機密の部屋を護るモノ後編
「この世に愛がある限り、絶対不滅の正義の味方、博愛戦隊、ラブレンジャーッ!」
思考の中では背後で爆発でも起こっているのだろう。
バグリベルレが無駄にポーズを決めて覚悟を決めた。
バグレンジャーではなくラブレンジャーに成りきっているのがなんとも微笑ましいところだが、王利としてはそのノリでアレに挑むのは止めてほしかった。
バグリベルレはテンションを上げて王利の背後に陣取る。
しっかりと隠れられるかを調べ、王利の身体からずれないように位置を調節する。
「よし、準備完了です。いつでもどうぞ!」
「へーい」
バグリベルレの声に返事を返し、王利は射撃対象の通路へ飛び出した。
背後にはバグリベルレがしっかりとついてくる。
「あれ? 撃って来ませんよ?」
「初期反応はもう少し近づいたところだったよ。おそらく感知したら攻撃してくるんだ。それからは通路から消えない限り乱射してくる……んだと思う」
「さすがに確信はできませんか。でも……あの機関銃が気になりますね」
「焦って飛び出すなよ。あっちの貫通力は試して無いからな」
「ハチの巣にならないよう気をつけますよ。博愛剣でぶっ倒すつもりで行きますよ!」
「いや、真由、剣持ってないだろ」
「それはそうなんですけど……帰ったらドクターに作ってもらおっかな。博愛剣兜割とかやりたいですよ」
それ、死亡フラグじゃないか? などと思いながら王利は防御を固める。
私、帰ったら武器作って貰うんだ。そう脳内変換してみると、やはり死亡フラグにしか聞こえない。
「さあ、行くぞ!」
王利がある一点を越えた瞬間だった。
クレストガーディアンが反応し、ガトリングガンが火を噴いた。
銃弾が所狭しとばら蒔かれる。
「のああああっ、ちょ、王利さん、掠ってる。掠ってますよ私!」
「そりゃ俺移動してるしな。動くたびに零れ弾はでるって」
致命的な攻撃こそ喰らわないが、バグリベルレの腕や足を銃弾が掠っていく。
バグリベルレはできるだけ小さくなって王利の背後に隠れるが、やはり歩く時にぶれてダメージを受けていた。
少しづつ、ゆっくりと近づいていた王利たち。
突如、銃撃が止む。
銃身が熱くなりすぎ冷却期間に入ったようだ。
「チャンスですよ王利さん!」
「まだ行くなよ! 機関銃に気をつけろ」
「分かってますよ。もうちょい前までよろです」
さらに前へと向う王利、すると、クレストガーディアンの機関銃が動きだす。
「来るぞ!」
「って、ひゃああ!?」
先程のが銃弾の雨なら、こちらは銃弾の飛沫だろうか? 両方周囲を巻き込む強力な銃器だが、王利の装甲を貫くには足りなかった。
「な、なんとか行けそうだ」
少しづつ、バグリベルレに銃弾が命中しないよう慎重に動く王利。歩みはどうしても遅くなる。
だが、それでも確実にクレストガーディアンとの距離が縮まる。
「おっし、ここまで近づけたら行けますよ!」
「じゃあ機関銃が終わるまでここで待機する」
完全に防御態勢に入った王利。
クマムシ男の装甲が無数の銃弾を弾き返す。
そして、ついに機関銃が止まった。
熱を帯びた銃身を冷やすため、少しの間使えなくなるのだ。
じゃあ行きます。とばかりに顔を上げたバグリベルレ。
その視線の先には、ガトリングガンを構えたクレストガーディアン。
咄嗟に危険を感じて再び身を沈ませるバグリベルレ。
その一瞬後、ガトリングガンが再び稼働した。
「ちょぉぉっ、聞いてないですよ王利さんっ!」
「俺に怒るなよ! 銃身が冷えるのが速い。機関銃撃ち終わるまでに回復とか……無理ゲーだな」
「無理でもやるのがラブレンジャーですよ! そう、今の私はラブレンジャー!」
「いやいや、それで飛び出して死亡とか止めろよ!」
ガトリングガンが止むまでしばらく待つ。
しかし、ガトリングガンが終わると同時に機関銃による清掃が始まり、切れると再びガトリング。
もはや無限機関と言っても過言ではなかった。
「くっ。このままじゃ埒が明きません。何か……」
バグリベルレが戸惑いながら呟いていると、その背後から何かが飛んできた。
ミサイルだ。
ミサイルはガトリングガンの一斉射を避けながらもクレストガーディアンへと襲い掛かる。
さすがにその攻撃を避けることはできなかったらしい。
クレストガーディアンは真正面から謎の攻撃を受け止める。
ミサイルの爆発。クレストガーディアンの機関銃に当り、衝撃で銃身が潰されていた。
「チャンス! スラッシュスタンピード!」
バグリベルレが機を見て安全地帯から飛び出した。
空中で一瞬ホバリングすると、技名を叫んで翅を振わせる。
耳鳴りのような音が聞こえたかと思えば、ありえない速度でバグリベルレが掻き消えた。
次の瞬間にはクレストガーディアンに体当たり。
人と機械がぶつかったとは思えない盛大な音を轟かせ、クレストガーディアンが大破した。