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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
日常 → 異世界
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そして世界を飛び越える

 ショッピングモールから脱出し、近くのベンチに王利は腰掛けた。

 座ると同時に深い溜息を吐く。

 自分も随分リア充生活になったものだ。


 しんぐるまんず会とやらが現れて裁判沙汰になったのも分かる気はする。

 つい先日までは王利も彼ら側だったのだ。

 それがいつの間にか、彼女が出来、その友達を含めた三人でショッピングである。


 両手に華状態なのだ。

 あまりにも幸運過ぎてこの先どんな不幸が舞いこんでくるか想像すると怖い。

 大抵のことならなんとかするが、恋愛沙汰の問題は不慣れなので止めてほしかった。


 さすがに真由までが王利に惚れて三角関係などといったことになる訳ではないので、問題点といえば葉奈のトリップくらい。

 彼女とのラブラブ生活に突入するのはいいのだが、仁義的観点からいっても葉奈に手を出すのは少々気後れする。


 なにせ葉奈が王利を好きになったのは、改造人間としてプログラミングされた御主人登録によるものかもしれないのだ。

 登録については葉奈自身が一度相手に一定値以上の好意を持つか手篭めにされるかの二つ。


 ご主人登録が終えれば、その相手に一生付き従うという鬼畜仕様だ。

 これこそがアルガースという秘密結社が編み出した禁断の洗脳術。

 今のところアルガースがこれを世界征服に使ったという事例は聞いていないので、あちらの首領はバカなのだろう。

 ちなみに、これは首領が言っていた言葉だ。


 しばらくその場で辛気臭く黄昏て、ふと思い出す。

 そういえば手ぶらで来てしまった。


「ああ、しまった。荷物全部あいつらだ」


 荷物持ちとして来たのに役目を果たしてない事に気づき、仕方ないと、すぐさま立ち上がる。

 面倒臭いがお小言を言われないうちに戻って荷物だけでも持っておこうとする王利。

 しかし、そんな王利に声が掛けられる。


「あーいたっ。なんで外まででてんですかっ」


 ショッピングモールから出て来た真由が駆け寄ってくる。

 驚いたことに買ったはずの荷物を一つも持っていない。

 彼女も忘れた派だろうか? それにしては確信犯的な顔をしているのはきのせいか?


「どうしたんだよ、荷物」


「葉奈さんに全部渡してきました。もうしばらくしたら来ますよ。またトリップしない間に戻りましょう」


「仕方ないな。もう注目されてないか?」


「多分大丈夫でしょう」


 それじゃあ戻るか。

 そう言おうとして、王利は止まる。

 真由も笑顔から一変、真剣な目で周囲を見回していた。


「敵か?」


 よくは分からないが敵意を持った何者かが複数、王利たちに近づいて来ていた。

 しかも、周りを囲むようにだ。

 理由はわからないが、彼らは王利たちを包囲しているようだ。


「さぁてどうでしょう? 私たち目的という感じではないですよー」


「でもこっちに……来るぞっ」


 刹那、人垣を掻き分け白銀の少女が飛びかかって来た。

 咄嗟に避ける真由。

 彼女が視界を遮り、王利は一瞬逃げるのに遅れてしまった。

 飛び退った彼は体当たりしてきた少女に抱きつかれ、無様にこかされる。


「痛ってぇ……」


「タスケテ!」


「な、なに?」


 上体を起こした王利が目にしたのは、薄汚れた少女だった。

 ウールの帽子と厚手のコート。まるで極寒の地で過ごすような服装で、白のフリルスカートを穿いた少女。

 危険はなさそうだ。


 ただし、衣類のところどころは破れ、引き裂かれている。彼女に危険は無くとも、危険は彼女を未だ逃していないと証明していた。

 暴漢か? それとも……

 王利は彼女をひっつけたまま真由に助け起こされる。


「マズいですよ、包囲狭まってます」


「民間人がいるんだぞ、正気か?」


「秘密結社はそんなもんでしょう? 悪ですよ悪。時や場所など選びません」


 二人は瞬時に一つの考えに辿りついていた。

 つまりは、目の前の少女が殺意を向けられている相手。

 自分たちの同業者、改造人間が少女を狙って近づいて来ているのだと。


「げっ、本気で変身してやがる」


 悲鳴が所々から上がった。

 改造人間が六体、王利たちを囲うように近づいてくる。

 一体二体なら二人でなんとかできるだろうが、三倍近い改造人間が現れてはさすがに勝ち目などなかった。


「こ、これはかなりピンチです」


「葉奈は? まだ来そうにないのかっ」


「逃げましょう、ってか私一人で勝てませんよ民間人守りながら六人はっ」


 戦力に入ってないと気付き、王利は人知れず落胆する。

 溜息と共に視線を降ろし、腕に填めたブレスレットに気付いた。


「真由さん、いいのがある。脱走するぞ」


「おおー、絶対追ってこれませんね。ちょい待ってください、葉奈さんにメール送りますから……はい、おっけーです」


 真由の了解を得た王利は、左腕のブレスレットのツマミを回す。

 その瞬間、ブレスレットは光り輝き王利をそして真由を包み込む。

 怪人の一人が瞬きした頃には、その場に王利も、真由も、そして追われていた少女すらも残ってはいなかった。

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