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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ロボ → 美少女?
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第七世界

 世界を越えた。

 すでに何度も行っているが、突然別の場所に存在が移動するのが王利にはちょっと慣れない。

 とくに、地上から浮いた状態というのは心臓に悪かった。


 異世界移動を終えると同時に空中に投げだされた面々は、驚く暇も与えられずに落下。

 真下の海へとダイブした。

 水へ落ちる音が連続して響く。そして王利は腹を打った。


「ぷはっ!? ちょ、なんて場所に飛んでんですか王利さんっ!! 私の好感度駄々下がりですよっ!」


「いてぇ……って、俺に怒られても困るし、こいつの移動先は指定できないんだよっ!」


「全く、こういう場所こそバグシャークの出番だろうに。ほれ掴まれエルティア」


 首領がぶつくさ言いながら海というか、水に入った事すらないらしいエルティアを抱き寄せる。

 突然の海にパニックになって暴れているエルティアは、首領に引っ付きながらも暴れる。


「こ、えぶっ、やめ……」


 エルティアが暴れるため、折角助けた首領までもがバランスを崩し溺れ始めた。

 必死に身体を動かすが、エルティアに邪魔され二人して沈み始める。


「阿呆か? 溺れるモノに真正面から救いに行くからそうなるんだ」


 こちらも背後から抱き上げる形でカナヅチらしいドクター花菱を救出したバグアントが首領を見てバカにする。

 しかし、彼は溺れ始めた首領を助ける気はないらしい。

 慌てて王利が二人を助けに入る。


「ヘスティさん、変身して皆さんを救出よろです。今の状態だと羽が濡れて飛べないので」


「空中に出してくれたら変身できるから、あたしと真由を優先して」


「はいデス! изменение!」


 蝙蝠猫女に変身したヘスティが飛び上がる。

 まずは手短にいた真由を救いあげ、次に葉奈を拾い上げた。


「Nepemeha!」


「wechsel!」


 変身した真由は耕太とバグアントを。

 葉奈は即座に王利と彼が抱えた首領とエルティアごと抱え上げる。


「で? どこに行けばいい? というか、肝心のヤツはどこだ?」


 真由の手に捕まり海から上がった耕太が周囲を見回す。

 そして全員が気付いた。

 ほたるんがいない。


「失礼。防水はしておりますが海水によるダメージは不安でしたので緊急回避としてブーストを使っております」


 一瞬遅れて声が聞こえ、彼らの頭上からほたるんが降りてくる。

 その足からはバーナーのように炎が吹き出し、背中から、バーニアの炎が噴き出している。

 背中に掛かっていたはずの髪は不自然なくらいに反り曲がり、彼女の頭上に収まっていた。

 どうやらバーニアを使うと髪は焼かれない様折り畳まれるというか頭上に巻き上げられるらしい。


 ちょっと変な髪型になっているが、こればっかりは容姿よりも便利仕様なので仕方ないようだ。

 銀色タイツが足裏だけ破れているが、これはどうするのだろうか?

 ほたるんは一番人数の多いバグパピヨンの元へ向うと、素早い動作で王利を奪い取る。

 王利が抱えていた首領とエルティアも一緒に付いてきたが、気にせず上空へと舞い上がった。


「って、こらっ、あたしの王利君をどうする気っ!」


「マスターの身の安全は私が確保します。皆さんは気にせずついて来て下さい」


「待てコラァッ!!」


 バグパピヨンが怒声を上げながら追い掛ける。

 相変わらずのバグパピヨンにバグリベルレはため息を吐いてゆっくりと後を追った。 




「ここが異世界か。本当に移動出来るとはな。そして、こんなことを言うのが遅くなるとはな」


 海から上がって移動するだけで結構時間が掛かっていた。

 ようやく耕太が感想を言えたのは、一時間以上飛行した後に見つけた大陸に降り立ってからである。

 ここも安全とは言えないのだが、周囲は岩肌が露出しており草木は一本も見当たらない。

 殺風景だが見晴らしはいいので敵影に気を付けてさえいれば不意の攻撃を受けたりは無いだろう。


 こんな所で敵が居るかどうかすらわからないが、野生動物はどんな世界でもいるだろう。

 そんな生物に襲われた所でメンツがメンツなので大した問題ではないが、万一の事態はいくらでも起こりうる。だからバグアントは他の全員が異世界に感動したり、キョロキョロしたり、王利に抱きついたりしていても、警戒だけは続けていた。


「ふむ。W・Bよ、ここはどういう世界なのだ? そのツマミはたしかメモリごとに世界が分かれているのだろう?」


「あ、はい。第七世界ですね。一応ロボ……ほたるんを戻すかもしれないと思って確認しといてよかったですよ」


 王利はロボを救出した時に一度ダイアルを確認していた自分を思わず褒めた。

 もし、その行為がなければ総当たりで異世界転移を行う羽目になっていたかもしれないのだ。

 一応、七つ目という総当たりをするには近い異世界ではあるが、別の世界がどんなものか分からない以上、下手に転移するのは危険である。


 例えば、転移先に空気が無かったら? 地面の中だったら? 丁度出現場所に人がいたら?

 さらに言えば、火口の中だったり深海の底だったり上空10000mだったりしたら?

 ちなみに、今回や前々回の転移では空中に投げだされた。

 転移先がどこに繋がるか分からない以上危険は常に付きまとっている。

 そのうえ一度行った世界では無く未知の世界。自分の世界の常識が通用しない世界なのである。


 異世界に出現した瞬間、目の前からデッドエンドが大手を振ってやってくるかもしれないのだ。

 そんな異世界連続転移を直前に潰していた自分に称賛を贈ったとしても、誰もきっと不満は言わないはずだ。


 前回の転移で気付ければよかったのだが、総当たりするかも知れなかったと思い至った時にようやく気付いた王利。このくらいのこと気付けよ俺のバカと自己嫌悪に陥ったが、結局自分にはこの腕輪を使わずにおくことはできそうにない。

 だから、これからはできるだけ見知った世界だけに移動するよう心がけようと思う王利だった。


 王利は腕輪を見つめる。

 こいつのおかげで自分の人生がまた変わったな。と思っていると、バグリベルレの声に我に返らされた。


「ほたるん、人が居る場所に行くんですよね。場所はわかります?」


「はい。どうぞこちらへ。皆さんご案内します」


 ほたるんが案内役を始めたので、王利たちは彼女に付いていくことになった。

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