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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ハルモネイア → 感情の芽生え?
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現代世界ツアー3

 お金は尽きたが、もともとは買わずに見学だけのつもりだったのだ。

 王利たちは本屋へと向い、ハルモネイアが真由に連れていかれて漫画コーナーへと向って行った。

 残されたほたるんとヘスティを引き連れ、王利は適当な雑誌コーナーに向う。


 丁度世界旅行のコーナーに差し掛かると、ヘスティがおもむろにロシア行きの一冊を手に取った。

 どうやら自分の国がどう紹介されているのか気になるのだろう。

 ほたるんも異世界の国に興味津津だ。


 王利は適当な本を手に取りほたるんに渡してやる。

 さすがに単行本だと包装紙のせいで立ち読みはできないが、こういった雑誌にそれはないようだ。

 ここの本屋の方針に感謝しながら、王利はほたるんに本を立ち読みさせた。

 といっても、ほたるんは一度見てしまえば内容を覚えられるので、パラパラ漫画の勢いでページをめくると本を元の場所に戻し、別の本を確認、数分もせずに全ての本を読破した。


 さらに日本の旅行コーナーに手を伸ばし、これもまた全て覚えていく。

 ヘスティが一冊を読み終わる頃には、旅行コーナーを全て読破したほたるんが新書コーナーの読破に挑戦していた。


「王利サン、ロシアはもっと素敵なとこ一杯デス。なんでこれだけしか紹介されてナイでスカ!?」


「いや、俺に言われても。ページの関係で全ては紹介できないだろ。端折られるのは仕方ないだろ」


 頭を掻きつつヘスティの理不尽な怒りを逸らす方法を考える。

 お、アレならいけるのでは? と考えた王利。

 週刊雑誌の漫画コーナーに向った王利はヘスティに一冊の少女漫画を指しだした。

 ついさっき真由がハルモネイアにお勧めしていた本である。


 ヘスティは憤然としながらもそれを読み始める。

 が、開いた場所が悪かった。

 普通にモザイクを掛けるべきエロスが行われている場面に遭遇し、ヘスティの顔が真っ赤に染まる。

 隣から覗いてしまった王利も完全に思考停止に陥った。


 次の瞬間、なんてものを見せるんだ! といった表情でヘスティが王利を振り向く。

 言い訳など思い付かない王利は慌てて別の雑誌をヘスティの持っていた雑誌と取り換える。

 納得いかない顔でヘスティが開いた雑誌……


 男たちが互いを叫びながら激しく汗を流……プロレスごっこしている姿に、今度こそ完全停止するヘスティだった。

 そして、再始動したヘスティは王利を思い切り殴りつける。

 お前いい加減にしろよ! と込められた怒りの鉄拳を受けながら、少女漫画って少年漫画より進んでるなぁ……と意識を飛ばす王利だった。




 王利が意識を取り戻すと、丁度ヘスティとほたるんに挟まれた状態で待合席の椅子に座っている所だった。

 真由とハルモネイアはまだ本を見ているらしい。


「なんでここに?」


「包装されていない本は全て読破しました。暇になりましたのでヘスティさんの護衛に戻っています」


 ヘスティの護衛は暇つぶしか?

 思っても声には出さない王利。ヘスティを見る。

 視線が合うと若干顔を赤くしたが、王利がわざと見せたわけではないことは理解しているようだ。


「しかし、ハルモネイアに本見せるだけで感情を身に付けさせるのはどうなんだろう?」


「私は効果的かと思います。本というものは感情を文章表現しておりますから、怒るとはどういう状態なのか、楽しいとは何を持って楽しいと思えるのかということを理解できます。そういうものだと知識があれば私達としても感情を理解しやすいです」


 ほたるんの言葉に成る程と納得する。

 そういうものかと真由たちに視線を向けると、一人の男が近寄ってきていた。

 なんだか親しそうに手を上げて真由に近づいてくる男。

 真由もあれ? どうしたんですか? と親しそうに対応していた。


 なんとなく、王利にとっては面白くない光景だ。

 特に赤い髪の男が少し背が高くイケメン系なのが面白くない。

 そんな相手に嬉しそうに手を振る真由に、言い知れぬ感情が沸き起こった気がした。


 だが、王利には彼女がいるわけで、真由が誰と仲良くしていようが彼には関係の無いことなのだ。

 王利は自身の感情を考えないようにしてヘスティに視線を戻した。

 ヘスティも彼が気になるのか王利にアレは誰かと聞きたそうにしている。


 二人してどうしたものかと戸惑っていると、真由たちが王利たちの元へとやってきた。

 真由とハルモネイアだけでなく、謎のイケメン男も一緒である。

 王利は何とも言えない気持ちで彼らに視線を向けた。


「王利さん、こちら河上さん。ジャスティスレンジャーのリーダーさんです」


「……はぁ?」


 思っていたのとは違う紹介に、王利はハトが豆鉄砲食らった顔で河上と呼ばれた男を見る。


「よっす。初めましてだな色男」


 お前に言われたくはないと思いながらも、王利は「ああ、初めまして」と無難に返す。


「紹介された通り、ジャスティスレンジャーのジャスティスセイバーだ。望月さんとは正義仲間でさ。先輩としていろいろ教えて貰ってんのさ」


「趣味が合いますからね。こんな顔してラブレンジャー変身ベルト腰に巻いて子供と一緒に戦隊ごっこやってるんですよ」


 ただのバカだった。王利は自分の中に渦巻いていた言い知れない感情が急激に晴れ渡るのを感じた。


「改めて初めまして。森本王利だ。よろしく正義の味方」


 そして、まるで仏になったような心で河上に手を差し出すのだった。

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