クロスブリッドカンパニーの改造人間相手では彼らには荷が勝ち過ぎているようだ。
唯一戦えているのはジャスティスガンナーだろう。
エリマキ・ガンナー相手に銃撃戦で圧倒している姿は、他の正義の戦士にも比べるべくもない。
あれならバグレンジャーの一人として存在していても十分通用する強さだ。
他の奴らのなんちゃってヒーローとは違うようだ。
しかし、多勢に無勢だ。ブリーフ男を倒したミカヅキ・メイフライがエリマキ・ガンナーのフォローへと入ってしまう。
そうなると、連携を始めた二体の怪人に、ジャスティスガンナーも次第追い込まれ始めた。
「このままでは、彼らが巻き添えで死んでしまいマス」
困った顔でヘスティが王利に縋る。しかし王利だってピンチな状況に変わりは無かった。
目の前の二体の怪人を回避して逃げる術が見当たらない。
一応ヘスティを隠すように王利とハルモネイアが前にでているが、逃げようとすれば諸共に倒されるだろう。
「どうした? 変身しないのか?」
ニヤリとコックル・ホッパーがほくそ笑む。
変身すれば正義の味方に自分の存在がバレるだけに、躊躇ってしまう王利、しかしその躊躇いをする時間は少ない。
相手は既に変身済みの改造人間。
変身をしなければ奴らに対抗は出来ない。
覚悟を決めようとしたその時、
「行くぜ、ジャスティス。砕け、セイバー! 必殺! ギルティーバスタ――――ッ」
構内から膨れ上がる様に駆け抜けてくる光の奔流。
気付いたコックル・ホッパーが慌てて飛び去る。
遅れてベルゼビュート・ハンマーシャークも真上に跳び上がる。
しかし、光の射線上に偶然入っていたアンコウベアがそれに気付いた時にはもう光が目前に迫っていたところだった。
絶望の声が轟く。それもアンコウベアが光に包まれると、唐突に消え去った。