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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ロボ → 美少女?
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壊れかけのロボットだったはずなのに

「あの、この度は、新たな身体にインプットしていただき、ありがとうございます」


 それは、ロボというには余りに精緻だった。

 一瞬、全員がロボと偽ったコスプレ少女が現れたのかと思ったくらいである。

 そいつは全員の視線に気付き、やや戸惑った顔をした。

 表情まで豊かだ。不安そうに寄せられた太めの眉。小顔の顔に良く似合っており、人形のような愛らしい顔で苦笑している。


「改めて、お初にお目にかかります。LTレゾンテートル-832・乙型、№3020017です。ドクターと名乗る女性からは【ほたるん】と呼ばれました」


 イルミネーションのように輝く綺麗なストレートヘアをカチューシャで後ろに流し、おでこが見えるようにした彼女は、全身を見回しても、機械と呼べる要素が見当たらない。

 どう見てもただの女性だ。

 身長からして中学生くらいだろうか?

 本当にロボットなのかと疑ってしまう。


 服装こそ全身タイツのように銀光するなぞの物質だが、それでも首の付け根まで人肌が晒されている。

 唇はふっくらとして血色がよく。目元はどこか愛嬌がある。しかも泣きボクロがあるようだ。

 よくよく見てもホクロにしか見えない。

 この人、実は普通の人で、そのドクターとかいうのと共謀してドッキリでも仕掛けてるんじゃないか?

 と疑ってしまいそうなほどに人間と大差ない身体を持っている。


 人工皮膚と言われても納得できないクオリティだった。

 驚きながらも王利は彼女の全身を舐めるように見回してしまう。

 胸こそ控え目だが、実に、王利の好みをピンポイントで突いていた。


 すぐに我に返った王利だが、彼女の居る身として被りを振う。

 この女性に気を向けてはいけない。なにせ自分には既に彼女がいるのだ。

 いくら人の道を外れたとしても、可愛い女性が現れたからとそちらに向うような人でなしではない。


 相手は人間ではなくロボなのだ。惚れても非生産的な恋愛をするべきではない。

 それにしても、あの廃棄寸前のロボが随分と様変わりしたものだ。

 ほたるんと呼ばれたらしいロボは、青く光る玉すだれのような髪を弄りながら、どこか落ち着きのない様子で立っている。


「あ、あの……マスター、そんなにおかしいですか?」


 一瞬、何を言っているかわからなかった。

 バグレンジャーの面々が王利に視線を集中させた事で王利は理解せざるを得なかった。


「え? 俺が……マスター? なんで?」


「あの瓦礫から救出していただきました」


 その程度でマスターと呼ばれるのなら、ヘスティや真由もマスターになるはずである。

 よくよく聞くと、実際に掘り起こす切っ掛けになった、声を聞いたためらしい。


「これで人間の方々を救いだす事が出来ます」


 人間を、救いだす?

 ほたるんの言葉に王利たちは首を捻る。

 だが、何やら事件を嗅ぎ取ったバグレンジャーたちは一瞬後、挑戦的な笑みを浮かべる。


 正義の味方としての仕事がやってきた。

 そんな思いがあったのかもしれない。

 ただし、ロボのいたのは異世界である。


「ここがどこなのかはよく理解していません。ですが、人間が大量に存在するこの世界は、私達が排除してしまった可能性。人間の方たちを救いだすために、私は助けを求めます。マスター。機械族である私からお願いするのはおかしなことかもしれません。ですが、助けさせてください。人間の方々を」


 つまり、彼女の世界に存在する人間を、機械達の中から救いだして欲しいと彼女は言っているのだ。

 正直、ヘスティのことだけでも荷が重い気がする王利にとっては、重荷すぎる頼みなのだが、助けてしまった以上、見捨てるのも後味が悪い。

 一応、首領に報告する事を告げてこの場では言葉を濁したが、王利はすでに彼女の願いを聞き届けることに決めていた。


「こいつの発見は異世界だったな。そこの改造人間」


 バグアントが確認するように聞いて来たので、王利は神妙に頷いておく。

 嫌な予感しかしなかった。

 その予感は耕太の一言で現実となる。


「人間を助ける……か。理由は分からんが、助けを求める人々の声があるのなら、そしてそこへ辿り着く方法があるのなら、行くしかないか」


「そうですね。王利さんの異世界転移であのロボだらけの世界にもう一度行くべきです」


「で、でもほら、王利君は秘密結社側の人間だし、あの首領が行くなって言ったら無理だよ。無視して王利君が行くはずもないし。それに……ヘスティさんのこともあるし」


「なら、そいつらも巻き込んじゃえばいいじゃな~い」


 葉奈が王利の意見も聞くべきだと主張していると、ほたるんの後ろから声が掛かった。

 少し声の低い少年のような声。


「ある先人は言った。赤信号、皆で渡れば怖くない、と! ほたるんのマスターは君だ。責任とってほたるんの願いを聞いてき給え」


 現れたのは、ぐるぐるメガネをかけたもっさい女性だった。

 背丈に似合わない白衣をはためかせ、白衣のポケットに両手を突っ込み勿体ぶったように歩いてくる。

 歩くごとに三つ編みが揺れる。

 その人物は、王利の前に辿りつくと、ニチャリと笑みを浮かべる。

ネバつく様な笑みに思わず一歩引く王利だった。

 ※注) 念の為ですが彼女の識別コード、LTは存在意義という意味ではありません。

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