管理室の守護者
六階。そこに王利たちの探していた部屋が存在した。
管理室である。
当然と言えば当然なのだが、クレストガーディアンがしっかりと扉の前に鎮座している。
「うっわ。アレとまた闘うんですか……」
さすがのバグリベルレも二の足を踏んでいる。
王利としても余り戦いたくない相手なので、できるならば闘うことなくやり過ごしたい。
だが、この施設を攻略するならば倒さなければならない相手だった。
しかし、開放すべき人間たちはここからの解放を望んでいない。
果たして、王利たちが独自の判断でハルモネイアを破壊してもいいのだろうか?
彼らの足が止まるのは、この決断できない答えも理由の一つであった。
さて、本来なら首領たちと合流する予定だった王利たちだったが、先に管理室を見つけてしまったので、相談の結果、せめてこのガーディアンだけでも倒しておこうという事になったのである。
「とにかく、アレを破壊してハルモネイアを実際に見てみるべきですマスター」
唯一人間を解放するという目的だけを持つほたるん。
彼女に促されるも、クレストガーディアンを倒す方法が少ない王利たちは顔を見合わせるだけだった。
ほたるんはそんな彼らが動かないだろうと判断し、自分一人物陰から飛び出す。
クレストガーディアンの索敵範囲ぎりぎりまで近寄り、右手を前に突きだす。
ガコンと右手首が折れ曲がり、内部が露出。
そこには銃口が設置されていた。
「ドクター曰く、ショットガンハンドです」
言うが早いかクレストガーディアンへとショットガンを発射。見事な散弾がクレストガーディアンの胴体へと突き刺さる。
さすがに攻撃を受けてそのままでるほど、クレストガーディアンはバカではなかった。
慌てて周囲を索敵し始め、すぐにほたるんをロックオン。
銃口を上げた瞬間、ガトリングガンの左手が吹き飛ぶ。
銃が無くなったと気付いたクレストガーディアンが周囲を見回すが、銃が落ちているはずもない。
仕方なく機関銃を構え、即座に腕が破壊される。
焦ったように機械の身体を高速回転させ始めたロボ。ここまでくれば大丈夫だ。
すでに攻撃できるものは全て破壊されたクレストガーディアンに攻撃の術は……体当たりがあるけど、する気配はないので攻撃の術はないといってもいい。
「アレなら勝てそうですよ!」
「ワ、ワタシも手伝いマス!」
今まで戦闘で活躍できなかったからだろう。ヘスティが羽を動かしクレストガーディアンへと近寄っていく。
大きく息を吸い込み、クレストガーディアン向けて思い切り口から怪光線を発射した。
一直線に放たれた光がクレストガーディアンの胸を撃ち抜く。
しかし、心臓部分が破壊されても駆動に支障はないようで、戸惑いながらも壊れた腕をヘスティへ突き出した。
「させますかっての! 友愛拳、正拳突きぃ!」
まさに槍のように飛んできたバグリベルレ。ヘスティへと迫る腕に思いっきり激突。
一応殴りつけたようだが、むしろ突進した方がダメージは高そうだった。
「うーん、なんだかいまいち威力が足りませんね」
ヘスティへ向う機械の腕を圧し折ったバグリベルレだが、本人は威力に納得できていないようだ。
要練習ですね。と結論付けて攻撃を再開する。
ラブレンジャーへの道は遠そうだ。
「ヘスティ、接近戦しちゃいなさい。そんな穴開け機で風穴開けた所で相手は死なないみたいだし」
「は、はいデス」
バグリベルレが言葉と共にクレストガーディアンに蹴りを叩き込む。
少し遅れ、ヘスティがジャンプキック。
クレストガーディアンの首に当り、ベキリと折れ曲がる。
それでもクレストガーディアンは止まらない。
両腕が使えないと知ったクレストガーディアンは、体当たりに切り替えたようだ。
さすがのバグリベルレとヘスティも、重量物であるクレストガーディアン自体が突撃してくると、避けざるをえない。
攻撃の隙間を縫って反撃を行っているが、クレストガーディアンに有効打は与えられないらしい。
「ああもう、必殺使っていいですかねっ」
「ええっ!? 折角出番回ってきたのに、ワタシ、あまり役に立ててまセン」
「いいんです! さっさとやっちゃいましょう」
「いいのか? この後ボス戦みたいな感じだぞ」
王利の言葉にクレストガーディアンの突撃を避けながら考えるバグリベルレ。
確かにこの後はハルモネイアと出会うことになる。
場合によっては戦いになるだろう。
その時の為に体力を温存しておくのは悪くは無い。
でも、必殺であるスラッシュスタンピードは彼女の身体に負担を掛ける必殺だ。
といっても、使いすぎると次の日筋肉痛で寝込む程度の負担なのであまり問題は無い。
「スラッシュスタンピード!」
バグリベルレは考えた末に、遠慮なく使う事にした。
クレストガーディアンに激突し、それでもまだぬるいと彼が守護していた扉をもぶち破る。
そして侵入した部屋の中、そいつは静かにバグリベルレに視線を向けた。