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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
日常 → 異世界
62/314

人の居ない町

 町に着くまでに、王利はヘスティに異世界に来ている事実を伝えた。

 余り理解されていなかったようだが、納得はしてくれた。

 一応、別の世界があるくらいは認識してくれたようだ。


 バグリベルレに抱えられながら、王利たちは郊外へと辿り着いた。

 郊外に降り立った三人は、周囲を警戒しながら町に向う。

 町に入る前に互いに頷き合い、バグリベルレは変身を解いて真由へと戻る。入れ違いに、王利たちは変身を開始した。


 王利は変身を行い、異形の姿と化し、へスティも変身を行っていた。

 猫のようにしなやかな四肢を黄金色の体毛で覆い、漆黒の翼を持つ奇妙な存在。


 されどその容姿は幼いながら例えようもない妖艶さを持っていた。

 ただ、王利としてはネコミミがなんとも萌えた。

 今度葉奈に付けて貰おうかと本気で考えた程である。


 変身が終わると、ヘスティが真由を抱え、俺と手を繋ぐと、蝙蝠のような羽を羽ばたかせて空へと舞い上がる。

 住人を驚かせないように町の入り口にある壁だけ飛び越えて内部へと侵入することにした。


 誰も居ない袋小路に降り立って、王利たちは街道へと歩み出る。

 一応、周囲を警戒しながら忍び足で来たのだが、人に見つかる事はなかった。


「しかし、凄いな」


「はい。王利さん恐いくらい凄い容姿デス」


「いや、そっちじゃなくて」


「近未来的ですねー。見てください空想上の空飛ぶ車ですよ」


 ドアが上下開閉式の丸い車が、幾つも車道を走っている。

 タイヤの類は見当たらず、全ての車が車道の少し上を浮遊しながら移動している。


 周囲のビルは円形の窓を無数に持つビルや、時折丸い建物も見受けられ、石油コンビナートのように柱に支えられている。

 民間の家はドーム型のようだ。一番数が多い。


「でも、変デス。人がいまセン」


「確かにな。犬型ロボット連れた人型ロボはいるけど……」


 住人はいる。しかし、全てロボットだ。

 人という存在が全くと言っていいほど見当たらない。

 出来の悪い人型ロボの家族連れを見ながら王利達は嫌な予感を覚えていた。


「あのー王利さん、私の考え違いならいいんですけど……」


「いや、ここも離れた方がいいかも……」


 全員考えることは一致していた。

 この町に、人間が存在しないという事実に。

 それはつまり……


 突如、アラームが鳴った。

 真後ろからの音に振り向くと、警備ロボだろう、青いボディの人型ロボが警報を鳴らして近づいて来ていた。


「ええいっ、Nepemeha!」


 真由は即座に変身し、王利とヘスティーを抱え飛び上がる。


「とりあえず逃げますよっ」


 アラームが鳴り始めた町を飛び出し郊外へ。

 身を隠せそうな場所を探して逃走する。

 しばらく飛行した先に見えたガラクタだらけの場所に降下する。


「ここなら少々休めますかね」


「何でショウ? 機械墓場?」


 ガラクタというよりは廃棄ロボの集積所のようだ。

 幾つもの山が部品で出来ていて、遠くからは機械音が聞こえてくる。

 この集積施設で働く機械と思えた。

 王利は周囲を見回しながら山の一つに近づいて行く。


「どうも、壊れた機械達の墓場って奴だな。見ろよ、町で見た犬ロボだ」


 犬の形をしたロボットの顔が山に埋もれているのを指さす。

 取り出してみると、下半身部分が欠けていた。

 所々錆が出ている。だいぶ野ざらしにされていたようだ。


「なるほど、役割を終えたというか壊れたロボットさんはここに集められるわけですか」


「必要な部品だけ奪われて廃棄処分ってヤツかな?」


「…………テ…………」


 犬型ロボの残骸をポイッと投げ捨てた時だった。

 王利の耳に微かに聞こえた。


「……ん? ヘスティ何か言った?」


「はい? 何も言ってまセン」


 王利は耳を凝らす。


「タスケテ……」


 すると、先程より正確に聞こえた。

 消えそうな声が聞こえる。ただし、人の声じゃない。

 どこか人にしては違和感のある、電子音のような声。


「ああ、この音ですね王利さんが言ってるの。山の方から聞こえてきますね」


「この中か……」


 王利は山を見上げる。

 目算十メートル程度に積み上がった山は、人の手ではまず取り除くことはできないだろう。

 でも、改造人間である王利たちは違う。


「掘りますか」


「掘るデスカ」


「ちょっと気になるじゃないですか。どんなロボットが生き埋めになってるかとか。まぁ正義の味方としては助けを求められている以上放っておけませんし」


 じゃ、お願いします。とバグリベルレは王利に促す。

 思わず自分を差した王利に、コクリと頷いた。

 王利に掘れということらしい。


 溜息を吐いて王利は山に手を突っ込んだ。

 砂山を崩すように部品を掻きだしていくと、だんだん声が明瞭になってくる。


「結構深いな。どこに埋まってんだ?」


「ちょ、待ってください王利さんっ」


「そ、それ以上崩すと崩れマスッ」


 崩すと崩れるとはまた妙な言い回しだ。

 訳が分からず腕を山に突き入れた時だった。

 山がバランスを崩し、王利に向い襲い掛かる。


 雪崩は王利ばかりか、後ろにいたバグリベルレやヘスティにまで飛びかかる。

 各々悲鳴を上げてガラクタ畑に埋もれて消えた。

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