プロローグ・β
そこは、ガラクタだけで出来ていた。
山のように積み上がった壊れた器材が無数に捨てられた区画に、また一つ、不良品が捨てられる。
山は無数に存在し、他の山と結合している。
空から見れば、まるでガラクタの海。山としての盛り上がりは、波間のように見えた。
そんなゴミの山に、上空からやってくるのは、ヘリコプター。
下腹部にロープを垂らし、ガラクタを吊っている。
ガラクタの海までやってくると、ロープごとガラクタを切り離し、無事に落下したかどうかすら確認せずに去っていく。
あるいは、地上を走る巨大なトラック。人は乗っておらず、無人の乗車席ではアクセルやブレーキが勝手に動いて車を走らせていた。
トラックはゴミの山近くにあるベルトコンベアに近づくと、背後に詰んだガラクタの山をベルトコンベアに落とす。
落ちたガラクタはベルトコンベアを伝ってゴミの山を登っていく。
すると、排出口手前に、野球選手のような格好をした機械が、鋼鉄製のバットを手にして待っていた。
やってきたガラクタをバットで振り飛ばし、遠くのゴミ山へと弾き飛ばす。
そんな山のどこかに、それは居た。
「タスケテ……」
どこか抑揚のない機械音で、確かに、しかし微かに聞こえた。
「……ニンゲン……タスケテ……」
しかし、その声に応えるモノなど、そこにはいなかった。