ロボット城塞からの脱出
通路を脱出し外へと飛び出した王利たちが見たモノは、城塞といって過言ではない程に武装された建物だった。
幾つものライトが王利たちを追って右往左往している。
まさに刑務所から脱走した凶悪犯を追い詰めるような布陣である。
光が王利たちに当たると、砲門がそちらに向き、一斉射。
バグリベルレもさすがに喜んではいられないようで、無言で逃げに集中する。
弾幕の多すぎるシューティングゲーム並みの激しい銃撃。
一撃すら喰らわないのは奇跡に近い。
ただ、さすがに余裕はないようで、時折王利の頬の間横を横切る砲弾すらあった。
侵入警報だろうアラームが鳴り響き、城塞からは空を飛ぶロボットが次々に浮上を始める。
小型の円盤に似たロボットだが、六つ足を持って回転しながら近づいてくる。
当然ながらそいつらからも銃弾が襲いかかってきて、時間がたつごとにロボットも弾幕も増えていく。
城塞からは砲弾、機銃、ガトリング砲。時折ミサイルまで飛んでくる。
どうにもミサイルには追尾機能があるらしく。これを避けるのはバグリベルレであろうとも難しいようだ。
さらにはロボット軍団も取り囲もうと近づいて来ては機銃を打ち放ち味方の被害関係なく乱射し始める。
バグリベルレは右に左に避けつつも、相手の素早さも相当なため、反撃の糸口が掴めないでいた。
王利としては、弾幕ゲームを一度も死なずにクリアなど死んでも出来ない所業なので、素直にバグリベルレに称賛を送る。
集中を途切れさせる訳にもいかないので、声は出さなかった。
銃弾や飛行ロボの猛攻をくぐり抜け城塞を脱出すると、海に向かいバグリベルレは進路を切った。
時折錐揉み回転を交えながら追ってきた飛行ロボを玉突きで自爆させ、最終的に海へと突っ込む。
城塞からの攻撃が止んだだけでも十分だ。
推進力の続く限り水中を突き進み、手ごろな岩場で浮上する。
「どうです? 撒けました?」
「ちょい待て」
えづいて海水を吐き出しながら、王利は岩場の影から周囲を探る。
偵察隊は見当たらないようだ。
「一応、大丈夫だな」
「な、なんなんデス、今の?」
一人だけ状況に付いていけてないヘスティが戸惑いの声を出す。
それを聞いた二人は顔を見合わせ、思わず笑っていた。
「なんだか、最初に異世界に来た時思い出します」
「まぁ、わけわかんないよな、最初は」
「とにかく、まずはこの世界について調べましょう」
「ああ。だけどバグリベルレ、顔が割れてる可能性があるから変身解除してからだ。俺は変身する」
「なんでです?」
「ロボットが普通にいるんだ。科学が進歩した世界だろう。となると、俺たちの顔は全ロボットに手配されてる可能性がある。調べるなら念には念を。あとは城塞に近づかないようにする事かな」
「私はおっけーですけど、へスティーさんどうします?」
「私デスか? 変身しまショウカ」
「できるのか?」
「改造手術受けてますカラ。クロスブリッドカンパニーは二種類の生物と掛け合わせるんデス。私、蝙蝠と猫です蝙蝠猫女」
昔、あったなぁと王利は虚空を見上げた。
確か、中学校の夏休みに友達と自由研究をした時だ。
都市伝説を調べようということになり調べた中に、そんな記述があった。
猫が空飛んでいるのを見た。蝙蝠みたいな羽があったとか。
あまりにもどうでもよいので自由研究に乗せなかったのだが、今思えば、なぜそんなモノを調べようとしたのかすら思い出せない。
そういえば、口から怪光線を吐くとかも記述されていた気がする。
泣き声はニャ―。まるきりネコだ。
でも空飛んでたんだからちょっと見てみたくはあるな。と王利は蝙蝠猫の容姿を思い浮かべる。
「口からこう……いや、なんでもない」
「?」
気になったので聞きたかった。
でも、バカじゃないかと思われたくなかった王利は押し黙ることにした。
「逃げてる途中だけど、町を見つけた。行ってみよう」
「羽があるらしいし、へスティーさん私を送ってください」
「はい、わかりマシタ」