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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
日常 → 異世界
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新たな世界の歓迎

 ふっと地面の喪失感を感じると、次いで落下。

 さらに間を置かずに身体を衝撃が襲った。


「いったぁ――――。ちょっと王利さん、乱暴すぎますっ」


「異世界のどこに行くかは分からないんだから仕方ないだろ。壁の中じゃないだけマシだろ?」


 不平不満に反論しつつ、王利は周囲を見回した。

 青い照明に照らされた簡素な部屋だ。

 白い壁に囲まれていて、出入り口は一つだけ、中央に降り立った王利たちから見て左に、鋼鉄製の扉があった。


「研究施設?」


 床は妙に光沢のある一面が繋がった床。

 青い照明のせいか青い輝きを放っている。


「何、ココ?」


「ああ、そういえば、大丈夫か君」


 助けた少女を思い出し、王利は自分の腰に巻きつく少女に視線を向ける。

 銀髪の少女は落下の衝撃で帽子が取れてしまっていたが、外傷らしきものは負ってないようで、落下の衝撃も王利が殆どを吸収したらしい。


「だいじょぶデス」


「これはまた可愛らしい女の子ですねぇ。顔から見て外国人ですか。どこの方ですか?」


「ロシアから来マシタ」


「おー、同郷ですねー」


「なんだ、真由さんもロシアなのか?」


「ふっふっふ。このブロンドヘア見て日本人とか思ってたんですか?」


「いや、欧米系かなと」


 周囲に敵意がないと確信し、王利たちは緊張を解いた。


「ま、どうでもいい話は置いといて、あなた、なんで追われてたんです?」


「それは……」


 言いにくそうに口ごもる少女を見て、真由は両腕を十字に交差させる。


「こう見えて、私は正義のヒーローなのですよ。ああいう怪人に理解あるのです。いいですかー、見てて下さいよ? へん・しん!」


 十字にクロスさせていた腕を身体の中心に持っていき×字にする。


「Nepemeha!」


 変身用のフレーズを口にすると、真由を光が包み込む。

 一瞬の瞬きの後には、真由がいた場所にオニヤンマを基調とした蜻蛉女が出現していた。


「昆虫戦隊、バグレンジャーッ!」


 ババーンッと自分で効果音を口にして、バグリベルレがポーズを決める。

 出会ってそれ程経っていない王利としては、今までのイメージを粉砕する程の衝撃だった。


 真由の事を少し大人っぽく見過ぎていたらしい。認識を改めざるをえないだろう。

 少女はというと、突然現れたバグリベルレに、唖然としていた。


「大丈夫? 危険は無いから恐れないでくれ」


「あ、その……そういうのデハないデス。ただ……」


 先程より蒼い顔をしているところをみると、王利にはある一つの可能性が湧きあがる。

 それは、おそらく正義のヒーローでは気付けない結論だ。

 少女の耳に口を寄せ囁くように言ってやる。


「俺、インセクトワールド社の怪人。安心してくれ、彼女は君を殺したりしないから」


 王利の言葉にはっとする。

 少女は恐る恐る王利を見て、視線で信じていいのかと訴えていた。

 首を縦に振ると、少女もゆっくりと首を振る。


「私、ヘスティ=ビルギリッテ言いマス。クロスブリッドカンパニー社長令嬢デス」


「クロスブリッド……カンパニー?」


「あー、ロシアで小麦売買とか行ってる会社ですよ。流通の元締め役みたいな?」


「はい。父様のやっていること、私あまり詳しくないデスが、流通業とか言ってました」


「うーん、ってことは誘拐か何か? あれってどこの怪人かな?」


「あれは、その、クロスブリッドカンパニーの怪人デス」


 ヘスティの言葉に王利もバグリベルレも思わず目を剥いた。


「って、内輪揉め?」


「父様、暗殺されマシタ。クレーター……ん? えっと。グレネード?」


「クーデターだろ」


「まさにソレです。クーデターが起きたデス」


 つまり、ヘスティは自分の会社の怪人に追われていたということになる。すると、疑問が沸き起こる。まずは……


「なんでまた日本に?」


「父様が死に際にいいマシタ。日本にイル、菅田亜子に匿って貰えと」


「個人名じゃわかんないなー」


「昔から御贔屓の社長らしいデス。確か……いんせく……そうです、あなたの会社、インセクハラワールドッ」


「いや、インセクトワールドな。セクハラじゃないから」


「王利さんはセクハラワールドでも納得できますけどねー」


 バグリベルレの言葉に不機嫌になりながら、王利は考える。

 自分の知り合いにそんな名前いただろうか。

 いや、むしろ、社長イコール首領なのではあるが、あの首領が菅田亜子。似合わない。

 というか余りにも普通の名前過ぎて信じたくないというのが本音だ。


「私、運がいいデス、会わせてくれマスか? ええと……」


「森本王利だ。こっちのは望月真由。今はバグリベルレか」


「でも、いいんですか? インセクトワールドは実質壊滅してますよ?」


「そりゃまぁそうだけど、首領ならやりそうな気がするよ。そのまま会社乗っ取りかねないし」


「それは阻止しないと……」


 バグリベルレの言葉が終るより早く、鉄の扉が開き、誰かが部屋にやって来た。

 いや、誰か、ではない。そもそも生物じゃなかった。

 鋼鉄のボディを持つ卵型のロボット。

 長い蛇腹の手足を持ったそれは、王利たちを認識した瞬間、


「異物発見、緊急手配、排除、排除」


「うわ、なんだか歓迎されてないみたい」


「マズいか?」


「今戻るのもマズいですよね、逃げましょう」


 王利がヘスティを抱き寄せ、彼をバグリベルレが持ちあげる。

 ロボットに体当たりを喰らわせ押し倒すと、そのまま部屋を脱出した。


「ロボットとか初めて見ました」


「世界が違うからな。気を付けろ、何が来るか分からないぞ」


「ファンタジー世界でそれは味わってますよっ」


 翅を羽ばたかせ、わらわらと溢れだすロボットたちの間を抜けて行く。


「これは壮観ですね」


「攻撃してこないのはなんでだ?」


「単に攻撃手段がないとか……」


 と、言った途端に王利の横を通り過ぎる怪光線。

 さらに遅れて雨のような光線の連射が襲いかかる。


「見ました!? ビームですよビームッ。ヤバい、私この世界好きかもです」


「お前の好みで死にたくねぇよっ、速く脱出頼む」


「わかってますよっ。ふふ、もしかしたらバグソルジャーにも巨大ロボット手に入るかもです。うふふふふっ」


 ほくそ笑むバグリベルレは恐かった。

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