自宅ハーレム・平凡編
闇夜の襲撃により中断されたハルモネイアとの交渉は、安全地帯に向ってから再開する事に決まり、王利たちは全員で、一度王利の家に向う事にした。
さすがに、バグリベルレの一存では正義の秘密基地にハルモネイアを連れていくことは出来ないということもあり、彼らが集まれる場所など、深夜のファミレスか自宅くらいしかなかった。
そして、さすがの王利も周囲に四人の美女を侍らせた状態でファミレスに赴く程リア充に慣れてはいない。
そもそも少し前まで彼女のかの字すら見当たらなかった人生だ。
いきなり女性の友人が出来たとしてもどう接していいのかすら戸惑いがある。
結果、無難に自宅に連れ込んだ王利。
周囲を忙しなく見回しながら自分の家へと戻る。
公園から家に戻る間に無数の視線に射抜かれているような謎の圧迫感があった。
これが後に第二次しんぐるまんず会の結成に繋がるなど、この時は全く思いもしなかった。
家に辿り着いた王利は、とりあえず居間に全員を通す。
畳式の六畳間にちゃぶ台が一つ。そこに座布団を五枚敷く。
王利は少女たちに座る様に促し、バグリベルレが率先して上座に座る。
こういう時、彼女は遠慮がないようだ。
さらに隣にヘスティを誘い、その横にハルモネイアがバグリベルレの真似をして座るヘスティの真似をして座った。
ちなみに、正座である。
何度も正座していて慣れているだろうバグリベルレには問題ないが、ヘスティは何も知らずに正座をしている。
王利はそれを見て、直近の未来を嘆いてみたが、正直可哀想に、と思いながら足の裏を指先でつんつんしてやろうかと下衆な悪だくみを一瞬考えていた。
そしてほたるんがハルモネイアの横に警戒しながら座る。
残った一席に王利が座った。
相手に戦意がないと見せる為、座ると同時に変身を解く。
「これは!? 変な生物かと思いましたが、人間だったのですね」
「ああ、まぁ似たようなもんだ」
改造人間がどうのという説明が面倒だったのでぼかしながら言う。
「じゃあ、改めて、これから俺らがハルモネイアに感情を教える。その代わり、人間たちを解放してやってくれ。生活の補助もできればしばらく頼みたい。人間だけで生活出来るようになるまでな」
「了解。その条件を飲む。感情、よろしく頼る」
改めて王利とハルモネイアは交渉成立の握手を交わす。
ソレが終わるか終わらないかの内に、ヘスティからぐきゅるるるという謎の音が鳴り響いた。
「お腹すきましたか? そういえばそろそろ夕食時ですね」
「ラーメンしかないぞ? あ、いや、エルティアが何か作ってたか」
「なんでしたら作りますよマスター」
ほたるんの言葉にハルモネイアが首を傾げた。
「なぜ、機械族であるあなたが人間に食事を作るのでる? 配給班ではないのでは?」
「マスターの御満足いただけることを行う。私にとっては普通のことですが?」
「理解不能。説明を求めます……マスター?」
「あなたがマスターをマスターと呼ばないで頂けますか」
ハルモネイアは王利に聞こうとして、王利の名前を知らなかったためにほたるんを真似てマスターと言っただけだった。しかし、敵側に位置するハルモネイアが王利に対してマスターと呼ぶことはほたるんには許せなかったようだ。
少しイラッとした表情をしている。
不機嫌な声をだすほたるんを見て、王利はなんとなくほたるんには既に感情があるんじゃないかと思ってしまう。
そして、ほたるんのそんな態度に、ハルモネイアはどうしたものかと困った顔をしているのだった。
「王利だ。マスターと呼ぶとほたるんが不機嫌になるみたいだし、王利でいいよ」
「了解。では王利、ほたるん? はなぜ私が王利をマスターと呼ぶのを禁止するのか聞きたい。それと配給班でもないのに人間に食事を作る理由を知りたい」
「それは……」
「ふっふっふ。それについては私がご説明致しましょう。ほたるんは台所で食事作ってくるといいのです。ヘスティが待ってますよ」
「はい。では失礼します」
ふと、異世界の機械族であるほたるんが、人間の料理などできるのかと疑問に思う王利。
しかし、これはドクターにより現代知識をダウンロードされたから大丈夫とバグリベルレが教えてくれた。
どうやらレシピ集も一緒にダウンロードしたらしく、腕前はプロ級なのだとか。
ほたるんが台所へと向かったのを確認し、バグリベルレは「Nepemeha!」と変身を解除して真由へと戻る。
そしてニヤニヤと笑いながらハルモネイアの真横に行くと、耳元に近づき小声で話し出す。
時折王利を見ながら内緒話をするようにしてしばらく。ハルモネイアがありえないといった顔で眼を見開いた。
「その話、本当!?」
「ええ。本当ですよ。ぜひぜひ試してみてください」
「了解。やってみる」
ふんぬ。とやる気を滲ませるハルモネイア。
手にしていたウサギのぬいぐるみが凄く辛そうな具合に押し潰されている。
真由のヤツは何を吹き込んだんだ? と不安になる王利だった。