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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ハルモネイア → 感情の芽生え?
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現代世界ツアー2

 結局、真由はデートに見せかけてハルモネイアに感情を教えるというよりは、それをネタにして自らの腹を満足させることが狙いだったようだ。

 王利の所持金が4万を割った。まだ、今月に入って間もない時期だ。

 今月はこの資金だけで過ごさなければならない王利としては、今から頭の痛い事実だった。


 いや、引き下ろせばお金はまだある。

 何せインセクトワールドから初任給はでているのだ。

 しかし、それも限りはあるし、もう給料は出ないと思われる。


 つまり、減るばかりで収入減がない状態なのだ。

 無駄遣いは極力避けたいところである。

 しかし、真由は容赦なかった。


 王利の札束を湯水のように使い、私腹を肥やしていったのである。

 彼女役としてデートモドキをしている今にとって、彼女が目を輝かせながらアレ欲しいと言われれば、王利としても断わり切れない。

 結局モール内の食べ歩き出来そうなものはほぼ網羅されてしまった。


 そして満腹になったらしい真由は、もう満足じゃ。とばかりに「では、次はハルモネイアさんやってみましょう」と、王利にハルモネイアを押し付け自分はほたるんとヘスティとで甘味処へと消えて行った。

 まだ食い足りないのか? 王利は思わず呟く程に精神を擦り減らせていた。

 心と財布が寒い。あれは悪女だ。小悪魔だ。


「では、ミッション・王利とデートを開始しまる」


「いや、ミッションって……まぁいいか」


「ミッション内容は共に歩き食料品を買い、服を見て回る。一周して終わり。相違なる?」


「うん、それデートじゃないな。ただのルート営業だな」


 営業ではないが、ルーチンワークをされても無意味なので、そういった意味を伝えたかった王利だが、どうやら伝わらなかったらしい。首を傾げられた。


「デートっていうか……そうだな。まずは楽しむことを目指そうか」


「楽……しる?」


 ああ。と応えて王利はハルモネイアの頭に手を乗せた。


「いいかハルモネイア。楽しむっていうのは感情があるってことの裏返しだ。少しでも楽しいと感じられたら、いや、笑顔になるだけでもだ。お前にも感情が芽生え始めてると言っても良い」


「なるほど。私には感情というものが理解はできないけど、これが感情、という指標ができるのは今後にとっても良いことでる」


 ところで、とハルモネイアは言葉を切って視線を頭上に向ける。


「これは何を意味しているのでる?」


「あ、いや……別に意味はないんだけど、嫌だったらやめるけど」


「嫌……という言葉は理解できませるが、構いませる」


 心なし気持ちよさそうな顔をしている気がするハルモネイア。

 しかし、それに王利は気付けなかった。

 あまり頭を撫でるのも悪いかと、王利は手をどけると、ハルモネイアの手を握る。


「王利?」


 握られた手を見たハルモネイアは首を斜め45°に捻り理解不能と王利を見る。

 しかし、すぐに事前に真由が行っていた恋人が歩く時の歩き方を思い出したようだ。

 握られた手を少し力を加えて握り返す。


「じゃあ行くか」


「了解る」


 二人仲良く歩き出す。

 二人の手はしっかりと繋がれ、心持ハルモネイアが嬉しそうな顔をしていた。

 その後ろ姿は、真由曰くまさに兄妹のようだったとか……




 ハルモネイアは食事が出来ないので、飲食物の冷やかしは飛ばすことにした。

 食べて食べれない事は無いが、重量物は体内に落下することで周辺機器を破損、液体は漏電、さらに体内で腐った食べ物は臭いを発生させ、機材にカビが蔓延していくことになる。

 危険すぎるので王利は間違っても機械族に食事はさせないと誓うのだった。


 服屋では似合いそうな可愛らしい服を選んで見たのだが、ハルモネイアにとって服はあまり頓着するものではなかったらしい。

 そもそも自分の容姿に興味がないのだからソレを引き立たせる服装などに気を使う意味を見いだせないらしい。


 何せ顔自体は初めからこの顔と決められて造られた存在なのだから、綺麗云々には興味すら湧かないようだ。人間と機械の違いが如実に分かる事柄だった。

 それでも、もしかしたらいつかは感情が芽生えて女の子らしい服装をと動き出すかもしれない。

 と、いう理由で真由に買うように言われていたので、王利は適当に見繕った、店員さんお勧めの服を買ってやった。そして諭吉さんが二人、飛んで行った。

 手元に残った2万円を財布にしまい、王利は残った全財産で何年過ごせるか思いを馳せるのだった。


 そして、彼はハルモネイアとのデートを終えて知る事になる。

 真由たちが食べた甘味処の代金、その全てを王利持ちされており、さらに諭吉さんが己の元から二人、三行半を突きつけ去っていくという事実を……

 この事件が終わったら、俺、バイトするんだ。王利は独り、天に誓ったという。

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