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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
日常 → 異世界
55/314

インセクトワールド社臨時本部

 森本王利はインセクトワールド社の改造人間である。

 境界を越える腕輪を手に入れたがために異世界で勇者として魔王を倒したこともあったのだが……


「お、お茶をお持ちしました」


 自室であるはずの六畳間で、彼は二人の少女にお茶をだしていた。

 まるで小間使いのような態度でお盆からお茶を飯台に並べて行く。

 飯台を中心に座るのは壮麗な少女と、可愛らしくもある一部分のせいでお友達にもなりたくない少女だった。


 綺麗な方は整った顔と長い耳が特徴。

 お姫様のようなドレスを身に纏い、差し出された湯飲みを恐る恐る受け取る。

 名前はエルティア。


 この世界とは別世界に存在する、エルフ族の王女である。

 なぜ彼女が王利の部屋にいるかと言えば、王利の腕に付けられた境界を越える腕輪のせいだ。


 王利が魔王を倒してからというもの、彼女は横にいる少女に従うようにこちらの世界にやってきた。

 どうやらインセクトワールド社の参謀的役職に着いたらしい。

 というのも、エルティアの隣にいる少女こそが王利の所属する秘密結社インセクトワールドの首領なのである。


 可愛らしい白のブラウスにフリルスカート。

 服装はまさに女の子といった感じだし、見た目は十代前半の体つきだが、眼だけがまるでカラフルな芋虫のように肥大化している少女。


 実際にはこの少女の身体に寄生しているのが首領らしいのだが、王利はその姿を見た事がない。

 いや、おそらく首領の本体は未だに誰も見たことは無いだろう。


「ふん。ぬるい。汲み直せ」


「ええっ!?」


 お茶を一口飲んだ首領、即座に湯呑を付き返す。

 またかと溜息を吐きつつ王利は湯呑を受け取り部屋を出た。


「私にはちょうどいいですけど? もう六回目ですよ首領さん」


「我にはぬるい」


 これである。ドア越しに聞こえる首領の声に溜息を吐き、王利は台所へと舞い戻る。

 ぬるいと言われて汲み直せば熱すぎる。かと思えば冷たい。ぬまい。の繰り返しだ。


 王利の家はそれなりに広い。

 3LDKという奴だ。

 ここに父と二人で住んでいる。


 母親は男を作って離婚してしまった。

 以来父は丸くなり、殆ど会社で過ごしている。

 家に帰るのは深夜で、早朝にはもう会社に向ってしまう。

 このため、大した問題も無く首領とエルティアが居候として居座っているのだ。


 本来ならインセクトワールド社で暮らすはずの二人だが、そのインセクトワールド社はにっくき怨敵バグソルジャーにより壊滅してしまったので、王利の家が臨時のインセクトワールド社として機能していた。


 現在所属人員三名。

 首領、エルティア、そして王利。

 実質的には完全壊滅状態ではあるものの、首領曰く、王さえいれば国はできる。


 散らばった怪人たちもそのうち集まるだろうとのこと。

 さらにいえば表の事業として行っていたインセクトワールド支社は全く損害を受けていないので金銭面やそちらにいる怪人については既に話が通っているらしい。いつでも決起できるのだとか。


 ちなみに、これはバグソルジャーにも、彼女となった霧島葉奈にも完全に秘密である。

 王利も自宅で不意に洩らされたのを聞いてしまっただけで、喋れば寄生だな。とか脅されたわけであるが。 

 というわけで、未だに再建は諦めていないらしい。

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